愛知・名古屋2026アジア競技大会に出場したハンドボール男子日本代表(彗星JAPAN)は2026年9月29日、3位決定戦で韓国代表と対戦。37-32で勝利し、銅メダルを獲得しました。ハンドボール男子日本代表のアジア競技大会でのメダルは、2010年以来16年ぶり。地元開催で有終の美を飾りました。
前半17-12と日本ペース

前日の準決勝・バーレーン戦に31-35で敗れた日本は、最終日の2026年9月29日に3位決定戦で韓国と対戦しました。場所はリーグHの豊田合成ブルーファルコン名古屋の本拠地、エントリオ。慣れ親しんだ会場で、日本の選手たちは序盤から力を発揮します。
レフトバック吉野樹(ブレイヴキングス刈谷)の得点でスムーズに試合に入り、GK中村匠(豊田合成ブルーファルコン名古屋)も当たり、前半8分で8-2とリードを奪います。ライトウイングの中田航太(ジークスター東京)のパスカットからの速攻に、身長200㎝の玉川裕康(ジークスター東京)の速攻など、立ち上がりから日本ペースでした。その後も市原宗弥(豊田合成ブルーファルコン名古屋)の体を張ったDFなどもあり、前半を17-12で折り返しました。
韓国の左腕キム・ジンヨン対策カギ

前半で5点リードはいい流れですが、不安材料もありました。韓国の左腕、26番のキム・ジンヨンの引っ張り(左利きのキム・ジンヨンから見て右下)へのシュートを止められません。2026年1月のアジア選手権でも、このキム・ジンヨンのロングに苦しみ、最後はノータイムフリースローを壁越しに決められ、引き分けに終わっています。後半の入りでGK中村が1本止めたものの、そのあとも決まり続けます。こういう単発のシュートを許していると、試合がややこしくなります。
しかしこの日の日本は、集中力が途切れません。むしろ勝負どころで一体感が増しているように感じられました。後半12分にGK中村がキム・ジンヨンのシュートを阻止。リバウンドに蔦谷大雅(ジークスター東京)が飛び込みマイボールにすると、玉川が速攻で走って25-20としました。まさに「共同作業」でピンチをチャンスに変えた瞬間でした。
LB藤坂尚輝、3連続得点

攻撃の起爆剤になったのが、レフトバック藤坂尚輝(大同フェニックス東海)でした。後半12分からの3連続得点で、チームを勢いづけます。強烈なステップシュートに、ピヴォットの橋本明雄(ジークスター東京)のスライドに合わせて引っ張り下(右利きの藤坂から見て左下)に打ち込みます。タイムアウト明けには4バックから得点を挙げて、短時間でインパクトを残しました。
「ピヴォットがスペースを広げたり、裏を走って相手を前に出られなくさせたりという動きを、チームとしてやってきたので、韓国戦は僕の前にスペースが生まれたと思います。広いスペースを攻めたり、1対1で相手をスピードで振り切るのは、僕に求められていることなので」
セットOFのリズムを作る田中大介(豊田合成ブルーファルコン名古屋)が好調だったこともあり、司令塔での出番がほとんどなかった藤坂ですが、強烈な個の強さを最終日に発揮してくれました。「僕にDFが寄れば、周りが点を取りやすくなるし、その逆もある。シンプルに考えたい」と話す藤坂が、センターでもっと信頼されるようになれば、パス回しの速い田中大介との使い分けがよりおもしろくなりそうです。
ベテラン渡部仁、チーム鼓舞

後半22分32-28とまだ油断できない状況で、韓国を突き放せたのは、ベテラン左腕・渡部仁(ブレイヴキングス刈谷)の働きがあったからです。力強くインに行って、シンプルなミドルシュートを流し(左利きの渡部から見て左側)に決めました。さらに直後のDFではこぼれ球を拾って、中田航太(ジークスター東京)の速攻につなげました。
「トニー(・ジェローナ)監督が『セットOFは時間をかけて、我慢しながら攻める』と言っているように、単発のシュートで終わらず、しっかりと間を割って、体を張って、自分のストロングポイントであるフィジカルを生かした突破ができたと思います。そのあとの守りでは、玉川が叩いたボールを拾って、速攻につなげられました。しっかり守って、短い時間(速攻)で点を取るのは、日本の武器のひとつ。ああいう苦しい局面で速攻を出せたのは、走った(中田)航太もそうですけど、集中してDFしてくれた選手たちが頼もしかったですね」
チーム最年長・36歳の渡部は、今大会は出場時間が控えめでしたが、試合に出れば確実に仕事をしていました。準決勝のバーレーン戦でも、真ん中の2対2を崩されたあとに、ノーマークになったピヴォットを体で止めて、チームを鼓舞しています。
「アジア大会のメダルは16年ぶりですか。僕が代表に入ってからは、なかなかメダルを獲れていなかったですが、選手生活の終盤にかけて、オリンピックに出られたり、アジア大会でメダルを獲れたりと、充実したハンドボール人生を送れていると思います」
日本を長く支えてきた「ジン・ワタナビー」は、カタールのラファエル・カポーテ、バーレーンのフセイン・アルサヤドとともに、アジアの顔です。
GK中村匠、後半23分ビッグプレー

そして後半23分、相手の息の根を止めるビッグプレーが出ました。GK中村が、韓国のライトバック、キム・ジンヨンの引っ張りのシュートを両手でセーブ。リバウンドを玉川が拾って、マイボールにしました。ここで日本がタイムアウトを取り、残り6分で34-28。勝利を決定づけるナイスセーブのポイントを、中村はこのように話しています。
「韓国の26番、キム・ジンヨンはジャンプ力があるから、僕が待っているDFの枝を超えてくる。それにつられて右へ1歩出てしまうと、引っ張りのシュート(GKの中村から見て左側)に届かない。だから1歩出るのではなく、半歩だけついていくように修正したら、引っ張りのシュートに合ってよかったです」
国際大会で最後に勝負を決めるのはGK。国内で圧倒的な支配力を誇る中村が、アジアの大一番でも仕事をしてくれました。この支配力こそが中村匠です。
杉岡尚樹「全員が全力でフォロー」

最後まで日本ペースで試合が進み、3位決定戦は37-32で勝利しました。地元開催のアジア競技大会で、16年ぶりのメダル獲得に、選手もファンも喜びを爆発させていました。予選ラウンドでカタールに大敗したものの、準決勝、3位決定戦の日本は、集中力と一体感がありました。まとまりが出てきた理由を、大会初日に杉岡尚樹(ブレイヴキングス刈谷)が話していました。
「どんな局面でも、僕たちは100%で行けるよう準備してきました。でも試合だから、シュートが入らなかったり、DFで抜かれてしまうことは絶対ある。そこは結果がどうであれ、全員でカバーする。味方がカバーしてくれるから、僕もまた100%で打ちに行ける。そういったチームのつながりは、トニーと選手たちで作ってきた部分だし、よくなっていると思います」
全力で相手に立ち向かい、全力で仲間をフォローし、また次のやるべきことに集中する。その積み重ねが、大会でも随所に見られました。杉岡がコンディション不良で出られなかった準決勝以降は、後藤隼(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)がレフトウイングのポジションをほぼ1人で守り切りました。3位決定戦で後藤がシュートを外した時は、部井久アダム勇樹(ジークスター東京)が全力で戻り、相手ボールを奪い返しました。トニー・ジェローナ監督が就任してからの2年間で、チームは成熟しています。
ロス五輪アジア予選は「ひと枠」

とはいえ、2027年のロス五輪アジア予選へ向けては、バーレーン、カタールに勝つ必要があります。代表歴の長い玉川は銅メダルの結果に浮かれることなく、その先を見つめていました。
「五輪予選はアジアから1チームしか出られないので、本来であれば昨日バーレーンに負けたところで終わってしまう。どことやってもシーソーゲームになると思うので、次は昨日のような試合を勝ち切れるよう、チームとしてレベルアップしていきます」
ジェローナ監督「準々決勝前半のプレーできれば」
ジェローナ監督は、準々決勝のクウェート戦の前半(23-12)を例に出し「この30分間は私が就任してからのベストゲーム。こういうハンドボールができれば、アジアのどの国にも勝てる」と言っていました。いい時間をより長くして、悪い流れをいかに早く断ち切るか。GK中村は「カタールやバーレーンとの差は確実に縮まっています。最後の細かいところは、コミュニケーションを密に取っていければ、いい結果につながると思います」と、ポジティブに捉えていました。今大会で見せた一体感をベースに、彗星JAPANのさらなる成長に期待しましょう。

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