日本ハンドボール協会は2024年4月1日、パリ五輪世界最終予選(4月11~14日)に挑む女子日本代表(おりひめジャパン)のメンバー20名を発表しました。日本はスウェーデン、カメルーン、開催地のハンガリーと同じトーナメント1に所属。4チーム総当たり戦で、上位2チームにパリ五輪の出場権が与えられます。今回のメンバー20名を紹介します。(選手プレー写真は久保写す)
1:亀谷 さくら(ブザンソン/フランス)GK
日本の女子史上最高のGK。ヨーロッパのシュートを長年受けてきた経験があります。格上のスウェーデン戦、圧倒的アウェーになるであろうハンガリー戦には、さくらの爆発力が欠かせません。女王・デンマークに勝った世界選手権でも、阻止率38%の大活躍でした。
2:永田 美香(北國銀行)PV
コンディションを取り戻し、心身共に状態は上向き。世界と戦う上で、やはり永田のサイズは欠かせません。3枚目のDF、ピヴォットでの位置取りなど、攻守両面で世界と渡り合える大型選手。何度も言いますが、永田は世界レベルでもゲームを支配できる実力の持ち主です。
3:佐原 奈生子(北國銀行)PV
対アジアで細かい横の動きを守るよりも、対ヨーロッパの重さ、強さに対抗した方が、佐原のよさが生きます。身長180㎝で走れるのも大きなアドバンテージ。相手の攻撃にしっかりと足でついけたら、無駄な退場が減り、速攻に飛び出す展開も増えるはずです。
4:初見 実椰子(三重バイオレットアイリス)PV
仲間の意図を察知して、あうんの呼吸で合わせる「鏡のような選手」です。一流のバックプレーヤーと組むと一流のピヴォットになり、スライドしたりスクリーンをかけたりと、イメージ通りの動きをしてくれます。左右両方の2枚目DFでもアクセントになるでしょう。(下に記事が続きます)
5:金城 ありさ(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)RB
左肩のコンディションがよくなり、現在日本リーグの得点王。代表にも戻ってきました。金城お得意の意表を突くステップシュートであと2点追加できれば、接戦を物にすることができるでしょう。多彩な個人技があり、なおかつデータがないのが強みです。
6:北原 佑美(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)LB
フットワークがよくて、クレバーな3枚目。DFからチームを立て直したい時間帯でレフトバックに入って、トータルバランスを整えてくれます。真ん中からのロングシュートが、世界レベルでも1本入ってくれたら、言うことなしです。
7:服部 沙紀(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)RW
高精度な服部のシュートは、日本の強みのひとつ。世界選手権では、味方が立て続けに7mスローを外したあとに、何事もなかったかのように7mスローを決めていました。コンパクトなモーションから精密機械のような再現性で、チームに落ち着きをもたらしてくれます。
9:笠井 千香子(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)PV
攻守にハンドボールをよくわかっているピヴォット。丁寧な駆け引きで、見る人をうならせます。ライン際でおそらく相当のプレッシャーを受けるでしょうが、上手にいなしてくれるでしょう。サイズの永田、巧さの笠井の両方が並ぶ7人攻撃もカギになりそうです。
12:馬場 敦子(北國銀行)GK
パス出しの速さ、コート全体を俯瞰でとらえる能力は国内随一。圧倒的なスローイングで、速攻での数的優位を作り出します。世界のロングシュートにもそろそろ慣れてきたでしょう。シュートを止めさえすれば、昨秋のアジア大会のような堅守速攻の形が作れます。
13:中山 佳穂(北國銀行)RB
ありえないくらいの腕のしなりは、世界選手権でも注目を集めました。肩甲骨や肩関節の柔らかさは世界でも指折りのサウスポーです。左肩のコンディションを整え、気持ちよくプレーしてくれたら、結果はあとからついてくるはず。多少止められても、勝負の節目で決め切ってくれることを願います。
18:松本 ひかる(北國銀行)LW
ゼネラリストでありスペシャリスト。所属ではGK以外の6ポジションを担うオールラウンダーですが、代表では本職のレフトウイングに専念。高確率のサイドシュートで貢献します。世界選手権のデンマーク戦の終了間際に見せたスカイプレーのように、数字には表れない勝負強さが魅力です。
20:秋山 なつみ(キスヴァルダ/ハンガリー)RW
以前は場慣れに時間がかかるタイプでしたが、今回の世界最終予選に関しては問題なし。ハンガリーでプレーして2年。「ハンガリーはホーム」と言うように、対戦相手や会場の雰囲気を熟知しているのが強みです。ハンドボール専門誌「スポーツイベントハンドボール」4月号(P85)に掲載された、秋山のコメントによるハンガリー情報は必見。
22:犀藤 菜穂(北國銀行)GK
高校からハンドボールを始めた遅咲きのGK。ハイコーナー(ゴールの両上隅)に手が届くので、国際試合に強いイメージがあります。シュートを止めたあとに見せる、目が三日月になったような笑顔も含めて、チームの雰囲気を作ってくれる選手です。
23:相澤 菜月(北國銀行)CB
日本の絶対的司令塔。打ててさばけて切れ込めて、アジアレベルではOFの判断にほぼ間違いがありません。残された課題は、世界レベルでディスタンスシュートを決め切ること。世界レベルでゲームを支配できることを証明して、パリ五輪後は海外進出といきましょう。
24:岡田 彩愛(香川銀行)CB
得点力のあるセンターで、自らの得点で攻撃のリズムを作ります。ロングシュートも入りますが、カットインだったり、ライン際に切ってピヴォットになったり、地道なプレーでベンチからの得点源になってくれたら。岡田で2点上乗せできれば、試合が楽になります。
32:佐々木 春乃(ドルトムント/ドイツ)LB
エースポジションで打ち続け、守っては3枚目で奮闘。攻守の背骨である佐々木が崩れると、チームも終わってしまうから、楠本監督は佐々木を叱咤激励するのでしょう。誰よりもしんどい役回りですが、この3試合だけはフル回転で。日本のレフトバックは佐々木しかいません。
47:吉野 珊珠(大阪体育大)RW
スポーツ庁やJOCなどが推進するタレント発掘プログラム「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト」により、ソフトボールからハンドボールに転向した左腕。ライトウイングから回り込んでのミドルシュートは、服部や秋山にない強みです。将来への投資だけでなく、ワンポイントで活躍してくれたら。
51:吉留 有紀(北國銀行)LW
パスカットに持ち込む間合いが絶妙です。左の1枚目に入る相澤の負担を肩代わりして、2枚目で牽制から速攻に走ります。バチンと守れる強さが出てくれば、世界レベルでも出場時間が増えるでしょう。サイドシュートも、もっと勇気を持って跳び込んでくれたら。
56:菊池 杏奈(プレステージ・インターナショナル アランマーレ)LB
金城と並ぶインパクトプレーヤー枠。鍛え抜かれた足で、ゲームに入った瞬間から強烈な1対1を繰り出します。単位時間あたりの得点能力では、おそらく今の日本の女子では一番かと。周りに作ってもらった「広い1対1」からのショータイムが楽しみです。
89:石川 空(大阪体育大)RB
強心臓のそらみょん。多少のミスはあるものの、迷いなく腕を振って、ベンチからの得点源になってくれます。中山の負担を減らすだけでなく、1本決めるとチームの雰囲気がとてもよくなります。7mスローも含めて、節目の得点に期待です。
展望:世界選手権での経験、最後に生かせるか
初戦のスウェーデン(現地時間4月11日18:00)は世界選手権で4位。日本は17位ですから、かなりの格上です。とはいえ日本は世界選手権3位のデンマークに勝ちましたから、可能性がない訳ではありません。ロングシューターと大きいピヴォットの2対2を守れたら、勝機は見えてきます。
2戦目のカメルーン(同4月12日20:30)は欧州勢と比べるとやや落ちますが、身体能力が高い国です。ハンドボールぽくないリズムでプレーするので、相手に慣れるまで時間がかかるかもしれません。油断は禁物です。
最終戦のハンガリー(同4月14日19:15)は世界選手権10位。スウェーデンよりもプレーが粗く、世界のトップ級に比べると付け入る隙はありそうです。とはいえホームでの最終戦で、パリ行きが決まる試合となると、かなり手ごわいです。圧倒的アウェーでデンマークから金星を挙げた世界選手権での経験が、この最終予選のラストで生かせるか。大一番になりそうです。
楠本繁生監督が練り上げた「歴代最高の組織力」で、目指すは1976年のモントリオール以来となる自力での五輪出場。おりひめジャパンは最後の勝負に臨みます。試合時間は日本の深夜になりますが、頑張って応援しましょう。
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