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大谷翔平ドジャース入団会見 質問も回答も物足りない

ドジャース入団会見で記者の質問に答える大谷=mlb.comより
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2023年12月15日午前8時、ドジャース大谷翔平が入団会見した。

ドジャースタジアムで行なわれた記者会見にはファンの姿はなく「メディア限定」。約300人の記者が集まり、その模様は日本でも地上波やAbema TVなどで生中継された。

大谷はドジャー・ブルーのスーツにネクタイを身にまとい、通訳で練習パートナーでもある水原一平さんと登場した。オーナーから渡された背番号17のユニフォームとキャップを手渡されると、ジャケットを脱いで初めてドジャースのユニホームに袖を通した。

大谷は日本語で「明確な勝利を目指すビジョンと、豊富な歴史を持つドジャースの一員になれて、いますごく興奮しています」と引き締まった表情で語ったまでは、よかったが…。

4か月ぶりの肉声なのに

メディアを介して大谷の肉声を聞くのは約4か月ぶりだった。大谷が公式の場で取材に応じるのは、10勝目を挙げた8月9日以来だった。9月に右ひじの手術を受けたあとも取材を受けていない。先月、満票でア・リーグ2度目のMVPに輝いた時は犬と戯れる様子がリモートやSNSで流れたが、その後の記者会見はなかった。

この日、ドジャースタジアムでの記者の質疑応答は14問。大谷は一つひとつの質問に丁寧に応じたが、記者の質問力と、大谷の答える内容の両方に物足りなさを感じた。

犬の名前より大事な質問を

愛犬の名を米国の記者から尋ねられて「デコピン」と明かしたときには会見場が一瞬、和んだが、肘の手術や契約の詳細は語られず、4か月の「空白」を埋めるには消化不良だった。Pen&Sports[ペンスポ] にも、日頃から感想や意見を寄せてくれる読者から「二刀流に関する肝心な質問がされていなかった」「再来年以降も投げられなかった場合、打者に専念して現役を続けるつもりなのか」「犬の名前より大事な質問をする機会を、記者たちは自ら手放した」などの意見が届いた。私も同じ思いだった。

大谷は、MLBのみならず世界の全てのスポーツを含めたトップ・オブ・トップのアスリート。日米の大谷番記者の取材の苦労を察する一方で、その限界を感じる。大谷はエンジェルス時代も、投手として登板した試合後には取材対応したが、打者としてのみ出場した試合では取材対応しなかった。まして、これまで4か月は、全く彼の直接肉声を聞けない環境で、記者は米国にいても意味がないと判断されるケースもあり、日本の新聞社のなかには、記者を日本に引き上げさせた社もあると聞く。

スポーツジャーナリズムとはなにか。10年で1022億円を稼ぐ大谷はまぶしくて、雲の上の存在のようで、恐れ多いけれど、スポーツ取材は選手と記者は対等であるのが望ましい。そうでないと、いつまでたっても選手の本音は聞けない。悪い意味で空気を読んで、遠慮して、核心に迫る質問で斬りこんではいけない。

私は新聞社のデスク時代、「〇〇選手がインタビューにこたえてくれた」などと記者が選手にすり寄るような表現で書かれた原稿を「〇〇選手がインタビューに応じた」と、フラットに対等に書き直してきた。選手と記者の関係を読者は簡単に見透かす。

無難なコメントの連打、大谷自身にも損失

ドジャース大谷の活躍は楽しみだけれど、ファンは大谷のプレーだけでなく、何を思い、何を語るかにも注目している。しかし、野球に集中したい大谷が語る機会はおそらくドジャースでも限られ、語ったとしても ”Nothing Special” (特別なことは言わない)という状況が続きそうだ。取材対象としてはかなり手ごわい相手だと感じる。

アメリカに渡って6年。そろそろ、流暢に話せなくても、英語で自分の思いを表現してもいい。通訳を介した、無難なコメントやQ&Aの連打は、大谷自身にとっても「損失」だと感じる。

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