【サッカー】2026W杯はスペインV | 1-0、アルゼンチンと至高の攻防

スポーツメディアPen&Sports
=2026年7月19日、米ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで(クレジット:鈴木颯馬/フォート・キシモト)
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サッカー2026北中米ワールドカップは2026年7月19日(日本時間7月20日)、米国ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで決勝戦を行い、延長戦の末にスペインがアルゼンチンを1-0で破り、2010年の南ア大会以来となる2度目の優勝を果たした。アルゼンチンは、2022年カタール大会に続く2連覇はならなかった。

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スペイン黄金時代の再来

カナダで発生した大規模な山火事により深刻な大気汚染が懸念されたが、直前に雨が振り収束し予定通り決行された。試合は、アンドレス・イニエスタ、イケル・カシージャス、カルレス・プジョル、セルヒオ・ラモスなどスペインがワールドカップ初優勝を飾った2010年南ア大会メンバーがスタジアムで見守るなかで始まると、ラ・ロハ(スペイン代表)がボールを支配。

アルゼンチンのエンソ・フェルナンデス(チェルシーFC)が90+3分に2枚目のイエローカードで退場となるもスコアレスで決着がつかず、延長戦に突入。

そして106分に、右サイドでラミン・ヤマル(FCバルセロナ)が落としたボールをペドロ・ポロ(トッテナム・ホットスパーFC)が右足でダイレクト・クロス。そのボールを左サイドでニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)が頭で落として、走り込んだフェラン・トーレス(FCバルセロナ)が至近距離から左足で強烈に叩き込む。延長戦後半についにスペインが先制した(1-0)。

その虎の子の1ゴールが決勝弾となりスペインが勝利を収めた。

決勝弾の伏線に凝縮された駆け引き

決勝弾の伏線はあったが、アルゼンチンは防ぎ切ることができなかった。

96分にスペインは右サイドのペドロ・ポロの右足クロスに走り込んだフェラン・トーレスとミケル・メリーノ(アーセナルFC)がわずかに触れるも収まらずに、GKが弾いたこぼれ球をニコ・ウィリアムズが右足で詰めてゴールネットを揺らす。スペインがついに得点かと思いきや、ファウルの判定。

接触した際にニコラス・オタメンディ(SLベンフィカ)が派手にピッチに倒れ込んだ。VARが機能していれば、ゴールが認められる可能性があっただけではなく、シミュレーションで警告を受けかねないシーンだった。このような大きなリスクを冒すほどニコラス・オタメンディ、そしてアルゼンチンは追い詰められていたのだろう。その博打(ばくち)は当たり、ゴールは取り消され体力の消耗を抑えて相手ボールを奪回することができた。

しかし、幸運は長くは続かなかった。10人になってゴール前に枚数を多く割いて守ることを優先させた結果、中盤のサイドの守備が甘くなっていた。人数が少ないため対応に限界があった。そのスペースを巧みに突いてスペインは精度の高いチャンスを再三つくり決勝弾につなげたのである。

完ぺきだった無敵艦隊

スペインは今大会でわずか1失点(14得点)。引いて守るチームが失点して敗退していったのに対して、スペインは引かずして堅牢な守備網を整備したのが革新的だった。

ゴールデンボール賞(最優秀選手賞)を獲得したスペインの主将ロドリ(30)は2024年に右膝に大怪我を負いキャリア続行も危ぶまれ、復帰した2025年後半にはハムストリングを引きずり、2025-2026シーズンは長引く腰痛によりベンチ外で終えていた。冨安健洋よりも深刻な状態と思われていたが、大会を通じてメキメキと体調を回復させてスペインの攻守の軸を担った。

ゴールデングローブ賞(最優秀GK賞)のウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)はゴールを守る役割の他に、スイーパーやビルドアップといったフィールドプレー力が高く、現代サッカーのGKのベンチマークとなるだろう。ヤングプレーヤー賞(最優秀若手選手賞)には若干19歳のパウ・クバルシ(FCバルセロナ)が選出され次々に若手が育つ土壌がある。

同じくFCバルセロナの19歳、ラミン・ヤマルなど個人で突破していく選手は限定的なスペイン。組織で崩していくことをベースとしているが、その高い組織を構成するための個人スキルと個人戦術は最高水準にある。これも個人能力である。代表チームが集まって連携を高めてきた部分ももちろんあるが、パスをつないでいく元々の個々の能力の高さがある。

北中米ワールドカップで「個を高める」という課題が再認識された日本だが、必ずしも1対1の戦いに勝ちデュエルに強くなることだけが個ではなく、スペインのような連携能力の高さも個人能力の賜物だと強調しておきたい。

バルサ流のボール支配に戦術メッシで対抗

ボールポゼッション率はアルゼンチンの35%に対してスペインは65%。シュート本数はアルゼンチンの2本(枠内0本)に対してスペインは20本(枠内12本)だった。

いずれも大差がついたが、試合を決したのは、わずかに1ゴールだった。シュート本数の割に得点が少なかったのは偶然ではない。退場者を出すまで、アルゼンチンは決定機をスペインにほとんどつくらせなかった。ボクシングでいえば、ガードの上から打たせている状態だ。

39歳のリオネル・メッシを擁するアルゼンチンは、この生きるレジェンドが瞬間的な攻撃力を最大限に発揮できるように、必要以上に走らないという約束事があった。そうなると前線からのプレッシングは機能しづらく、世界随一のボールポゼッション力を誇るスペインに対しては、自ずと自陣に引いて守備ブロックを形成することになった。

FCバルセロナの8選手を擁したスペインのパスワークが見事なら、それでも致命打を回避し続けるアルゼンチンの守備も見事だった。一見してスペインの一方的な試合に映るが、これはアルゼンチンの戦略であり、危なげない守備だった。アルゼンチンはリオネル・メッシをスーパーサブとしてベンチに置いて別のFWを先発起用すれば、ボール支配率をもっと高めることはできた。しかし、リオネル・スカローニ監督はスーパースターの主将のカリスマと一撃必殺の得点力に賭けたのである。実際にリオネル・メッシは8得点で史上初の2大会連続得点王キリアン・ムバッペ(10得点)に次ぐ2位のゴールを決め、戦術メッシは機能していた。

しかし、アルゼンチンは激しさが裏目に出て退場者が出たことが誤算だった。これで、アルゼンチンはリオネル・メッシだけを前線に残して守備固めをしてPK戦に持ち込むくらいしか勝算がなくなってしまった。

神の子が起こしかけた最後の奇跡

ついに被弾したアルゼンチンだが、そこからの火事場の馬鹿力はものすごかった。

それまでシュート0本だったアルゼンチンは、1人少ない状態で1点ビハインドとなり攻めるしかなくなった。すると試合終盤の117分にリオネル・メッシがペナルティエリア外から左足シュートを放つもミケル・メリーノの頭部に当たる。これが、アルゼンチンのこの試合で初めてのシュートだった。

120分にはアルゼンチンが中盤で獲得したFKをリオネル・メッシが素早くリスタートしてスペインのディフェンス・ラインの裏に入れてジュリアーノ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)の際どいクロスでCKを獲得。

120+1分には、リオネル・メッシが立て続けに入れた2本目のCKをフリックから、ゴール至近でジュリアーノ・シメオネが右足ボレーも枠の上に外れる。アルゼンチンのこの試合2本目のシュートだったが、乾坤一擲のこの日最大のチャンスを逸すると万事休すと察したのかリオネル・メッシが顔を手で覆った。

敗れはしたが、無敵艦隊を相手にアルゼンチンの魂のこもった戦いと勝利への執念は見事だった。試合終了のホイッスルが鳴ると、汗に滲む涙を浮かばせて呆然と立ち尽くす10番の後ろ姿があった。現スペイン代表で唯一リオネル・メッシのFCバルセロナでの元チームメイトであるペドリは長い間、神の子を抱擁した。これがリオネル・メッシ最後のワールドカップになるのだろうか。

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