サッカー男子日本代表は6月29日(日本時間6月30日)、米国ヒューストンスタジアム(NRGスタジアム)で北中米ワールドカップ・ラウンド32に臨みブラジルに1-2で敗れ、16強進出はならなかった。グループF2位通過の日本は、グループC首位のブラジルと相まみえ、ノックアウトステージ進出は5度目となったが初勝利は遠かった。優勝を目標に掲げて本大会に臨んだものの、32強止まりで大会を後にすることになった。
センセーショナルな先制弾
試合は29分にブラジルがカウンター攻撃に転じたところで、佐野海舟がセンターサークルでインターセプトから単独ドリブルしペナルティエリア目前まで前進し、倒れ込みながらの右足シュートはゴール左に決まる。伏兵の日本が先制(1-0)。
56分にブラジルは、左サイドのヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)が下げたボールをガブリエウ・マガリャンイス(アーセナルFC)が左足でクロスし、走り込んだカゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)が頭で合わせる。ブラジルに同点に追いつかれる(1-1)。
アディショナルタイムが6分と提示されるなか、90+5分にペナルティエリア付近で田中碧がダニーロ(CRフラメンゴ)からボールを奪うも、すぐに囲まれて奪い返される。ブラジルは中央にパスをつなぎ、ブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル・ユナイテッド)がラストパス。ペナルティエリア内で受けたガブリエウ・マルティネッリ(アーセナルFC)がワントラップから右足で放ったシュートはGK鈴木彩艶が触るもポストに当たりゴールに吸い込まれる。
最終的にアディショナルタイムは11分になったが、日本に追いつくための時間はほとんど残されていなかった。延長戦を目前にブラジル代表に逆転され、日本は一瞬にして敗れ去った。
チーム力の差が顕在化
責任を感じたのか田中碧はピッチに泣き崩れた。時間帯も考えて奪ってすぐにクリアしていれば、あのシュートを打たれることはなかったかもしれないが、そうすれば再びブラジルボールになって波状攻撃を受けることは目に見えていた。
逆転弾の瞬間は、ディフェンスラインには枚数が揃っていたが、マークの受け渡しがうまくいかずに間に入られてフリーでシュートを打たれた。その直前のシーンに巻き戻すと、田中碧がボールを奪う前のブラジルの攻撃は日本の左サイド深くまで入り込んだものだった。誰か1人の責任ではなく小さなほころびが折り重なって、最終的にチームとして失点したというのが本当のところだろう。
1失点目については、ディフェンスラインの裏を取られて決められたが、そこへのクロスを配給したガブリエウ・マガリャンイスはノープレッシャーで余裕があった。その時、ヴィニシウス・ジュニオールに気を取られて日本は押し込まれていたため、ブラジルの後方まで気が回らなかった。さらには先制点を決めた佐野海舟のマークに付いていたカゼミーロは、責任を感じたのか取り返す気が旺盛で中盤から前線深くに走り込んでヘディングを決めた。2列目から前線に入っていった選手への日本側の対応に遅れやズレがあったのは、失点シーンだけではなかった。(下に記事が続きます)
超一流のブラジルの駆け引き
日本は、ブラジル戦でも基本システム【3-4-2-1】で臨んだ。3バックを敷いて、両サイドの攻撃的なウイングバックを配置すれば、その背後に生まれるスペースを突かれやすいのは、試合開始前から予測できることだった。
序盤の日本は耐えしのいだが、ブラジルは両サイドの裏のスペースを突いたりクロスボールを入れたりして日本の守備網を巧みに崩してきた。ブラジル代表初の外国籍監督となったカルロ・アンチェロッティの采配はさすがだった。
また、ヴィニシウス・ジュニオールの個人での突破は、やはり超一級品で何度か決定機をつくられた。(下に記事が続きます)
PK戦が日本の勝ち筋
堅守速攻で耐え、終盤に向けて勝負を仕掛ける「戦術カタール」が定石ながら、ブラジルに読まれていることを見越して「リスクは高いが真っ向勝負を挑む」可能性もあると筆者は考えていたが、勝負師の森保一監督は後者を選択してきた。
筆者は戦術カタールを想定し、延長戦も含めた120分の長丁場も見越して主力の伊東純也と中村敬斗を温存することでブラジルに対する切り札にもなると考えていた。森保一監督は、守備的なメンバーではなくベストメンバーで試合に入ることを選んだ。攻める姿勢はブラジルにとってサプライズとなり先制点も奪えて試合途中までは機能したが、ブラジルの攻撃の圧力に耐えきれなかった。
筆者が「戦術カタール」を想定したスタメンと実際の先発メンバーは2人異なっていたが、その先発に予想した鈴木淳之介と菅原由勢が森保一監督が最初に切ったカードだった。つまり「守備から攻撃」ではなく「攻撃から守備」への選手交代だった。
この状態になったら、日本の勝ち筋は同点で耐え忍んでPK戦で勝利することくらいしか算段できなかった。現在の戦力を考えれば現実的とも言える。カタールワールドカップのクロアチア戦のPK戦敗退を踏まえて森保一監督は周到にPK戦の準備を行ってきた。
南野拓実、三笘薫、久保建英が健在であればベストメンバーを先発させても攻撃のギアチェンジの駒をベンチに残しておくことができたが、不運も重なり選択肢に限りがあった。(下に記事が続きます)
結果は惜敗もデータは大敗
大金星を連発した2022年カタールワールドカップのスペイン戦の日本のボールポゼッション率は18%、ドイツ戦のボールポゼッション率は26%だった。
一方で、この試合ではブラジルの69%に対して日本は31%。非保持を徹底した前回大会より、主体的にボールを保持して攻めた結果だ。その点においては、攻撃的に戦ったこの試合では進展があった。
しかし、シュート本数はブラジルの26本(枠内7本)に対して7本(枠内2本)と大差をつけられた。
スコアの動きとしては惜敗ではあったが、データを冷静に見るとブラジルが日本を圧倒して勝つべくして勝った試合だった。日本がワールドカップのダークホースから真の優勝候補国になるためには、チーム力、そして国力のさらなる底上げが必須だろう。
世界を沸かせ歴史に残る一戦
日本は、敗れはしたものの、実り多き試合そして大会となった。
世界最多5度のワールドカップ優勝を誇るブラジルを相手に果敢に攻めて先制点を決めたことは、セレソンの肝を冷やし68,777人の観衆を沸かせるのには十分だった。
結果的には敗れたが、ブラジル代表を追い詰めた試合として語り草となり、日本サッカーの歴史に残ることだろう。そして将来ワールドカップでブラジルに勝利したり優勝したりする瞬間が訪れた際には、日本サッカーのマイルストーンとして回顧されることだろう。
日本代表の実際の出場選手
システム【3-4-2-1】
先発メンバー
- 鈴木彩艶
- 冨安健洋、谷口彰悟、伊藤洋輝
- 堂安律、佐野海舟、鎌田大地、中村敬斗
- 伊東純也、前田大然
- 上田綺世
途中出場した選手
- 鈴木淳之介(66分:中村敬斗)
- 菅原由勢(66分:堂安律)
- 田中碧(78分:鎌田大地)
- 町野修斗(78分:伊東純也)
- 小川航基(90+7分:前田大然)
戦前の日本代表メンバー予想
システム【3-4-2-1】
- 鈴木彩艶
- 冨安健洋、谷口彰悟、伊藤洋輝
- 菅原由勢、佐野海舟、鎌田大地、鈴木淳之介
- 堂安律、前田大然
- 上田綺世
途中出場が有力視された選手
- 中村敬斗
- 伊東純也
- 小川航基
- 後藤啓介
- 塩貝健人
- 田中碧



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