【ハンドボール】仲程海渡(福井永平寺ブルーサンダー)引退。デュアルキャリア体現

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精神的に死にたくない

何度でも立ち向かう姿が、仲程の真骨頂だった=2026年5月
何度でも立ち向かう姿が、仲程の真骨頂だった=2026年5月

――心のあり方も大事になってくるかと思います。仲程さんはたとえシュートを止められても、折れることなく、何度でも立ち向かえる選手でした。

仲程:消極的になる姿だけは見せたくないですよね。相手が「勝った」と思うはずなので。最後までシュートを打ちに来るヤツって、なんか恐怖じゃないですか。だから心が死なないこと。諦めないことですよ。僕はその姿勢を絶対に続けたい。だって僕、ハンドボールがうまくないので。 でも、そこだけは本当に負けたくないと思って、小学生の頃からやってきたつもりです。自分がうまくないことを認識しながら、じゃあどうやったら日本代表のヤツらに勝てるかと考えたら、心が折れないことだと思うんですよ。「こいつ何度止めても立ち向かってくるな」とか、「こいつずっと走ってくるな」みたいだと、相手も嫌じゃないですか。

――普通は、2~3本続けてシュートを止めたら「今日はレフトウイングをつぶせたな」と思うはずです。

仲程:そうなると、相手も楽になるんですよね。もう左サイドに打たせておけばいいってなるので。でも心が折れずに、ずっと闘志むき出しで打ち続けていると、チームはやっぱり乗ってくると思うんですよ。「あの人は諦めてないな」と。そこだけは絶対に負けたくない。僕の中で大事にしてきたマインドです。精神的な部分で、絶対死にたくないと思ってやってきました。(下に記事が続きます)

理性のもとで感情使う

レフトウイングから高確率でシュートを決める仲程海渡(福井永平寺ブルーサンダー)=2026年5月久保写す(以下すべて)
アルバモス大阪高石戦で、レフトウイングから高確率でシュートを決める仲程海渡=2026年5月

――とはいえ、止められたコースをむきになって打ち続けて、ドツボにはまる選手もいます。そのあたりの考え方はどうなのでしょう。

仲程:僕は「負けたくない」という感情を大事にしながらも、「感情に覆われると負けだ」とも思っています。「理性のもとで、感情を使わないといけない」と思っているので。 私生活でもそうです。 怒りとか憎しみとか、そういった負のパワーってめちゃくちゃエネルギーがあるんですけど、負の感情を使った時に、誰を幸せにできるかという話です。

――その場は結構発散した気分になりますよね。

仲程:その場は気持ちいいかもしれないですけど、それって自分が気持ちいいだけであって、誰にとってもメリットがない。 だから日頃の生活から、感情に覆われないように意識しています。シュートを外してネガティブに覆われると、もう全部が消極的になって、それがディフェンスにも影響したり、チームメートがもうパスを出さないとかにもつながってきます。でも僕の目が死んでなかったら、多分チームメートもパスを出し続けてくれると思うので。 今シーズンも全くシュートが入らない試合もありましたけど、最後まで味方がパスを出し続けてくれました。それは「僕の心が死んでいない」というところと、僕自身が感情に覆われずに「次どうやったら入るかな」と考え続けているのを、味方が感じ取ってくれたからかもしれません。ネガティブになると、ファンの皆様も気づくと思うんですよ。

――確かに気づきます。

仲程:そうなった時に「かわいそうやな」って思われるだけじゃないですか。もしくは「交代しろよ」と思われるだけで。そんなネガティブな感情を表現したところで、絶対プラスにはならないんですよ。これは私生活も同じです。「自分が辛い」って顔をしている人に関わるのは、難しいじゃないですか。周りも気を遣うと思います。だから僕は私生活でも、ネガティブな感情を出さないよう意識しています。自分がどれだけ落ち込んでいても、他の人には関係ない。自分が不幸をアピールしたとしても、何も幸せなことは出てこないので。それってもう完全に自分の殻にこもっているだけです。そういった心のあり方も黄さんに教えてもらいました。

――負けた後に床を蹴ってガーッとやる選手もいたりします。

仲程:そういうことをしていると、「応援したくない」って思われるでしょう。自分がそういうシチュエーションになった時こそ、どうやって切り替えて、どうやって自分が落ち込んでないというのを見せつけるか。それは黄さんがうまく教えてくれました。「シュートを外したあなたも、試合を作った1人だから、もう落ち込まないで」と言っていました。

――いい教えですね。

仲程:だから僕は落ち込まない。だって、お金払って見に来ている人に落ち込むところを見せるって、何がしたいんだって話ですよ。お金を払って見に来ているってことは、勇気をもらいたいと思うんですよ。お客さんには「見に来てよかった」と思ってもらいたい。その時に、コートで落ち込んでいる姿を見せられたら、「金を返せよ」って感じじゃないですか。僕らはあくまでもトップリーグで、プロとしてお金をもらいながらやっているので、それはもう本当に最低限のことだと思っています。

社会で生き抜く力を

仲程の1学年上で、小学校時代から一緒にプレーしてきた山田隼也(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)
仲程の1学年上で、小学校時代から一緒にプレーしてきた山田隼也(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)

――感情をコントロールして、適切に表現をしていますね。

仲程:いい感情は表現したいと思います。ただ、怒りや憎しみ、悲しみみたいなものを表現したとて、それは自己満足でしかない。そこはある意味プロとして、人として、ネガティブな感情を出さないよう徹底する。それが自分の生き方であり、修行になると思っているし、それがもしかしたら次の指導者として生きるかもしれないし、ビジネスマンとしても生きるかもしれない。そこは大事にしたいなと思いますね。そういうプロセスを経て、自分の弱みにも気づくだろうし、自分自身に向き合っていけると思います。そこに向き合わなかったら、僕ぐらいの年齢になった時に気づくと思います。 多分周りに誰もいなくなる。でも、その時にはもう遅いんですよ。社会でも必要とされなくなります。

――負けん気をどう表現するかという話で余談になりますけど、山田隼也(トヨタ自動車東日本レガロッソ)って不思議ですよね。あれだけ無愛想で、審判から目をつけられているのに、めちゃくちゃ仲間思いだし、最後まで折れないで相手に立ち向かっていきます。本当に強い相手、豊田合成ブルーファルコン名古屋やブレイヴキングス刈谷とやる時は、山田隼也が一番頼りになります。

仲程:僕も小学生から見てきた選手で、 1個上の先輩なので、そういうところは本当に彼の素晴らしいところだと思っています。何本止められても、気持ちいいぐらい思いっきり打ってくるので、やっぱり任せられますよね。悪い時でも「あの人にボール回そう」って思えます。体を張ったカットインで相手を退場に追い込んだり、「そんなとこ打つ?」みたいなシュートを決めたりするので、先輩ですけど、僕も大好きな選手です。すぐにむきになるところも含めて、彼の人間味ですよね。

――改めて思うのですが、仲程さんのボキャブラリーはアスリートの枠を超えているというか、どこでこんな言葉を仕入れたのでしょう。

仲程:福井永平寺ブルーサンダーの選手はみんな仕事もしていますし、僕は仕事も競技も本当にフルコミットしてやっているつもりです。ただアスリートとしてがんばっているというより、社会人として、ビジネスマンとしてもがんばれる環境があるので。 競技の環境として恵まれていないという見方もありますけど、そこは捉え方だと思っています。しっかり前向きに捉えてやれば、選手が終わった後もビジネスマンとして、社会人として生きる人間力というか、人間性を身につけるせっかくのチャンスなので、僕はそういったところを若い選手にも大事にしてほしいなと思いますね。

仲程海渡(なかほど・かいと)1992年9月28日生まれ、沖縄県出身。神森小学校~神森中学校~興南高校(沖縄)~東海大学~HEI(デンマーク)~琉球コラソン~チーム・クラクスヴィーロ(フェロー諸島)~STIF(フェロー諸島)~琉球コラソン~福井永平寺ブルーサンダー。身長170㎝、体重70kg、右利き。ポジションはレフトウイング。大学卒業後にデンマーク3部でプレー。2018年に琉球コラソンで一度引退したのち、1年半の会社員生活を経て、フェロー諸島でプロ契約を勝ち取った。2021年に琉球コラソンに復帰し、2024年からは福井永平寺ブルーサンダーに移籍。2026年5月限りで現役を退いた。ユニフォームネクスト株式会社では営業部営業グループに所属している。

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