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【バレーボール】ペルージャの斬新SNS  仕掛け人はこの人 [上]

ペルージャのSNS担当・フランチェスコ
ペルージャのデジタル担当・フランチェスコ。SNSだけでなくアプリなどデジタル系全般を担当し、多くのアイディアはこのオフィスで彼が生み出している=2024年5月、中山写す
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2023-24シーズン、リーグ優勝、世界クラブ選手権2連覇など4冠を達成したイタリア男子バレーボール・スーペル・レガのペルージャ(正式名:SIR SUSA VIM PERUGIA=シル ・スーサ・ ヴィム・ペルージャ)。中央大学在学の2014年、名門モデナに加入してから10シーズン目を迎える今季、世界最強と言われるこのチームに加入するのが日本代表のキャプテン・石川祐希である。その背番号にちなんだ5月14日、話題騒然となった石川加入のペルージャ公式SNSの投稿は、ファンの記憶にもまだ新しいことだろう。石川に関する投稿の裏側、そして投稿のアイディアはどこからきているのかなど、SNS戦略でも一歩先を行くペルージャのデジタルマネジャーに話を聞いた(全2回の1回目)。

目次

ラジオ実況からデジタルマネジャーへ

SNSで話題の投稿は、このデスクで生まれる=2024年5月、中山写す
SNSで話題の投稿は、このデスクで生まれる=2024年5月、中山写す

筆者はイタリアで通訳やコーディネイターとして20年以上仕事をしているが、担当者までたどり着かない、返事が遅い、忘れられるなど、一回目のコンタクトは一筋縄でいかないことがほとんだ。

しかし、ペルージャ・デジタル担当のフランチェスコ・ビアンカラーナ(34歳)は違っていた。最初からスムーズなメールやチャットのやり取りが続き、筆者の印象は「何もかもが早くて正確な仕事が一緒にやりやすい人」。

あのシルチ会長やロレンツェッティ監督とのインタビュー、スポンサーでもあるお店でのランチをセッティングしてくれただけでなく、アリーナの施設案内も彼が取り仕切ってくれた。さらに他のスタッフや偶然居合わせたプロトニツキ選手を紹介してくれたり、最後は宿泊先のアッシジまで送迎してくれたり。

Pen&Sports [ペンスポ]で開催したオンラインイベントでの参加者プレゼントとなった石川のユニフォームも、彼のアイデアで実現した。つまり何から何までお世話になったのだが、それを大変そうにも見せず、淡々と楽しそうにすべてをこなすフランチェスコ。会う前の好印象は実際に会ってみて確定的なものとなった。

彼がペルージャとかかわるようになったのは2018年。IT分野での仕事に加え、趣味で地元サッカーのラジオの試合実況を担当していたが、バレーボールの試合実況者が急に出られなくなり、「ピンチサーバー」としてフランチェスコが抜擢された。

バレーの専門知識はなかったが、その面白さにハマってその後もバレー実況を継続する。その他イベントスタッフなどつかず離れずのコラボレーションを経て、2022年に他の仕事を辞めて専業でペルージャのデジタル担当の職に就いた。

昔から動画制作が好きで趣味だったフランチェスコは、その撮影や編集能力に長けているだけでなく、持ち前の好奇心とユーモアたっぷりの内容で他チームの追随を許さない「バズる」投稿のアイデアを持ち合わせている。猫などのミームを使い、時に挑発的に見える投稿もあるが、新しいことをやるには勇気も必要だと言い切る。

ペルージャ公式Xより。4つのミームはスーペルコッパ、世界クラブ選手権、コッパイタリア、スクデット。「今年もお前ら勝てないよね」.ひとつ間違えば怒りやひんしゅくを買うギリギリラインで攻める

日本人アスリートシンボルはナカタからイシカワへ

フランチェスコのアイディアでオンラインイベント参加者へのプレゼントがこのユニフォームに決定
(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)
フランチェスコのアイディアでオンラインイベント参加者へのプレゼントがこのユニフォームに決定
(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)

それまで個人的にもペルージャのSNS投稿を注視してきた筆者であるが、まずはやはり石川入団の公式発表投稿について聞かないわけにはいかないだろう。

発表の5月14日には実に5本の投稿(XInstagramFacebookTikTok)を立て続けに行ったが、まずは朝に「おはよう」と日本語で石川の正式発表を匂わせる。次に動画に登場する席に「14時予約」の立札と「ご予約済み」のコメントで、14時に本編が投稿されることを通知する。期待をあおるような投稿に反響は右肩あがり、そして14時に投稿された動画の表示はXだけで108万回(2024年8月末時点) 。その数字を追いながら、フランチェスコも予想以上の反響に興奮状態だったそうだ。

他の投稿と同様に企画、シナリオ、編集ともにフランチェスコがすべて一人で行った。公式発表時は石川は日本におり、彼自身が演技することはできない。ユニフォーム姿の写真とコメントだけ日本のマネジャーを通して依頼し、あとはペルージャでの撮影だ。

ペルージャ公式Xより。メニューの7は1998年にペルージャでサッカー・セリエAデビューして大活躍した中田英寿選手、14はもちろん石川祐希選手。ロレンツェッティ監督は7と14をオーダーするが7はもうなく、14だけいただきます、というシナリオ。

撮影場所はペルージャのスポンサーでもあるアジア料理店・Il Vizio。実際に使われたフランチェスコお手製のメニューは「7 H.Nakata Fantasia dello chef (シェフのファンタジー)」「14 Y.Ishikawa Sushi di giorno(本日の寿司)」と、メニューの内容までしっかり作りこまれている。オーダーを取りに来る人は本当の店のスタッフ。7と14以外のメニューは実際にお店にあるメニューばかりだ。

ちなみに中田は多くのペルージャの人々にとってイタリアで活躍した日本人アスリートのシンボルであるが、フランチェスコ自身も8歳の時に初めて購入したペルージャユニフォームが中田選手のものだったほど、彼の大ファンであった。しかしこれからは、ペルージャでの日本人アスリートシンボルは中田から石川に代わるかもしれない。(下に記事が続きます)

秀逸な作品は他の選手の投稿でも

動画で使った小道具はフランチェスコのオフィスに保管してある。
石川の動画で使用したメニューと、コラーチ選手の動画に登場したワイン=中山写す
動画で使った小道具はフランチェスコのオフィスに保管してある。
石川の動画で使用したメニューと、コラーチ選手の動画に登場したワイン=中山写す

石川の投稿と同様に、他選手の契約更新や入団投稿もチームメート、スポンサーなどを巻き込んだ多彩な内容ばかりだ。

ペルージャ公式Xより。1年間他チームにレンタル移籍したピッチネッリ選手が電車でペルージャに戻ってくる演出。
実際の鉄道会社の係員が出演している。
ビジネス系ソーシャルLinkedInの募集で面接のうえ採用された、という設定のチャンチョッタ選手。
1つ前の募集要項の投稿は実際にペルージャのLinkedInに掲載されたため、100人くらい応募があったそうだ。

他の選手の入団動画は1つずつだが、石川の場合はさらに話題をさらったアニメ動画が続く。後編では「石川のアニメ動画」とチーム合流時にペルージャから投稿された「ハリーポッター」風演出の投稿についてリポートする。

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