日本車椅子ハンドボール連盟はこのほど、2024年9月16日からエジプト・カイロで開かれる第3回車いすハンドボール世界選手権(4人制)に出場する日本代表11人を発表しました。チェアスキル(車いす操作)の優れた選手がそろい、初出場初優勝を目指します。今回はカードゲームを楽しむような感覚で、いくつかの予想布陣を紹介していきます。
4人でハンディ合計12点まで。コートに女子1人も必須
車いすハンドボールでは、ハンディキャップの程度を1~4にクラス分けしています。クラス4は障がいの軽い選手。数字が小さくなるほど、障がいが重く、動きが限られてきます。車いすバスケットボールなら0.5ずつ刻みますが、車いすハンドでは0.5は切り上げになります。たとえば車いすバスケでクラスが1.5の選手は、車いすハンドだとクラス2になります。
4人制の車いすハンドでは、4人のハンディキャップの持ち点が合計12以内になるよう編成します。なおかつ女子選手が最低1人、コートにいる必要があります。GKには誰が入っても構いませんし、色違いのビブスを着る必要はありません。GKが攻撃参加して4人で攻めてもいいですし、女子選手をGKの代わりに残しておいて、戻りで交代するのもありです。このルールを理解したうえで、日本の11人をどう組み合わせるか見ていきましょう。ポイントの合計に制限があるあたりは、カードゲームにも似ています。
日本代表メンバー紹介
日本代表メンバーです。★は女子選手。GKはキーパーができる選手。▲は左利き。名前のあとにあるのは特性(特殊能力)です。
クラス4
諸岡晋之助:エース・燃える男・ハンドボールIQ
森谷幸生:GK・攻守万能・ムードメーカー・積極性
安田孝志:ポストプレー・リーダーシップ
小貫怜央▲:爆肩・点取り屋
クラス3
伊藤優也:鉄壁・機動力・球際の強さ
平井楓花★
クラス2
永田裕幸:ボールゲームの真髄・世界で戦うメンタリティ・駆け引き・球際の強さ
木村正也:GK・鉄壁・駆け引き・大当たり
大和田洋平:GK・バランサー・ハンドボールIQ・速攻の起点
古矢千尋★:ボールゲームの真髄・バランサー
大石亜木菜★
クラス1
なし
基本ユニット:諸岡4、GK森谷4、永田2、古矢★2
スタートはおそらくこの4人になるでしょう。エース諸岡、攻撃参加が得意なGK森谷の2人は、健常の7人制ハンドボール経験者。チームの背骨となる2人です。ローポインター(持ち点が小さい選手)に永田、古矢と車いすバスケ日本代表経験者がいるのが心強い限り。エースの諸岡曰く「このユニットの時は、チェアスキルとスピードで相手を驚かせたい」。車いすバスケ仕込みのチェアスキルで、試合の主導権を握ります。
攻撃的1:諸岡4、小貫4、GK木村2、古矢★2
車いすソフトボール世界MVPの小貫を入れた布陣です。車いすで40メートルを余裕で投げる小貫の左肩は、きっと世界でもナンバーワンでしょう。12~15メートルからでもロングシュートが入るし、自陣からも積極的にエンプティゴールを狙っていきます。「ゴールを狙うことで、相手に緊張感を持たせたい」と、自分の役割を心得ています。
このユニットの要になるのが、女子のローポインター古矢。自陣ではボールを運びつつ、敵陣に入ったらスクリーンをかけて、諸岡、小貫の両大砲を気持ちよく打たせる役目に徹します。「まだ車いすハンドの練習は3回目。ターンオーバーを減らしたい」と謙虚な古矢ですが、戦術理解度は車いすバスケで実証済み。「死に役」に徹することができるローポインターです。
攻撃的2:諸岡4、小貫4、GK大和田2、大石★2
チェアスキルをこれから伸ばしていきたい大石を入れた場合は、GKの大和田が攻撃でつなぎ役になります。盛岡市立高校でGKだった大和田はハンドボール観がしっかりしているので、攻守に足りないところを埋めてくれます。スクリーンをかけるだけでなく、シュート力もあり、さらには速攻のパス出しが得意です。「もっと速攻のパスを出したいんですよね」と話していたように、代表合宿2日目には絶妙なパスで諸岡、小貫を走らせていました。
ポストプレー:安田4、小貫4、GK木村2、古矢★2
単発のロングシュートが増えてきた時には、最年長51歳の安田を入れて、ポストプレーでOFの組み立てを変えていきます。車いすバスケで長年センターをやってきた安田は、くさびになるプレーを心得ています。片手キャッチからのポストシュートだけでなく、DFを寄せたあとにパスを出して、小貫にロングシュートを打たせたりもできます。キャプテン兼トレーナーの安田は、みんなの心と体をケアしながら、試合でもチームを落ち着かせます。
守備型:GK森谷4、伊藤3、永田2、古矢★2(平井★3)
機動力なら日本で一番の伊藤を入れて、守備力を最大化させたユニットです。代表合宿では初めて組む選手との合わせに苦労した伊藤でしたが、気心知れたメンバーで組めたら、得意のハイプレスができるはず。あるいは相手のエースに伊藤をつけて、マンツーマンでタイトに守るのもありです。持ち点の合計が11になる組み合わせなので、女子選手でクラス3の平井を使うなら、伊藤とセットになるでしょう。
GK併用1:諸岡4、GK森谷4、GK大和田2、古矢★2
GKができる選手を2人入れておけば、どちらかの戻りが遅れた時でも、もう1人がGKに入ればピンチになりません。GKをコロコロ代えることで、相手も戸惑います。この組み合わせは練習試合でもスムーズだったし、大和田も「とてもやりやすい」と言っていました。ダイナミックで声のよく通る森谷と、地味に阻止率の高い大和田。正反対なキャラのようで、プレーの相性はいいみたいです。
GK併用2:諸岡4、GK森谷4、GK木村2、古矢★2
サッカーのGKだった木村は、シュート阻止に特化したGKです。相手の目線を見て、位置取りを変えて誘うなど、駆け引きは一級品。この組み合わせはGKを入れ替えるというよりも、森谷を攻撃に専念させるための布陣と言えます。森谷のフィールドプレーを最大限に生かしつつ、木村のクレバーなキーピングでリスクを回避できる、安定感のあるユニットです。
大西満監督さい配みもの
選手個々に一芸があり、ローポインターに永田、古矢、大和田、木村と実力者が揃っているから、さまざまな組み合わせが可能になりました。どのタイミングでどのユニットを使うかは、大西満監督次第。非常に優秀なモチベーターなので、選手が気持ちよくプレーできる布陣を選んでくれるでしょう。選手たちは本気で金メダルを狙っていますし、世界で金メダルが獲れるメンバーが揃いました。9月16日からの世界選手権が本当に楽しみです。
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