サッカー男子日本代表は2026年6月14日(日本時間6月15日)、米国テキサス州アーリントンのダラススタジアムで北中米ワールドカップ・グループFの初戦オランダ戦に臨み、2-2で引き分け、貴重な勝点1を獲得した。
鉄板の布陣、前線の守備に奔走した前田大然
グループFでFIFAランキング最上位のオランダ(8位)を相手に日本(同18位)が挑んだ注目のカードには69,285人の観衆が集まった。最も重要な初戦でグループ最有力国を相手にした日本の森保一監督は、想定しうる最強のチームをベースにしつつオランダ仕様の先発メンバーを組んできた感がある。
日本はこれまでの基本フォーメーション【3-4-2-1】を採用し、大きなサプライズはなく想定内のスターティングメンバーとなった(GK鈴木彩艶、DF渡辺剛、谷口彰悟、伊藤洋輝、MF堂安律、佐野海舟、鎌田大地、中村敬斗、SFW久保建英、前田大然、CFW上田綺世)。
激戦区のセンターバックはアヤックス・アムステルダムのセンターバックコンビ冨安健洋と板倉滉はベンチスタートで、渡辺剛(フェイエノールト・ロッテルダム)と谷口彰悟(シントトロイデンVV)が不動の左センターバックになっている伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)とともに先発出場した。
三笘薫(ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC)が負傷で選出されず注目されていた左シャドーストライカーには、前線で走り回る守備が真骨頂の前田大然が先発した。
負傷して代表チームを離脱した遠藤航に代わって新主将に任命された板倉滉が先発しなかったため、堂安律がゲームキャプテンを務めた。(下に記事が続きます)
日本が2度追いつく展開
試合が始まると、予想通りオランダがボールを保持して日本が守りを固める状況が続いた。0-0で試合を折り返し、ここまでは日本の狙い通り。しかし、オランダが試合を優勢に進めていることは間違いなく、後半勝負の試合になることが濃厚となった。
51分に右サイドからのライアン・フラーフェンベルフのピンポイントクロスにフィルジル・ファン・ダイクが頭で合わせた。リヴァプールFCのコンビによりオランダに先制された(0-1)。
しかし、日本は動じること無く冷静に攻撃に転じる。そして57分に左サイドに切り込んだ久保建英のパスを受けた中村敬斗がドリブルからシュートし同点に追いつく(1-1)。中村敬斗は会心のガッツポーズで久保建英と熱く抱擁を交わした。
64分にオランダは、クリセンシオ・サマーフィル(ウェストハム・ユナイテッド)が右サイドからカットインし、左足で放った弧を描くシュートがゴールポストに当たって吸い込まれた。再びオランダに引き離される(2-1)。ライアン・フラーフェンベルフは、この日2アシストを記録した。
日本は、選手交代で巻き返しを図る。そして88分に伊東純也の右CKを小川航基が頭で合わせたボールを最後に鎌田大地が触りゴールに吸い込まれ、土壇場で日本が同点に追いついた(2-2)。NECナイメヘンでプレーする小川航基が、まるでオランダのお株を奪うような空中戦を見せた。
喜ぶ日本と下を向くオランダ
試合終了間際は、引き分けで御の字の日本に対して、オランダは強引に勝ちに来た。両チームとも初戦は引き分けの勝点1でも上々のスタートとなるが、オランダは心理的に勝ち試合から勝点2を失ったという心理が働いた。全体としては、オランダが試合を優勢に進めていた。
前半はボールポゼッションがオランダの69%に対して日本は31%。シュート本数は、オランダの6本(枠内2本)に対して日本は3本(枠内0本)だった。そして、試合終了時点では、ボールポゼッション60%対40%、シュート本数10本(枠内6本)対10本(枠内3本)と日本が挽回した。日本は前半は守備を固めて耐えしのぎ、後半に勝負に出たことをデータも示している。(下に記事が続きます)
戦術カタールが北中米で進化
先行を許してもサムライブルーの選手たちは全く動じることはなく、着々と試合を組み立てていった。1点ビハインドも想定内という自信にあふれていた。これは、大国相手に対等に戦ってきた森保ジャパンの8年間の積み重ねの賜物だ。試合が進むにつれてギアを上げて追い上げる「戦術カタール」に磨きをかけ、より積極的な攻撃を見せた。
オランダにとっては後味の悪い試合となったが、日本としては最高とはいかないまでも上々のスタートを切ったと言ってよいだろう。前回2022年ワールドカップでは、複数の優勝候補と同グループとなり周囲からは敗退が濃厚と目され悲壮感が漂うなかで、初戦でスペインに一か八かの戦いを挑んで2-1逆転勝利を収めた。
それにくらべてドローに終わったオランダ戦のインパクトは小さいかもしれないが、着実に日本は成長している。しっかりと計算して余裕を持って戦い、勝点1を獲得した。運が悪ければオランダ戦は負ける可能性も十分にあったが、相手は世界屈指の強豪国だ。たとえ敗れたとしても残りの2試合でしっかりと勝点を獲得できることを期待させる戦いぶりだった。
さらに、出場国が48カ国に拡大しグループ3位でも決勝トーナメント進出の可能性があり、日本の選手たちはカタール・ワールドカップの時よりも心の余裕があるだろう。
守備で課題を露呈
前田大然はオランダといった前線の守備が重要になる対戦のために招集されたといっても過言ではなく、しっかりと守備で相手を疲弊させて後半途中に退くのもゲームプラン通りだっただろう。
1失点目のシーンは、クロスが入った瞬間にブラインドサイドにいた身長195cmのフィルジル・ファン・ダイクに後方から吹き飛ばされてフリーで打たれた。高さは警戒していたが、分かっていてもやられた。ただし、厳密には高さで負けたのではなく、大柄な相手に直前のポジション取りで先手を取られた。本来であれば、上背のない日本が取るべき身体を入れる術を相手にされてしまっては、勝てる空中戦も勝てなくなる。空中戦は、地上にいる時点からすでに始まっている。空中戦の競り合いは、今後も注意が必要だ。一方で、中村敬斗の右足が危険なのはオランダも分かっていただろうからお互い様だろう。
グループの初戦とあり、日本、オランダともに慎重で相手の良さを消し合うことに多くの労力を費やした。そんななかでも、前半の膠着状態を経て後半に4得点が入り、緊張感のある好ゲームだった。
日本は、ノックアウトステージ進出に向けて幸先の良いスタートを切ったと言えるだろう。

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