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【サッカー】スポーツと賭博の微妙な関係 | 享楽と資金提供、試される倫理観

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サッカーと切っても切れない関係にあるのがギャンブル、スポーツベッティングだ。少額であっても試合に賭けることで観戦する楽しみが増える。一方で負の側面もあり、八百長や不正行為を根絶させる難しさが常につきまとう。幸いにもJリーグでは大規模な不正事件は発生していないが、元Jリーガーが海外で逮捕されており他人事とは言い切れない。

日本人選手は世界のトップ水準になりつつあるが、Jリーグは世界の主要リーグに大きく水を開けられており、賭博についても未開発な部分が多い。Jリーグそして日本という国がギャンブルとどう向き合うべきか盛んな議論を期待し、あまり語られることのないサッカー賭博の光と影についてスポットを当てる。

目次

欧州は民間が競争、日本は公営が独占

海外には幾多のブックメーカーが存在するが、日本では公営競技など以外に賭けるのは違法だ。ただし、インターネットを介して海外のブックメーカーに賭けるグレーな抜け道もある。サッカーには「トト」(toto)とよばれて親しまれているスポーツ振興くじがある。ブックメーカーがライセンスを取得して運営している民間企業なのに対して、日本では文部科学省が所管する独立行政法人日本スポーツ振興センターが一手に手掛ける。トトの収益はスポーツ環境の整備などにも充てられ、社会に還元されている。

試合の結果や得点数を予想するのはもちろんのこと、「先に得点するチーム」「選手がイエローカードを受ける回数」「オフサイドの回数」「ゴールが入る時間帯」といった細かな賭け(プロポジションベット)により、賭けの種類・市場が多様化している。その内容を眺めてどんなことで賭けが成立するかを知るだけでも、サッカーの見方が広がる。

しかし、プロポジションベットの拡大に伴って、スポットフィックス(特定の出来事の操作)のリスクも高まっている。元Jリーガーの檀崎竜孔は、事前に友人に情報を提供して故意にイエローカードをもらい、儲けの分け前を受け取っていたとして、オーストラリアで有罪判決が下った。

世界各地で後絶たぬ不正行為

トルコでは調査の結果、審判員571人のうち371人が賭博アカウントを有しており、そのうち152人が実際に賭博を行っていることが明らかになった。トルコサッカー連盟は、149人の審判員に活動停止処分を下したことを2025年10月に発表した。

年俸水準が低い下部リーグの選手だと、さらに買収されて八百長を行ったり不正行為に加担したりするリスクが高まる。また、下部リーグだと注目度が低く中継がない場合もあり、不正が明るみに出にくい環境で八百長の温床になりやすい。

ハビエル・アギーレ元日本代表監督は2015年2月、八百長疑惑が持たれて就任半年で解任されたが、裁判の結果は無罪だった。ハビエル・アギーレが監督を務めていたレアル・サラゴサが降格を免れるために買収行為を行ったのではないかという疑いがかけられていたが、証拠不十分とされた。

サッカーの試合においては、必ずしもギャンブルだけではなく様々な背景により不正行為が起こりうることが分かる。(下に記事が続きます)

プレミアクラブ、規制強化へ

欧州のプロリーグでは、ブックメーカーとスポンサー契約をしていないクラブの方が少数派だ。2024-2025シーズンのイングランド・プレミアリーグのクラブのブックメーカーとのユニフォームスポンサー契約料の総額は1億3500万ドル(約200億円)だった(Global Data)。今後は、この売上が何割か下落することが見込まれる。

未成年者への悪影響やギャンブル依存症を懸念する社会の声に耳を傾けて、2026-2027シーズンからイングランド・プレミアリーグの試合でユニフォーム前部の広告を自主規制することで合意に達しているからだ。ユニフォーム胸部は一番目立つ部分で、潤沢な資金を持つブックメーカーのスポンサーのロゴが付いていることも少なくない。今後は、ユニフォームの目立ちにくい部分やスタジアム内の広告に移行していくことだろう。

イタリア・セリエAでは同様の規制が2018年に導入されたが、ブックメーカー関連団体の名義でユニフォームの胸部スポンサーになるという抜け道が見られる。スペインでは2021年にスポーツ施設においてスポーツベッティングの広告が全面的に禁止されている。

クラブが所在する国では認可を得ていない海外のブックメーカーと契約している事例もある。欧州サッカーは世界中にファンがいてアジアでの人気も高く、近年ではアジア系のブックメーカーとの契約も増えている。(下に記事が続きます)

Jリーグはブックメーカー自粛を継続すべきか

Jリーグのクラブでもブックメーカーの広告を見かけることがないが、やはり自粛されている。欧州主要リーグとJリーグのクラブでは、文字通り売上の桁が違う。ブックメーカーとの協力関係を構築することで、その格差を埋めることが期待できる。後発のJリーグでは、先を行くヨーロッパの事情に習うことができる。

ブックメーカーに門戸を開けば、経済的な強化にはなるだろう。しかし、それにより社会問題が発生する可能性もある。

2025年大阪・関西万博が開催された夢洲(ゆめしま)において日本初のカジノが計画されている。カジノを起点に経済を活性化させることを期してIR整備推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が2016年に施行され、時間をかけて準備が進められている。

慎重に議論が進められているが、日本はギャンブル解放に向かっている。今後、Jリーグそして日本は、サッカー賭博とどのように向き合うのだろうか。Jリーグのサポーターは高齢化の傾向があるが、スポーツは教育現場で行われてきた長い歴史がある。Jリーグは青少年に夢を与え健全な育成に資することができる存在であるべきだ。

スポーツの発展のためには、もちろんお金は必要だ。しかし、八百長が蔓延したら夢もへったくれもない。競技の公正性があり真剣勝負をして、初めて人々は感動する。賭博により、スポーツの根底にあるフェアプレーの精神と各人の人間性が試されている。

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