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【サッカー】元アーセナルFW、試合中の事故で死亡 | 壁に激突、教訓生かせず

死亡したビリー・ヴィガー。写真は2022年7月8日、アーセナルとプロ契約締結時。©Arsenal Academy=本人のXより
死亡したビリー・ヴィガー。写真は2022年7月8日、アーセナルとプロ契約締結時。©Arsenal Academy=本人のXより
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イングランドでのサッカーの試合で死亡事故が発生した。アーセナルFCのアカデミー出身でチチェスター・シティFC所属のFWビリー・ヴィガー(21)が2025年9月20日のアウェイ、ウィンゲート・アンド・フィンチリーFC戦の前半にピッチサイドの壁に頭部を激突させた。重度の脳損傷を負い空路にて緊急搬送されたが危険な状態が続き25日に手術を行ったものの間もなく亡くなった。

どうしてこのような死亡事故が発生してしまったのか徹底究明する。

目次

救えたはずの命

ビリー・ヴィガーの事故を受けて、現地ではスタジアムにおける安全性の改善を求める署名運動が始まっている。

ロンドンのフィンチリーにあるモーリス・レバック・スタジアム(1,500人収容)は事故当時ピッチから約3メートルの近さで周囲をブロック塀が囲っていた。同スタジアムで予定されていた直近の試合は延期となり、ゴム製の安全な壁が設置されることが決まった。

3年前にも類似事故

プロサッカー選手協会(PFA)は、この事故の正式な調査を求めている。実は以前にも同様の事故が発生していた。

2022年11月8日にホームにダルウィッチ・ハムレットFCを迎えたバース・シティFC。試合立ち上がりの時間帯に受けたパスをダイレクトでクロスしたバース・シティのアレックス・フレッチャーは、相手に軽く押されコンクリートブロックで補強された広告看板に激突した。その結果、頭蓋骨骨折を負い5日間も昏睡状態にあったのだ。

この事故を受けて、英国政府のスチュアート・アンドリューはプレミアリーグ、イングランド・フットボール・リーグ、ナショナルリーグに対して、ピッチ周辺における選手の安全確保に、より積極的に取り組むよう求める書簡を送った。もしその時に対応できていれば、今回の死亡事故は防げたのではないだろうか。(下に記事が続きます)

安全基準の再確認急務

イングランド・サッカー協会(The FA)は、全国リーグシステムにおける参加者と観客の健康と安全は各クラブと地方自治体の責任としつつも、リーグ、クラブ、スポーツ界全体の関係者と協力し、全国リーグシステムのピッチ周囲の壁と境界線の安全性に焦点を当てた調査を即時実施する方針を発表した。

スポーツグラウンド安全局(SGSA)は、国際試合、イングランド・プレミアリーグ、イングランド・フットボールリーグのスタジアムにおける観客の安全に関する地方自治体の監督状況を監視する機関だ。両クラブが所属するイスミアンリーグ・プレミア(7部相当)はセミプロリーグで管轄外としながらも、状況を注視していくという。

日本では、日本の法律に則ってスタジアムの設計や運営がなされているが、サッカーの本場であるヨーロッパの競技シーンを参考にしていることも多い。これを機にしっかりと当事者意識をもって、改めて確認作業をする必要があるだろう。

アマチュア競技の安全性の盲点

サッカーはコンタクトスポーツであり、数メートル弾き飛ばされることは決して珍しいことではない。スタジアムがこのような設計に至ったのは想像力の欠如と言わざるを得ない。

英国では、塀ではないにしてもサポーターと選手を分離する金属製の柱やバーがセミプロクラブやアマチュアクラブのピッチ至近距離に設置されている。これは必ずしも安全とは言えないのではないだろうか。

草の根クラブは潤沢な予算があるわけではなく対策には限界があるが、このような痛ましい事故が二度と起こらないようにあらゆる努力をする必要があるだろう。(下に記事が続きます)

プロ競技の収益性・エンタメ性・安全性のバランス

プロの試合が行われるスタジアムでは、セミプロクラブやアマチュアクラブほど至近距離に塀が迫っているのを見たことはないが、ピッチ近くに設置された広告ボードに選手が激突することがある。さすがにコンクリートよりは柔らかい素材でできているが、激突する選手は、たまったものではない。ピッチ近くに設置できて、なおかつ衝突のリスクがない地面に敷くタイプの広告もある。

また、イングランドには、ピッチより観客席が低い位置にあり、チャージされた選手がサポーターの上に落ちてくるスタジアムもある。まるで大相撲のようで臨場感があるが、安全とは言い切れない。しかし、南米のように金網があると視界が遮られる。

プロリーグであっても、まだまだ改善の余地がある。広告はピッチに近いほうが露出効果が高くなり、観客席はピッチに近いほうが迫力があるという意見も理解できる。収益性、エンターテインメント性、安全性のバランスをどのようにとるかは難しいところで、さらなる議論が必要だろう。

プロ・アマにかかわらず、競技を行っているのは生身の人間であり、命の重さに高下はない。子供から大人まで誰もが等しく安全にスポーツを楽しめる環境を整備することは、社会全体の責務ではないだろうか。(下に記事が続きます)

サッカーの試合における死亡事故

選手の事故

フェヘール・ミクローシュ:ベンフィカのハンガリー代表FWは2004年1月25日、アウェイのヴィトーリアSC戦に途中出場。決勝点をアシストも遅延行為で警告を受けた直後にピッチに倒れ、心肺蘇生処置が施されたが、搬送された病院で死亡が確認された。24歳だった。

マルク=ヴィヴィアン・フォエ:2003年6月26日に行われたFIFAコンフェデレーションズカップ準決勝コロンビア戦に臨んだカメルーン代表。全世界に生中継された注目の一戦に、体調不良ながら強行出場したフォエはベンチから交代するか聞かれたが、プレーを続行し72分に突然ピッチに倒れ込み、28歳で帰らぬ人となった。死因は肥大型心筋症だった。

群衆の死亡事故:

カンジュルハン・スタジアムの悲劇:2022年10月1日、インドネシアのアレマFCのホームにライバルチームであるプルセバヤ・スラバヤを迎えた試合後、敗れたホームサポーターがピッチに侵入したのを皮切りに両軍サポーターの乱闘が発生。止めに入った警官2人が死亡したため催涙剤を発射すると出口に人が殺到し死者135人、負傷者583人の大惨事に。その多くが窒息死や圧死だった。

ヒルズボロの悲劇:1989年4月15日、イングランド・シェフィールドにあるヒルズボロで行われたFAカップ準決勝のリヴァプールFC対ノッティンガム・フォレスト戦。リヴァプール側のゴール裏の立見席に収容能力を上回る大勢のサポーターが押し寄せ将棋倒しとなり97人が死亡し760人以上が重軽傷を負った。調査により、誘導など運営に不備があったと結論付けられた。この事故後、上位リーグで立ち見席が禁止されるようになった。

ヘイゼルの悲劇:1985年5月29日、ベルギー・ブリュッセルにあるヘイゼル・スタジアムで欧州チャンピオンズカップ決勝に臨んだリヴァプールFC(イングランド)とユヴェントスFC(イタリア)。その試合前にリヴァプールのサポーターが襲撃し将棋倒しで39人が死亡したほか、数百人が負傷。リヴァプールは欧州サッカー連盟の大会に10年間出場禁止の処分を受けた。

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