サッカー日本代表キャプテン遠藤航(32)のリヴァプールFCは2025年4月27日、本拠地アンフィールドでトッテナム・ホットスパーに5ー1で勝利し勝点82として、4試合を残して5シーズンぶりのプレミアリーグ優勝を決めた。これでリヴァプールは、マンチェスター・ユナイテッドに並ぶ歴代最多20度目の優勝となった。
遠藤航の置かれる状況
遠藤は優勝を決めた試合で76分から定位置の守備的MFではなく、珍しく右フルバック(サイドバック)として出場し、ゲームを締めるクローザーの役割をきっちりと果たした。
2024ー2025シーズンは試合終盤の途中出場が多く、優勝を決めた34試合終了時点でプレミアリーグ出場は17試合157分。前2023ー2024シーズンは多くの試合でスタメンとして出場し、プレミアリーグ29試合1720分だった。
数字だけ見ると調子を落としているように見えるが、決してそうではない。(下に記事が続きます)
監督交代、クロップとスロットの起用法の違い
約9年間リヴァプールの監督を務めて昨季、惜しまれながら勇退したドイツ人のユルゲン・クロップは、自らが確立した「ゲーゲンプレス(カウンタープレス)」を戦術のベースにした。チーム全体で前線から激しく相手にプレッシャーをかけて、ボールを奪う守備が大きな特徴だ。ハードワークと粘り強い守備が特徴の遠藤はクロップの基本戦術にフィットし、先発メンバーとして重用され中盤での地位を確立していた。
一方で、新たに就任したアルネ・スロット監督が信条とするのは、選手の位置取りに重きを置く「ポジショナルプレー」だ。守備的MFのポジションでは、190cmと大型で身体能力が高くテクニックと攻撃力にも優れる若手のオランダ代表MFライアン・フラーフェンベルフが出場機会を増やした。年齢的に伸び盛りだが、スロット監督の攻撃を構築する基本戦術に合っていると判断されたのだろう。
体力を消耗した試合終盤に決定的なプレーが飛び出すことが多く、現代サッカーにおいて先発の11人だけで戦うことはできない。遠藤は、泥臭く動き回り相手の攻撃の芽を積むのを得意とするため、終盤に試合が緩まないように封じて無難に終了に持っていく「クローザー」に適任だと評価された。
同じポジションでも、潰し屋の遠藤とプレーメーカーのフラーフェンベルフではタイプが正反対だ。スロット監督は、立ち上がりから試合をつくる段階ではフラーフェンベルフの構成力を活かし、試合終盤では遠藤の守備力を活かすゲームプランを考えているのだろう。
1分でも長く試合に出場したいというのが選手の心情だが、出場時間が短いからといって評価が低いとは言い切れない。チームにおける役割が変わった、と見るのが妥当だろう。
厳しい状況下でも32歳の遠藤は腐らずに取り組み、その人間性をスロット監督は高く評価している。表から見えないところで精神的な支えとなっており、丁度レアル・マドリードのクロアチア代表MFルカ・モドリッチのような存在だ。豊富な経験と精神力、ゲームをコントロールする高い能力でチームに安定をもたらす。(下に記事が続きます)
遠藤航の今後
優勝決定後の5月4日チェルシー戦で2024-2025シーズンのリーグ戦初出場を果たし69分間ピッチに立ち、守備的MFとしてプレーした遠藤。
出場時間が減っているため、コンディションが落ちる懸念はあるが、短時間ながら頻繁に出場はしているため、試合勘がなくなる心配はないだろう。遠藤は自身の役割をきっちりと理解しており調整に余念がない。難しい状況でしっかりと自分を律する精神力は見上げたものだ。仮に身体的なコンディションが落ちるようなことがあったとしても、メンタル的なタフさは逆に高まっている。さらにはプレミア優勝で経験値も上昇している。
リヴァプールよりビッグクラブからのオファーは、そうそう来るものではない。出場機会を求めて下位クラブに移籍するのか、それとも王者リヴァプールに残るのか。
遠藤は日本代表のキャプテンでもあるが、現在置かれている状況が代表チームにプラスになるか、それともマイナスになるかは一概には言えない。今後については、遠藤本人とクラブの考え方次第だ。少なくとも、悲観する状況ではないだろう。
チームメイトが遠藤を絶賛
試合後の現地インタビューからも、遠藤とリヴァプールの状況を垣間見ることができる。
スコットランド代表アンディー・ロバートソン「信じられない。全員にとって特別な日だ。裏方スタッフ全員が、本当に頑張ってくれている。選手に焦点を当てると週末(の試合で)報われるか分からずもっと出場したいと葛藤しながらもハードなトレーニングを続けている選手がいる。途中出場したワタル(遠藤)やハーヴェイ・エリオットは、常に準備万端だが簡単なことではない。彼ら(控え選手)が先発メンバーを突き上げていなければ、こうはなっていなかった。
良いチームと良い姿勢がなければ、何も勝ち取ることはできない。これは真のチームパフォーマンス。勝利は1人か2人ではなく、23人、24人の力で成し遂げられるもの。今シーズン、全員が一丸となって成し得たものだ」(下に記事が続きます)
戦術変更で、さらなる力が開放されたサラー
エジプト代表FWモハメド・サラー(32歳)は、2024-2025シーズン優勝までのプレミアリーグ34試合で28得点・18アシスト。前季は、リーグ32試合で18得点・10アシストだった。
「(クロップ前監督と)戦術がかなり異なり、守備の負担を減らせば攻撃で貢献できる。できるだけ休んで、数字を出すんだ、とスロット監督に言われた」と証言。
オランダ代表MFコーディ・ガクポも「ポジショニングと戦い方が少し変わった」と述べている。
オランダ人監督として初のプレミアリーグ優勝
前回2019ー2020シーズンのリヴァプール優勝決定はアウェイ(クリスタル・パレス戦)だったが、今回ホームで勝利して優勝を手にしたことで、スタジアムは最高の雰囲気に包まれた。
就任1季目でリーグ優勝に導いたアルネ・スロット監督「前回のリーグ優勝は本当に素晴らしい偉業だが(アウェイであまり)ファンがいなかった。ここ(ホーム)に彼ら(ファン)がいることがどれほど重要か、試合前から感じ取ることができた。今日は選手そしてファンも素晴らしい仕事をしてくれた。(先制点を許し)理想的ではなかったが、必ず逆転勝利できると選手を信頼していた。正直に言うと、かなり長い間(優勝を)信じていた。ほぼシーズンを通してリーグ首位を維持していた」
リヴァプールのキャプテンでオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイク「素晴らしい。試合前の1週間、いろいろな感情が渦巻いていた。我々は、やり遂げたんだ。本当にイングランド王者にふさわしい、世界で一番美しいクラブ。5年でプレミアリーグ2度制覇は、優れた功績だ」
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