世界最高峰と称されるイタリア一部リーグ・スーペルレガで、日本代表キャプテンで強豪ペルージャでプレーする石川祐希(29)、日本代表で中堅クラブ・ミラノのスタメンに定着した大塚達宣(25)が注目される中、虎視眈々と目標に向かって進む「第三の男」が垂水優芽(25)だ。洛南高校、筑波大学で全国制覇を果たし、大学卒業後は国内強豪のパナソニック・パンサーズ(現大阪ブルテオン)へ。しかしたった1シーズンでイタリア挑戦へと舵を切り、チステルナの地へたどりついた。その決断へ至った気持ちは何だったのか。なぜイタリアだったのだろうか。2シーズン目の現在地と目標についても聞いた。
2023年創部、前身チームは石川祐希も在籍

イタリア首都であり「永遠の都」であるローマから鈍行電車で約30分、テルミニ駅の喧噪が嘘のようにのどかな郊外の小都市のチステルナ。駅に降り立つと、サッカースタジアムとアリーナがすぐに目に入る。チステルナ・バレーは2023年の創部だが、スーペルレガのライセンスを引き継ぐ前にはトップ・バレー・ラティーナの長い歴史がある町だ。
石川が同じアリーナのこのクラブでプレーしたのはもう8シーズンも前のことだが、「町でも声をかけてもらえるし、コートに立つと歓声が沸くので、愛されてるなって実感できています」と2シーズン目を迎える垂水優芽(25)は語る。試合当日の午前の練習でも、市民が見学に来ていたり、町に出ればチームジャージで買い物をしている選手に出くわす。チステルナの町は人口約3万7千人と小さいぶん、バレーボールがごくごく身近に感じられる存在だ。(下に記事が続きます)
大塚と同じエージェント「一緒に行ったら面白いんじゃないの?」

洛南高校時代は大塚や山本龍(A2・ターラント)とともに春高優勝、筑波大学ではエバデダン・ラリー(大阪ブルテオン)とともにキャプテンとして全日本インカレを制した。卒業後は大塚、ラリーとともにVリーグ(現SVリーグ)の強豪パナソニック・パンサーズ(現大阪ブルテオン)に入団と、華々しいキャリアを歩んできた。
「でも当時のパンサーズはOH(アウトサイドヒッター)にジェスキーとロペスがいて、試合にはほとんど出られなかったんです」
垂水の行動は早かった。大竹壱青(現東京グレートベアーズ)などの先輩もトライした経験があり、話もよく聞いていた韓国トライアルに挑戦しようとクラブのゼネラル・マネジャーにすぐに相談する。しかしティリ監督から「若いうちはもっとレベルの高い所で揉まれてほしい」との言葉を受けて軌道修正。最初からイタリアを目指していたわけではないが、エージェントが同じである大塚にも垂水にもイタリアの可能性が出てきた。
「一緒に行ったら面白いんじゃないの?不安も少なく助け合えるのでは」と、大塚は今も所属するミラノへ、そして垂水はレンタル移籍という形でチステルナへ渡ることになった。(下に記事が続きます)
得意なディグだけでなく攻撃でもアピールを

スーペルレガは、VBTVなどで観戦していたまさに憧れの場所だった。実際に行ってみると、まずその雰囲気に圧倒された。観客は大声を出すし、ブーイングだってする。体が大きいだけではなく上手い選手も多い。その中で試行錯誤を繰り返す日々だ。昨年は1シーズン目で甘えられた部分もあったが、若い方から数えたほうが早い位置にいるとはいえ、今シーズンはプレーで引っ張っていく部分も見せたいと語る。
しかし現実は甘くない。昨シーズン後半は出場機会も増えMVPも二度獲得しているが、今シーズンOHには元イタリア代表のベテラン・ランツァと、ラティーナ時代をまたいで4シーズン目の今季、キャプテンを務めるバイラムがおり、垂水は第6節までに一度もスタメンに名を連ねることができていない。
ディグに関しては、チームでトップクラスだと自負がある。しかしそれだけでなく、背の低さを感じさせないほどのパワーとジャンプ力を生かしたスパイクでアピールできるようにしたい。これからどれだけ試合に絡んでいけるか、そしてチームが昨年同様にプレーオフに出場できるか、今年の出来がこれからのバレー人生においてかなり重要になってくると感じている。(下に記事が続きます)
ミラノ戦で「洛南対決」実現

インタビューは、チステルナで大塚がプレーするミラノとの試合日だった。大塚はいつものようにスタメン、垂水はベンチスタート。しかし第2セット13-17の劣勢時にバイラ厶に代わって垂水が入り、日本人対決、洛南対決が実現した。
3セット目はスタメンでスタートしたものの、前のセットに続きレセプションが安定しない垂水。垂水が受けたボールがネットを超えダイレクトで打ち込まれ、10-15となったところで交代となった。しかし、本人がアピールポイントに上げていた高い跳躍力を生かし、ブロックを大きく弾いたり奥深くに打ち込んだりする力強いスパイクが決まり、1セットに満たない出場機会で4得点を挙げたのは評価してよいだろう。
しかし試合後に話しかけると、「長く出ていなかったので試合勘が戻らずダメでした」と悔しそうな表情を見せた。(下に記事が続きます)
日本代表ティリ監督「何かを身につけろ」

イタリアに来た元々の目的は、日本代表に入ってオリンピックに出られる実力をつけること。その道筋を照らしてくれたティリ監督は日本代表監督になり、エージェントを通して間接的にメッセージを送ってくると言う。
「何かを身につけろ」「力で押し切れるようになれ」「ここぞという時に気を抜くな」
それはアドバイスというよりも、監督が垂水に求めていることである。
「日本ではバレーだけしていれば良い整った環境だったが、ここでは言語も分からない、自炊もしなくちゃいけない。ぬるま湯から荒地へ来て、バレー以外でも成長できる。本当に来てよかった」とあくまで前向きだ。このミラノ戦が前半折り返しの第一戦、それから年末のコッパ・イタリア、後半戦、そしてプレーオフと続いていくが、自らが選んでやってきた荒地で邁進していく。
垂水 優芽(たるみ・ゆうが)2000年11月2日、愛媛県生まれの25歳。滋賀県草津市育ち。いずれも全国制覇を経験した洛南高、筑波大を経て2023年パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)に入団。2024-25年シーズンからチステルナ・バレーへレンタル移籍中。2023年にユニバーシアード日本代表に選出されている。ポジションはOH、最高到達点350センチ。187センチ、80キロ。
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