福井永平寺の未来のために

――今日(2026年5月16日)の試合は、酒巻監督が来季へ向けての土台作りを意識したような采配でした。本当に勝ちたかったら、センターで山城翔をもっと早く出すだろうし、「ここまで新人の平野凌斗に託すか?」みたいなところはありました。 タイムアウトも2テンポぐらい遅かったし、自分たちで立て直す力を求めているようにも見えました
仲程:今日はビルケフェルト・サイモンを後半で使わなかったりとか、そういったところは僕も感じ取れました。そのメッセージを、どれだけ若い選手が感じ取れるか。僕も後半の中盤、ベンチで休ませてもらって、「ラスト10分行くぞ」と思っていましたけど、結局玉井康仁をずっと使い続けました。それは酒さんから玉井に対するメッセージだと思うんですよ。来季は僕がいないですし、レフトウイングがいなくなっちゃうんで。今日に関しては、玉井が思いを感じ取って、コート上で表現してくれたと思います。
――現役生活最後の1年で、酒巻監督から学べたのはよかったですね。
仲程:濃密な1年間でした。ハンドボールのことを熟知した素晴らしい指導者と、現役生活最後に巡り合えたことを、僕は本当にありがたいと思っています。僕自身は、今後指導者を目指したいなと思っているので、酒さんから学んだことを、今度は僕が次の世代に伝えていく。そういう指導者になれたらなと思っています。
――酒巻監督の教えた原理原則を理解している選手は、リーグHで長く活躍しています。福井永平寺の選手も原理原則を理解しつつありますが、慌ただしい展開になるとそれができなくなっているように見えます。
仲程:酒さんの言っていることはシンプルですが、それを徹底するのは難しい。でも原理原則を極めて、大きな土台になれば、そこからの応用が利くと思うんですよ。今年1年は、本当に土台や基礎を固める年。酒さんがそういうチーム作りをしていたので、ベテランが「自分が、自分が」としていると、そういうチームにはなりません。声かけの部分だったり、とにかく寡黙に走ってみるとか、「酒さんの言っていることが、チームのみんなに浸透するようなサポートができたらな」と思って始めた1年でした。
若手の人間性と成長

――そういう積み重ねが、初のプレーオフ進出へいずれつながるかと思います。
仲程:プレーオフに行くには、もしかしたらあと2~3年かかるかもしれない。今の2年目、3年目の選手たちが、5年目、6年目になった時には、おもしろいチームになっているんじゃないかなと、僕は期待しています。 彼らが成長するための犠牲になるんだったら、それでもいいかなと思って、この1年はやってきました。そのぐらい彼らの成長に、僕は賭けたいと思っていました。そういう思いにさせてくれたのが、今の若い選手の人間性なのかなって。人間性がダメだったら、僕もそこまで期待しないと思います。
――若手、中堅で言えば、髙橋友朗は今日完全に、アルバモス大阪高石の左側のDFにフィジカルで勝っていました。以前は綺麗に抜くイメージはありましたが、こんなゴツゴツ行けるカットインもあるのかと、イメージが変わりました。
仲程:僕は琉球コラソンで彼の1年目から見てきて、2026年でもう5年目か。福井永平寺に来てから体作りを見直して、酒さんの指導のもと、強い1対1を体現できる1人になりました。琉球時代はフィジカルがなかったから、きれいに抜ければいいんですけど、抜けない時はプレーができない課題がありました。今はちゃんと体を作って、自分で体張って、間に突っ込んでいけるようになりました。個人的にもやっぱり嬉しいですね。1年目から彼を見てきているので。
――髙橋は琉球コラソンでの後半ぐらいに、急激にカットインがうまくなりました。
仲程:琉球での3年目ですね。ロングシュートも決まるようになって、急成長しました。福井永平寺に来て体作りをして、今年1年で彼は少しずつつかんできているので、来年が楽しみな選手の1人です。次が福井に来て3年目か。琉球の時の3年目で爆発的に伸びたみたいに、来年爆発するのかなと、期待しています。 (下に記事が続きます)
黄慶泳監督との出会い

――正しいことを積み重ねていたら、3年に一回成長期が来るのかもしれませんね。仲程さんも琉球コラソンに復帰してから、一回成長期が来ましたね。
仲程:僕がフェロー諸島から琉球に戻ってきた時は、黄さん(黄慶泳(ファン・キョンヨン)監督・現三重バイオレットアイリス)だったので、本当に運命的な出会いだったなと思っています。
――女子の名将・黄慶泳監督が男子を見たのは、あの1年だけ(2021-22シーズン)でした。1対1から始まって、講習会のような指導を毎日やっていたと、伝説になっています。
仲程:黄さんにはハンドボールの大事なことを教わりました。基本だけでなく、チームが変わるにはこれだけの熱量だったり、エネルギーが必要なんだと。琉球コラソンをあそこまで変えたのは、僕は黄さんだと思っているので。 黄さんと1年を共にさせていただいて、一番は人として大事なことを教えてもらったかなと思います。黄さんが一番言っていたのは人間性。「偉くなっても、とにかく頭を下げなさい」と教えてくれました。黄さんの教えがあるから、僕は今のプレーができるのかなと思います。見えないところでも走るとか、仲間がミスしても戻るとか、そういうのができるのは、僕は黄さんと大学の恩師・田村修治先生のおかげだと思っているので。 そこが、僕が本当にずっと大事にしてきた部分ですね。
シュートうまくても世の役に立たないが

――仲程さんはプロ契約している選手以上にプロらしいマインドを持って、いつも戦っています。それでいて、仕事もされているんですよね。
仲程:めちゃくちゃ仕事しています(笑)。
――ユニフォームネクスト株式会社の営業の仕事でも結果を出したり、仕事と競技の両方をリンクさせながら、両方のフィールドで活躍されています。
仲程:海外でプロ生活をさせていただいて、競技に専念できるありがたみや、契約を切られる厳しさを味わいました。日本に戻ってきたら、やっぱり雇用していただいているありがたみとか、会社で必要とされるありがたみを感じました。僕自身はハンドボールで育ってきた人間ですが、プレーがやりたくてもできなかった境遇も経験しています。だから「自分からハンドボールがなくなった時に、どうやって人として必要され、必要とされるか」というのは考えてきたつもりです。 ハンドボールをしない期間も、僕にとっては本当にプラスだったなと思っています。ハンドボールをせずに仕事していた期間が、また僕を成長させてくれたと思うので。 若い選手や竹内コーチにも言うんですよ。 「左サイドのシュートがうまいって、世の中で何の役にも立たないから」って。
――GKの腰横ボール1個分を打ち抜く技術とか。
仲程:何の役にも立たないですよ。 本当にそれを僕は経験してきました。役に立つとしたら、人よりちょっと重たいものを持てるかなとか、そんなレベルです。でも、サイドシュートをうまくなるために、どういう訓練をして、どういう我慢をして、いっぱい挫折して、じゃあこういう風に今度やってみようかと考えていく、その姿勢が生きると思うんです。
――自分自身を伸ばしていくプロセスですか。
仲程:だから、そういうところを僕は大事にしたいし、それが少なからずプレーで誰かに伝わっていればいいな。





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