ハンドボール日本代表のアジア競技大会出場メンバーが2026年7月7日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで男女とも発表されました。新しいユニフォームも披露されました。愛知・名古屋で2026年9月に開催される大会は、女子はナショナルウイーク(IHFが定めた代表活動期間)と重なったため、海外組も含めた18人が選ばれました。 初優勝だった前回の2023年よりも豪華な布陣で、なおかつ未来にも期待が持てるメンバー構成です。1人ずつ紹介します。
No.3 初見 実椰子(PV/28歳/神奈川県/三重バイオレットアイリス)
賢いミヤコは、どの監督からも重宝されます。ピヴォットのバックアップと2枚目DFが主な役回り。チームがちょっと崩れかけた時に、初見のような選手がいてくれるととても助かります。バックプレーヤーでも動ける素養があるので、4バックは新たな見せ場になるでしょう。ライン際に切ったり、浮いたり、ウイングを切らせたりと、さりげなく攻撃の幅を広げてくれそうです。
No.5 金城 ありさ(RW/26歳/沖縄県/三陟市庁<韓国>)
生粋のバックプレーヤーですが、モーテン・ソウバク監督は金城をライトウイングに入れて、攻撃の起点にしたいようです。大きく回り込んでからの1対1だったり、サイド切りの動きからボールをもらったりと、通常の「角を取る」ウイングとは違う動きが求められます。国際試合に強く、2024年12月のアジア選手権決勝では逆足のステップシュートを決めて、韓国戦勝利の立役者になっています。
No.13 中山 佳穂(RB/27歳/岡山県/CSM Slatina<ルーマニア>)
しなやかさを失うことなくスケールアップ。海外仕様の強い体になって戻ってきました。ありえないくらいしなる左腕から放たれるシュートは、球持ちがよくてGK泣かせ。以前は豪快なロングシュートがメインでしたが、近年はアウト割りの比率が高まり、インとアウトのバランスがさらによくなりました。ケガなく元気でいてくれたら、それだけでチームにとって大きなプラスです。
No.19 佐原 奈生子(PV/30歳/福島県/ハニービー石川)
モーテン・ソウバク監督体制で開花した選手の一人。代表ではずっと控えでしたが、ソウバク監督が佐原のサイズとポテンシャルを評価し、DFの要に据えました。「ナオコはDFの王様だから」とお墨付きをもらったことで、見違えるほど自信をつけました。コート内外での振る舞いにも風格が出てきて、これからが佐原の最盛期。身長180㎝でこれだけ動けて走れる選手は、なかなかいません。
No.21 和田 薫(LW/25歳/奈良県/香川銀行シラソル香川)
今回のアジア競技大会が代表デビューとなります。所属では3枚目を守る大型レフトウイングで、代表では左の2枚目に入ります。吉留有紀とともに、レフトウイングは守備型の選手が2枚になりました。どちらが入っても、アグレッシブに仕掛ける役割を担うことになるでしょう。もしもの時には3枚目DFができるから、戻りで交代できなかった場合などにも存在感を発揮してくれそうです。
No.23 相澤 菜月(CB/27歳/茨城県/Thüringer HC<ドイツ>)
本場ドイツでも圧倒的な存在感を示している司令塔。持ち前のスピードや1対1の強さはそのままに、海外仕様でひと回り大きくなっています。所属のチューリンガーでも、相澤が負傷でベンチに下がると、とたんにゲームが崩れるほど、絶対的な存在になっています。今や李美京(元韓国代表/元オムロンほか)に替わる「アジアで一番うまい選手」。できないことがなくて、判断にほぼ間違いがありません。
No.27 藤田 明日香(RW/30歳/大阪府/CS Gloria 2018 Bistrița-Năsăud<ルーマニア>)
本来であれば、2025年11月の世界選手権で、ライトウイングの一番手でした。海外合宿で絶好調が続いていた矢先に、ケガで戦列を離れました。リハビリを経て戻ってきて、アジア大会ではフィニッシャーとしての活躍が期待されます。海外で結婚、出産後も第一線でプレーを続け、本場でも高いシュート技術を評価されている選手。2019年の熊本世界選手権の時よりも成長した姿を見せてくれることでしょう。
No.30 亀谷 さくら(GK/39歳/ノルウェー/CSM Slatina<ルーマニア>)
2015年から日本代表になり、10年以上日本のゴールを守り続けています。おりひめジャパンの躍進は、ワールドクラスのGKさくらとともにありました。「そろそろ、さくらの次を育てないと」と言われていますが、本人は今も元気で、代表入りをモチベーションにプレーを続けています。面を崩さず、全身で飛び込むダイナミックなスライディングは、ワールドクラスの爆発力です。
No.32 佐々木 春乃(LB/31歳/富山県/Frisch Auf Goppingen<ドイツ>)
「日本代表とは何か」を、次の世代に伝えてくれるベテランです。攻守にフル出場する年齢ではなくなりましたが、手薄なレフトバックで的確な判断を繰り返し、効果的な得点を挙げます。以前は「世界に通用する、数少ないロングシューター」でした。今は確率を重視して、1対1をしつこく狙い、相手をかわした直後のミドルシュートでの得点が増えています。簡単な通訳ができる語学力でも、チームの助けになっています。
No.37 松浦 未南(CB・LB/24歳/山口県/香川銀行シラソル香川)
2025年11月の世界選手権では「逆ミスマッチ要員」で大活躍しました。1対1で大きな相手をほんろうする姿は痛快そのもの。フィジカルも強くなり、国内レベルならほぼ1対1だけで無双します。ただしカットインは松浦のほんの一部にすぎません。パスを回せて、全体が見えて、なおかつ状況に応じてロングシュートも打てるのが、松浦本来のよさ。今大会は2番手のセンターでも出場機会が増えそうです。
No.39 グレイ クレア フランシス(PV/29歳/神奈川県/アランマーレ富山)

国内最強の攻撃型ピヴォットは、2025年11月の世界選手権でも大活躍。英語が話せるので、現地メディアからも大人気でした。素晴らしい筋量がありながら、胸郭の可動域が広いので、GKが詰めてきてもループシュートでかわせます。本人は「よく分からない」と言いますが、子供のころにやっていた水泳の影響もあって、胸周りが柔らかいのでしょう。DFでも評価を高めてくれたら、言うことなしです。
No.51 吉留 有紀(LW/27歳/鹿児島県/ハニービー石川)
ソウバク監督が信頼している、守備型のレフトウイング。左2枚目に入って、アグレッシブなDFの起点になります。クロスアタックで、相手のセンターをバチンと止めて、チームの士気を高めてくれます。絶妙な間合いからのパスカットに、プレーオフでも見せたルーズボールに真っ先に飛び込む姿勢など、勝負の一瞬に「牙をむく」怖さが、吉留の真骨頂。世界選手権で悔しい思いをしたサイドシュートでもリベンジを。
No.65 中尾 藍(LB/20歳/京都府/大阪体育大学)
今回のサプライズ枠。歴代最高順位だった、U20ジュニア世界選手権7位の立役者が、帰国直後にフル代表に合流しています。175㎝と上背がありながら、しなやかなカットインからループシュートまで、全身を無駄なく使ってプレーできます。3枚目も守れて、攻守でチームの背骨になれる逸材です。長年人材が枯渇していた日本のレフトバックに、久しぶりに現われた大器。佐々木春乃の後継者がようやく見つかりました。
No.77 上嶋 亜樹(GK/25歳/石川県/ASUL Vaulx-en-Velin Handball<フランス>)
こちらは亀谷さくらの後継者。内定選手でプレーしていた熊本ビューストピンディーズ時代から、世界で揉まれて、どこまで成長したのか楽しみです。DFと連携してオーソドックスに守る時間帯もありながら、ノーマークシュートには一転してダイナミックな仕掛けを見せます。「静と動のコントラストが映えるGK」とも言われているので、切り替わる瞬間を生で見られるのが楽しみです。
No.84 比嘉 楓(GK/22歳/沖縄県/香川銀行シラソル香川)
リーグHに入った半年足らずで、圧倒的な結果を残して、代表に初招集となりました。見るからに瞬発力がありそうな身体つきから、ダイナミックなキーピングで会場を沸かせます。「そんな練習はしていませんよ」と言いますが、ノーマークシュートを片手キャッチしてしまう伝説のシーンが、国際試合でも見られるでしょうか。爆発力があるので、短時間でも場の空気を支配できるGKです。
No.89 石川 空(BP/23歳/大分県/Balonmano Bera Bera<スペイン>)
コート全体が「見えている」左利き。2025年11月の世界選手権では、所属での出場機会が少なかったこともあり、ゲーム勘が鈍ったままでした。その後出場機会を増やすべくスペインに渡り、体もひと回り大きくなりました。常にピヴォットを視野に入れながら、的確な状況判断で、チーム全体の得点を伸ばしていけます。学生時代から日本代表で場数を踏んでいるので、勝負度胸も抜群です。
中尾藍「物怖じせずに世界と戦えた」

発表会見の直後に、女子日本代表は練習がありました。中国で開催されたU20女子ジュニア世界選手権から戻ってきたばかりの中尾藍は、同じくジュニア選手権を戦った加藤真央(大阪体育大学)とともに、ストレッチをしながらの練習見学でした。
「ジュニア世界選手権では、私たちは身長が低い分、機動力のあるDFからの速攻と、OFではフェイント、カットインを徹底して、ヨーロッパ勢に対抗しました。DFは、相手がきっかけの動きを始めるタイミングで当たって、相手のプレーが止まったり、ドリブルをついて選択肢が減った状態に追い込んでから、通常の6:0DFに戻る守り方でした。GKの尾﨑羽南(大阪体育大学)もよく止めてくれました。全員がユース(U18)とかでも世界と対戦しているので、物怖じせずというか、思い切ってプレーできました」
「OFではカットインが多くなるから、GKをよく見るように練習してきました。GKが大きいので、足を上げたら股下が広くなるとか、片足重心になった時にはループが有効だとか。意識して取り組んできた成果が出ました。両サイド(木尾と陣野)がよく決めてくれたから、チームとしてもありがたかったです。ずらして、ずらして、サイドが決めてくれるから、カットインもしやすくなって、いい流れになりました」
終始笑顔で取材に応じてくれた中尾も、カットインからのループシュートを鮮やかに決めています。世界と対戦したら、まずシュートが入らない。カットインしてもGKにぶつけてしまう。大きい相手への慣れから始まるところを、女子のU20は早い段階から世界に慣れています。ソウバク監督も「若い世代を、これからどんどんフル代表に入れていく」と宣言していました。相澤菜月、中山佳穂に続く世代が出てきたことで、選手層に厚みが出てきました。
佐々木春乃「代表つないでいく」

一方、長年日本代表を支えてきた佐々木春乃は、練習中にソウバク監督の英語を通訳するなど、監督と選手をつなぐ役割を意識しているように見えました。練習後には、その日にやった動きをホワイトボードに書き残して、選手間で話し合っていました。
「初めての子もいるし、モーテンとは一緒にやって、やりたいことや狙いがわかっているので、簡単な通訳をしただけです。若手がいっぱい入ってきてくれて、うれしいですね。代表は固定メンバーでやるより、一年を通して新しい選手が何人か入ってきた方が、若い選手にも刺激になるし、こちらも刺激になります。中尾藍には期待していますよ。ライトバックには人材がいますが、レフトバックで大きい子はなかなかいないですから。若い選手も増えて、世代の融合です。ひとつの大会が終わって、ガラリとメンバーが変わってしまうのは、代表の伝統をつなぐという意味であまりよくないので」
「ホワイトボードに書いたのは、今日やったことを忘れないように。DFにしか入っていなかった子でも、これを見て理解してくれるように。また一から始めるのではなく、少しでも積み重ねていくためです。今日は合宿の初日で、オフ明けの選手もいるから、頭の体操からのスタートでした。2025年11月の世界選手権はとにかく時間がなかったから、代表ではストレートなハンドボールしかやっていません。これから細かい戦術などもやって、世界で勝てるように仕上げていくと思います」
「今は所属(ゲッピンゲン/ドイツ)でも信頼されていて、求められる部分が所属と日本代表と同じなので、とてもやりやすいです。所属でも私の経験値を買ってもらっています。ドイツで住むためのドイツ語の試験にも、この間合格しました。来年には永住権も取れますし、引退後もドイツで暮らすために、これからも語学を学び続けます。学ぶことをやめるのは、後退の始まりですからね」
2024年4月のパリ五輪世界最終予選で辛い思いをした佐々木ですが、しっかりと気持ちを切り替えて、その後も代表活動に参加しています。パリ五輪以降は若手の自主練習に付き合うなど、「代表をつないでいく」ことを意識した言動が増えています。ベテランの思いが受け継がれて、次世代が育っていく――理想のサイクルです。
ソウバク監督「自分たちにフォーカス」
2023年の前回大会では、GK馬場敦子(ハニービー石川)の大当たりで、韓国に10点差をつけての初優勝でした。連覇への期待が高まりますが、ソウバク監督は「韓国は最大のライバルだし、中国も力がある。でも今は自分たちにフォーカスする時期だ」と慎重でした。世代が融合し、どんなチームになるのか。アジア競技大会でのおりひめジャパンが楽しみです。ハンドボール女子は2026年9月20日に予選が始まり、27日に決勝が予定されています。会場は愛知県稲沢市の豊田合成記念体育館 エントリオと、同県春日井市総合体育館です。

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