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【バレー】石川祐希12/11、28歳 イタリアで9度目、充実の誕生日

石川祐希
左:2016年12月11日の石川(原田写す)右:2023年パリ五輪予選の石川(FIVB公式HPより引用)
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毎年、彼の誕生日はセリエAのシーズンのさなかにめぐってくる。バレーボールのイタリアリーグ・セリエAで9シーズン目を迎えたミラノの石川祐希は2023年12月11日、28歳の誕生日を迎えた。プロバレーボール選手として絶頂期を迎えているといってもいいだろう。2020-2021シーズンから所属するミラノでは主力を張り、日本代表ではキャプテンとして来夏のパリ五輪出場を決めた。イタリアで有名な日本人アスリートといえば今や「ナカタ(中田英寿)」よりも「イシカワ(石川祐希)」だ。イタリアで迎える9度目の誕生日は敵地での試合後。北イタリアの街・ヴェローナで石川はチームメートやファンからの祝福を受けた。腰に痛みを抱える石川は前週のモンツァ戦に続き、ヴェローナ戦も大事をとって欠場した。

目次

7年前、21歳の誕生日当日に取材

ヴェローナのホームAGSM FORUM。この時期は冬は深い霧に包まれる=2016年12月11日、原田写す。以下すべて

石川は7年前の2016年12月11日、21歳の誕生日も今年と同じ、ヴェローナのアリーナAGSM FORUMで迎えていた。ヴェローナはミラノから車で約2時間、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台になった街だ。朝日新聞記者だった筆者は当日、石川を取材していた。

石川は当時、中央大学3年でイタリア2シーズン目の挑戦だった。石川のためだけにわざわざヨーロッパまで取材に行かせてもらえるほどサラリーマン記者は甘くない。スイス・ローザンヌに拠点を置くIOC(国際オリンピック委員会)、ロンドンで開かれたWADA(世界ドーピング防止機構)の取材がメインのタスク。その「ついで」という名目でデスクに掛け合って、イタリア・ヴェローナ入りしたのだった。会場に日本人ファンや日本メディアは見当たらなかった。

ヴェローナーラティーナ戦で終始、ベンチを温めた石川

1人だけジャージ 出番なかった石川

2016年当時のセリエAチケットの価格表。驚きの安さだった
当時のマッチデープログラムには背番号14、石川の名前(赤線)があったが…。

石川がラティーナに合流して初めての試合だった。プレスパスで入場したが、記念にチケットも買った。成人10ユーロ(現在のレートで1600円)、18歳以下7ユーロ、65歳以上8ユーロ。世界最高峰のバレーがこれほど安価で見られるのに驚いた。

配布されたマッチデープログラムには石川の名前はあり、選手登録もされていた。ところが、ウォーミングアップが始まっても、1人だけジャージを着たまま、スパイク練習もしない。この日の出番はないとすぐに悟った。

AGSM Forumに駆けつけたヴェローナのファン。クリスマス前らしい装いも

荷物運び、タオル配り、円陣の外で

チームの円陣の外で堅い表情の石川祐希

石川はコートチェンジの時にチームの荷物を運び、チームメートにタオルを配るなどして献身的に動いていた。ただ、終始、浮かない顔をしていた。誕生日を意識する余裕もなかっただろう。当時はイタリア語も全く話せなかった。監督やコーチ、チームメイトとの会話もない。孤独感と焦燥感が入り混じったそれまでに見たことがない表情を覚えている。

試合後に石川のもとへ行った。「誕生日おめでとう」と声をかけたが、笑顔はなかった。当時はヒザや腰に痛みを抱えていた。その状況や石川自身の今後のプランを聞こうとしたが、試合に出ていない自分が取材を受けることがいたたまれないような表情だった。そしてチームメートからの視線を気にするような石川のしぐさを見て、深追いを止めた。

オンザコート3人までの外国人枠もあり、その後もラティーナでは先発出場がなかなか叶わない日が続いた。Pen&Sports [ペンスポ] のコラムニスト・中西美雁さんによるインタビュー(前編後編)を読むと、石川の当時の苦悩が見て取れる。

あれから7年 5チームを渡り歩き、成長

石川が不完全燃焼だった21歳の誕生日に取材をして7年がたつ。モデナ、ラティーナ、シエナ、パドヴァ、ミラノとチームを渡り歩き、石川はプロバレーボール選手としての階段を一気に駆け上がった。世界各国の代表がひしめくリーグで、高さに慣れ、技術を磨き、強靭なフィジカルも備わった。それだけではない。イタリア語を習得し、運転免許を取得して行動範囲を広げ、文化に溶け込み、イタリアに染まった。

控えめで大人しい性格だが、コートに入ると別人のように試合で吠え、チームメートを鼓舞するようになった。そんな現在の石川の姿は7年前、とても想像できなかった。

「海外に移籍したら日本代表に呼ばれない」。かつてそんな風潮もあった日本男子バレーで、道を切り開き、西田有志、高橋藍ら現在の日本代表の主力にも影響を与えている。男子バレー選手の海外挑戦を当たり前にしたことも大きな功績だ。

9年前に始まった石川のイタリア挑戦。孤独、焦燥、苦悩を乗り越えてきたからこそ、いまの石川祐希があるのだと心から思う。リスペクトを込めて。Yuki, Buon Compleanno!(誕生日おめでとう!)

ミラノの年内スケジュール

(時間は日本時間、ホーム=H、アウェイ=A)

12月11日(月)04:30 ヴェローナ(A)
12月13日(水)02:00 PAOK(A)
12月18日(月)00:30 ターラント(H)
12月20日(水)02:00 PAOK(H)
12月27日(水)02:00 ペルージャ(A)
12月31日(日)02:00 モデナ(H)

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