TOKYO SAKURA HC、初参加

リーグH参入をめざしているTOKYO SAKURA HCもビギナーズカップに初めて参加しました。以前ザ・テラスホテルラティーダ琉球に在籍していた高本七海は、現在は小学校の先生をしながら、TOKYO SAKURA HCでプレーを続けています。
「車いすは意外とスピードが出るし、すごく楽しいです。みんなでできるのがいいですよね。動いてくれるものだと思ってパスを出しても、そこまで行けてないから、パスがつながらない。そこは課題ですね。でも、さっきの試合で2点決めました。右手で決めたの、見てくれましたか? 登録は左利きだけど、右手も使えます」
チームビルディングを兼ねた車いすハンドボールを、存分に楽しんでいました。
東江雄斗(ジークスター東京)、サプライズ体験

今回の一番のサプライズは、東江雄斗(ジークスター東京)の来場でした。「SNSで告知を見て、どんな感じの競技か、ちょっと気になったので」と、休日にふらりと立ち寄ってくれました。仕込みなしのサプライズに、参加者も驚いていました。東江は試合観戦だけでなく、車いすに乗って諸岡とキャッチボールを体験しました。
「ヒザの悪い人向けの競技なら、僕にピッタリじゃないですか。車いすを動かしながらドリブルするのは難しいですね。頭で分かっていても、体を連動させるとなると勝手が違います」
ヒザのケガに苦しんできた東江だから、ヒザに負担がかからない車いすハンドボールに魅力を感じているようでした。
アランマーレ富山、初出場初優勝

話をアランマーレ富山に戻すと、試合をするたびに上達し、予選ブロックは3戦全勝。HC ICHIHARAとの決勝戦に駒を進めました。決勝戦はセットカウント1対1で、5分間の第3セットでも決着がつかず、シュートアウト(ドリブルしながら打つ、7mスローコンテスト)までもつれました。シュートアウトでは、決めれば優勝の1本を佐藤が外してしまい、サドンデスとなりました。それでもGKの高比良が止めて、最後は酒井が決め切り、アランマーレ富山が見事、初出場初優勝を果たしました。
ビギナーズカップのMVPには、驚きのGK適性を見せた高比良が選ばれています。普段はキレキレの1対1で勝負するコートプレーヤーが、初めての車いすハンドボールでGKを務め、シュートを止めまくりました。
「GKは初めてです。車いすハンドボールはゴールの高さがない(7人制の2mよりも低い、高さ1.65m)から、できるだけ下がって、面を大きく見せようと思ってやりました。はい、啓さん(アランマーレ富山の菊池啓太GKコーチ)の教え通りです。得意の1対1では、上半身だけで行こうとしても、自分の体が動かない感じになって、うまく打てませんでしたね。ハンドボールとは違った難しさもありつつ、でも大会を通して車いすハンドボールを楽しむことができました。7mスローコンテストにも勝ててよかったです」
アランマーレ富山の7mスローコンテストで思い出すのは、2024年12月の日本選手権準決勝です。香川銀行シラソル香川との試合は7mスローコンテストまでもつれて、最後はこの日絶好調だった酒井が止められ、36-37で惜しくも敗れています。今回は酒井が最後に決めて、7mスローコンテスト(シュートアウト)を制しました。競技は違うとはいえ、2年前のリベンジを果たしました。
研究熱心なアランマーレ

アランマーレ富山の大会を通じての成長ぶりは、見る人を驚かせました。車いすハンドボール日本代表候補の古矢千尋(Knockü SC新宿)は、アランマーレの選手の位置取りに感心しきりでした。
「誰か1人が先に行ってしまうと、縦パスになるから、ミスをするリスクも大きくなります。アランマーレの選手はみんな同じスピードで押していくから、横へのパスになって、ミスが少なかったですね」
貪欲なアランマーレの選手たちは、古矢のスクリーンプレーを見て「2対2から2対0を作る動きを教えてください」と質問攻めにしていました。「いろんな人が、いろんな場所で2対2をする」のがアランマーレのハンドボールなので、味方がカットインする道を作り出す古矢の動きをおもしろいと感じたのでしょう。こういった交流は、お互いの刺激になります。
大会を運営していたスタッフも、アランマーレのプレーを見て「日本の車いすハンドボールは、まだまだ強くなるのでしょうね」と言っていました。数年前に車いすバスケットボール経験者が参入して、日本の車いすハンドボールのチェアスキル(車いす操作)が劇的に向上しました。次はアランマーレが示した「7人制のハンドボール観」の導入です。アランマーレの選手はセットOFでワイドな位置を取り、速いパス回しで広いスペースの4対3を崩そうとしていました。ここにチェアスキルがついてくれば、確実にプラス1(1人余った状況)を作れます。洗練されたセットOFが車いすハンドボールに浸透していけば、2026年9月の第4回世界選手権(スペイン開催)でも理にかなった得点が増えて、日本はいい色のメダルが獲れそうです。
エース諸岡「垣根なく普及を」

車いすハンドボール日本代表のエース・諸岡も、佐藤をはじめとするアランマーレ富山の姿に刺激を受けていました。
「アランマーレのみなさんは、やっぱりトップアスリートだなと感じました。負けず嫌いを前面に出しながら、お互いに意見を出し合ったり、アドバイスを吸収したりして、コート上で体現できる人たちだから、リーグHで戦えているのでしょう。僕らも学ぶところがたくさんありました。東江さんが見に来てくれたのもありがたかったし、やっぱりハンドボールファミリーだなと感じました。車いすハンドボールだけに限らず、ハンドボールのファミリーとしてこういう会を開けたのはすごくいい経験になりました。ここからさらに大きくしていきたいですね」
「佐藤さんとお話させてもらって、プロ選手の責務について共鳴できるところがありました。プロ選手が自分の競技をやるのは当たり前。競技の発展、普及、後進の育成を含めてやるのがプロのアスリートだと僕は思うし、佐藤さんも同じ意見だったのがうれしかったです。健常か車いすかといった垣根もなく、男子と女子とかもなく、ハンドボールを広めていこうとしている佐藤さんの価値観に触れて、僕も改めて感銘を受けましたし、一緒に大会をやれてよかったです」
諸岡自身も日本の車いすハンドボール界で初のアスリート契約を結び、これまで以上に自覚を持って、2026年9月の世界選手権へ挑みます。初出場だった2年前は、8カ国中5位でした。今回はメダル獲得が期待されます。今回のノッキューカップに出場していた日本代表候補たちも、2年前の課題を克服し、ひと回り成長した姿を見せていました。
様々な人が集まった第4回ノッキューカップは、これまでにない大盛況でした。すべての垣根を越えてハンドボールファミリーが集まり、車いすハンドボールを楽しみました。車いすハンドボールが2032年のブリスベンパラリンピックに正式に採択されたら、今後さらに輪が広がるでしょう。


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