日本ハンドボール協会は2023年8月8日、パリ五輪アジア予選(8月17日~、広島)を戦う女子日本代表(おりひめジャパン)メンバーを発表しました。1976年のモントリオール五輪以来となる「自力での五輪出場」を目指す22名を、ポジションごとに見ていきましょう。(背番号、名前、所属の順)
LW:レフトウイング(左サイド)は最激戦区
51:吉留 有紀(北國銀行)
レフトウイングの一番手は守備力の高い吉留。左の1枚目に入る司令塔・相澤の盾となるべく、その隣の2枚目でパスカットを狙います。相手が嫌がる絶妙な間合いは必見。特に韓国戦では、左腕エースのリュウ・ウニとマッチアップする吉留のDFがポイントになります。
18:松本 ひかる(北國銀行)
松本は究極のオールラウンダーで、GK以外の全ポジションをカバーします。本職のレフトウイングでも高精度なサイドシュートが持ち味。勝負の節目を熟知した仕事ぶりが頼もしく、スコアに残らない部分でも貢献度が高い選手です。
36:團 玲伊奈(三重バイオレットアイリス)
これまでの楠本ジャパンになかった飛び道具が、スピードスターの團です。膝のケガも癒えて、爆発的なスピードが戻ってきました。DFで1枚目にしか入れないため、起用法は限られてきますが、速攻で点を取りたい場面ではインパクトプレーヤーになるはずです。
LB:レフトバック(左バック)はエース佐々木に託す
32:佐々木 春乃(ドルトムント/ドイツ)
ケガを乗り越え、海外で揉まれ、佐々木がエースらしいエースに育ってきました。遠くから打ち込めるだけなく、ピヴォットも見えています。ただの打ち屋ではなく、とてもクレバーな選手。3枚目のDFでも奮闘するなど、攻守にチームを背負います。
6:北原 佑美(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)
北原は守備型のバックプレーヤー。左右両バックをこなせて、攻守のバランスを整えてくれます。「試合の入りは北原でゲームを落ち着かせる」選択肢もあるでしょう。国内ではミドルシュートが入るようになったので、国際試合でも見たいところ。
10:秋山 静香(イズミ)
秋山は身体能力が高く、所属では攻守に大黒柱なのに、なぜか代表だと遠慮がちに見えます。まだポテンシャルの半分も出していません。特にDF面ですごい可能性を秘めているので、地元広島の大会でブレイクしてくれたら。
CB:センターバックは強力な布陣
23:相澤 菜月(北國銀行)
キャプテンの相澤がOFの全権を握ります。小柄でもミドルシュートが打てて、カットインが鋭く、パスもさばけて、判断にほぼ間違いがありません。若くても恐ろしいくらいに冷静です。「今の日本の女子で、一番ハンドボールが上手いのは相澤」と言ってもいいでしょう。
27:大山 真奈(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)
東京五輪にも出場し、ハンガリーでプレーしていた大山が、いいタイミングで日本に戻ってきました。美しいパス回しとステップシュートだけでなく、複数のポジションをこなせる器用さでもチームの助けになるはずです。
33:近藤 万春(イズミ)
近藤は勝ち気で、小さくても他の選手にはないクイックネスを使って独創的なプレーをします。所属だと多少ボールを持ちすぎる傾向がありますが、楠本監督は上手にコントロールしながら近藤のよさを引き出している印象です。
24:岡田 彩愛(香川銀行)
岡田は大卒1年目の打てるセンター。得点力に可能性を感じますが、今はまだ学びの段階です。所属でも代表でも、もう少し周りとフィットすれば、本来のよさが出てくるはずです。
RB:ライトバック(右バック)のロングシュートに期待大
13:中山 佳穂(北國銀行)
左利きのエースポジションには、世界レベルのロングシュートを打てる中山が入ります。肩甲骨周りの柔らかさがありながら、フォームがブレることなく、上下左右に打ち分けられます。相澤とクロスして打ったり、アウトスペースに切れ込むだけでなく、ピヴォットへのパスも成長中です。
89:石川 空(大阪体育大)
石川はまだ大学3年生とはいえ、ロングシュートの威力は一級品。姉の石川紗衣(イズミ)が歌手のあいみょんに似ているため「さえみょん」と呼ばれていることもあり、妹は「そらみょん」と呼ばれています。
RW:ライトウイング(右サイド)は決定力のある2人
7:服部 沙紀(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)
服部は高精度な左腕。日本リーグでもアジアでも世界でも、どのカテゴリーでも7割以上シュートを決めてくれます。淡々と、表情を変えることなく、レベルの違いを超越してくるシュート技術に注目です。
43:尾﨑 佳奈(オムロン)
尾﨑は2021年9月のアジア選手権出場メンバーで唯一の生き残り。東京五輪と楠本繁生監督就任の狭間の大会を戦いました。この時に世界選手権行きの切符を取れたから、日本の女子の強化が途絶えませんでした。当時の仲間の思いも背負って、逆足で踏み切るサイドシュートを、ここ一番で決めてくれるでしょう。
PV:ピヴォット(ポスト)はバリエーション豊富
2:永田 美香(北國銀行)
永田は攻守ともに絶対に外せない選手。180㎝の長身で3枚目を守りながら、速攻では先頭を走り、セットOFでは2対2の起点になります。味方にロングシュートを打たせる動きも、昨年のアジア選手権では秀逸でした。
3:佐原 奈生子(北國銀行)
永田とともにツインタワーを形成してほしいのが佐原です。こちらも180㎝と長身ながら、速攻の先頭を走れる脚力が持ち味です。「対アジア」より「対ヨーロッパ」で強さを発揮する選手ですが、ロングシュートを防ぎたい時に欠かせない存在です。
4:初見 実椰子(三重バイオレットアイリス)
初見はとてもクレバーで、人と合わせるのが上手な選手。DF面での評価も高く、両2枚目に入って、相手のエースを封じます。DFから速攻の流れで、レフトウイングからサクッとシュートを決める器用さもあります。
9:笠井 千香子(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)
笠井は元々センターだったため、純正のピヴォットにはない展開力があります。隣の隣までよく見えています。DFでも少し前に出て、変則気味の5:1DFで相手をかく乱します。攻守に変化が欲しい時に、最高のアクセントになれる選手です。
GK:ゴールキーパーは個性派ぞろい
1:亀谷 さくら(ブザンソン/フランス)
東京五輪にも出場した亀谷は、大会直前に広島で合流予定。ワールドクラスの爆発力を誇る亀谷が、パリ五輪へのラストピースになるでしょうか。父親はノルウェー人で、母親が岡山出身のため、日本語は少し岡山弁が混じります。
12:馬場 敦子(北國銀行)
速攻で点を取りたいなら、馬場の素早いパス出しは欠かせません。楠本監督が好む、小柄でも攻守の切り替えが早いGKです。「捕れるシュートだけ捕る」割り切りができれば、絶妙のロングパスでイージーな得点を演出してくれるでしょう。
22:犀藤 菜穂(北國銀行)
馬場が届かないハイコーナー(ゴール上の両隅)に手が届くのが犀藤です。大雑把にロングシュートを打ってくる中国やカザフスタンを相手に力を発揮します。所属よりも代表戦の方がプレータイムが長く、最近は自信をつけてきました。
77:上嶋 亜樹(筑波大学)
上嶋もハイコーナーに手が届く大型GK。まだ経験を積む段階とはいえ、これからの日本を背負うであろう逸材です。
8月17日から広島でアジア予選、メンバー入れ替えも
以上、エントリーは22名で、試合のベンチ入りは16名。サイズで勝負してくるカザフスタン、中国と、フェイント力のある韓国を倒すために、大会途中で大幅にメンバーを入れ替える可能性も考えられます。最高の組織力と多くの持ち札を用意して、ハンドボール女子日本代表はパリ五輪へ「団体球技で一番乗り」を狙います。
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