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【ハンドボール】ビーチハンドボールの祭典に本場・豪州の森田恭子が参戦

小・中学生の試合で審判を務める森田恭子=2025年9月、久保写す(以下すべて)
小・中学生の試合で審判を務める森田恭子=2025年9月、久保写す(以下すべて)
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2025年9月20、21日に大阪のせんなん海里公園潮騒ビバレーで、今年もHC和歌山主催のビーチハンドボール大会が開催されました。大会の雰囲気のよさにひかれて、ビーチの本場オーストラリアでDFを磨いた森田恭子も参加するようになりました。森田とHC和歌山、さらには初めてビーチハンドに触れた選手たちとの交流をお伝えします。 

目次

国体後も活発、HC和歌山

HC和歌山の古家雅之。確かなハンドボール観で、HC和歌山の土台を作った=2019年11月
HC和歌山の古家雅之。確かなハンドボール観で、HC和歌山の土台を作った=2019年11月

まずは今回のビーチハンドボール大会を主催しているHC和歌山について説明しておきましょう。HC和歌山は、2015年の紀の国わかやま国体のために作られたチームです。湧永製薬(現・安芸高田わくながハンドボールクラブ)で活躍した「ケニー」こと古家雅之を監督兼選手に迎えて、チームを作ってきました。古家と言えば、プレーの判断に間違いがなく、湧永時代から「ハンドボールの教科書」と呼ばれた名選手です。左肩を入れて、DFを引きつけながらパスを出し、論理的にプラス1(1人余った状況)を作り出します。勝負どころになれば自ら切れ込み、ゴールを量産。延長戦で白元喆(ペク・ウォンチョル、元大同特殊鋼で、韓国のNo.1 プレーヤー)と互角に渡り合った2008年のプレーオフ決勝は、今も語り草になっています。

偉大なる古家監督のハンドボール観が根づいているから、地元国体のあともHC和歌山は高いレベルを維持しています。日本選手権にも何度も出場し、日本リーグ(現在のリーグH)勢を慌てさせることもしばしば。またインドアの活動だけでなく、ビーチハンドボールの大会を10年以上続けています。

HC和歌山と森田恭子の縁

HC和歌山の湯川将也。湯川が知らない番号からの電話を取ったことで、HC和歌山と森田との縁がつながった=2019年11月
HC和歌山の湯川将也。湯川が知らない番号からの電話を取ったことで、HC和歌山と森田との縁がつながった=2019年11月

2023年11月にペンスポの記事で紹介したように森田恭子はオーストラリアの学校で教員をしながら、日本のビーチハンドの大会に参加しています。ビーチハンドの本場オーストラリアで鍛えたDF技術は一級品です。数年前、森田が実家のある香川県に戻っていたタイミングで、HC和歌山の大会があることを知りました。締め切り当日だったため、森田は連絡先に記されていたHC和歌山の湯川将也に直接電話しました。

「あの時、湯川さんが電話に出てくれたおかげで、縁がつながりました。見たこともない電話番号だから、無視されてもおかしくないんですけどね。メールだと時間がなかったし、参加したい思いをすぐに伝えたいから電話しました」

森田は笑いながら、HC和歌山とのファーストコンタクトを振り返ります。オーストラリア暮らしが長いからか、森田はいい意味で遠慮がなく、誰とでも気さくに接します。古家監督にも、ビーチハンドでのシュートブロックの跳び方を教えて、遠慮なくダメ出しをしたとのこと。プレーでダメ出しされることがなくなった古家監督は「貴重な体験になりましたよ。いい刺激になりました」と言っていました。森田は「ヤバい。古家さんがそんなえらい人とは思わなかったから、試合のビデオを撮らせてしまいましたよ」と言いながらも、大会の雰囲気がとても気に入ったようで、それ以降HC和歌山との交流が始まりました。

2日で計370人参加

ビーチハンドボール大会を取りまとめる湯川(写真右)
ビーチハンドボール大会を取りまとめる湯川(写真右)

森田が大会に参加するようになって、2025年が3回目。「多くのチームが参加するし、会場の雰囲気がとてもいい大会だから、ぜひ取材してください」と誘われ、大阪の南端にあるせんなん海里公園潮騒ビバレーに向かいました。海辺にあるスタジアムはビーチハンドのコートが2面取れて、四方がスタンドに囲まれています。古代のコロッセウムのような趣のある会場で、試合がどんどん行われていきます。20日の小・中学生の部には約170人が参加。21日の一般の部(高校生以上)には約200人が参加しました。日本でもっとも人が集まるビーチハンドの大会と言っていいでしょう。

HC和歌山の湯川が、大盛況の理由を教えてくれました。

「学生の大会のない時期ですし、和歌山は体育教員の人数が少ない分、連携が取れているので、これだけ集まれるんだと思います。大会の目的はとにかく楽しむこと。スピンシュートの空中での一回転だったり、オーバーステップとかは厳しく取りません(判定しません)。ビーチハンドをやってみて『おもしろかった』と思えるよう、一回転のシュートにも積極的にチャレンジしてもらっています」

楽しみながら本質伝える

子供たちに交代やプレーのコツを伝える森田
子供たちに交代やプレーのコツを伝える森田

あくまでも普及が目的の大会ですが、森田は「楽しむなかにも、ビーチハンドの本質を伝えたい」と、ちょっとしたヒントを提供していました。レフェリーをしながら「今のプレーはよかったよ」と声をかけるだけでなく、レフェリーをしない時には小・中学生に交代のルールを教えるなど、ビーチハンドを楽しむための手助けをしていました。

「GKが攻撃参加して戻れないと、相手のGKのロングシュートばかりになります。ロングシュートばかりじゃおもしろくないから、GKは攻撃が終わったらすぐにコートを出て、代わりのGKが入るようにする。人数に余裕があるチームなら、OFとDFでメンバーを入れ替える。交代は、コート内の選手が出てから入る。交代のルールさえわかれば、かなりビーチハンドらしくなりますよ」

試合の合間に即席講習会

望月ちひろのシュートを森田がブロックする。ハイレベルな攻防
望月ちひろのシュートを森田がブロックする。ハイレベルな攻防

昼休みの時間帯に、森田は盟友の望月ちひろ(ビーチハンドボール元日本代表)と練習を始めました。望月がスピンシュートをして、森田がシュートブロックに跳ぶ様子を見た中学生が「私たちもやっていいですか」と声をかけてきました。 

「私たちが先にやっていたら、中学生も参加しやすいですよね。私も教員をしていますから、どうすればやる気を引き出せるかをいつも考えています。狙い通りです」

こうして森田と望月の即席講習会が始まりました。

DFの基本、シュートブロックで流しの上を消す

絶妙なタイミングで望月を止めて、大喜びの森田
絶妙なタイミングで望月を止めて、大喜びの森田

森田は中学生にDFの基本を教えます。

「ビーチのシュートブロックでは、流しの上(右利きのシューターから見て右上)を消すのが基本です。流しの上はDFが消すから、残りのコースはGKが止めます。シューターも真上に跳ぶだけでなく、前に跳んだり、横に跳んだりするので、ここからは駆け引きです。日本の選手は真上だけとか一方向にしか跳ばないから、DFしやすいんですよ」 

森田はシューターの跳ぶ方向にタイミングを合わせて、流しの上を消すように両手を伸ばします。ドンピシャのタイミングでブロックできると、森田は嬉しそうに声をかけてきます。「今の見てました? これがビーチのDFなんですよ!」 

DFのおもしろさ知って

森田から教わって10分ほどで、中学生もナイスブロック。この瞬間が最高に気持ちいい
森田から教わって10分ほどで、中学生もナイスブロック。この瞬間が最高に気持ちいい

森田はいつも「ビーチハンドはDFが一番おもしろい」と言っています。これだけタイミングのいいブロックができれば、気持ちいいでしょう。中学生も森田に教わりながら、徐々にブロックが様になってきました。しばらくすると、中学生がタイミングを合わせてシュートをブロックしました。止めた中学生は「DFっておもしろい!」とニコニコです。「ね、おもしろいでしょ。今日から私の弟子に認定します!」と、森田も嬉しそうでした。

森田はDFに対する価値観の違いを話していました。

「日本では『シュートを3本決めたら練習終わり』ですけど、オーストラリアでは『DFで3本止めたら練習終わり』なんです。日本ではみんなシュートが楽しいからシュートばかり打ちます。その時間の半分でもDFを練習するようになれば、もっと上手になれると思うんですよね。いいDFがあるから、シューターも上達します」

論理的にDFをする喜びは、一生ものの財産。森田に教わった中学生は、ビーチハンドの本質に触れて、より深くビーチハンドを楽しめるようになったことでしょう。

生涯スポーツとしてのビーチハンド

森田から弟子認定された、岩出ハンドボールガールズJHの選手
森田から弟子認定された、岩出ハンドボールガールズJHの選手

森田恭子との強力タッグで、今年もHC和歌山主催のビーチハンドボール大会は大盛況でした。森田は「審判をしている時やコートの外で見ている時も、ずっと選手に声をかけていました。もう黙って審判ができなくなりましたね」と、様々な世代との交流を楽しんでいました。この大会でビーチハンドボールに触れた若者たちが、末長くビーチハンドボールを楽しんでくれたらと願うばかりです。

ビーチハンドボールとは ゴールキーパー(GK)1人とコートプレーヤー(CP)3人の計4人でプレーする。交代は自由。GKと同じユニフォームを着た「スペシャルプレーヤー」が攻撃参加するので、常に4対3の攻撃側有利で試合が行われる。スペシャルプレーヤーのシュートや、スカイプレー(空中でパスをもらって打つ)、スピンシュート(空中で一回転するシュート)などの創造性の高いシュートは2点になるのが大きな特徴。試合は1セット10分で、2セット先取したチームの勝ち。お互いに1セットずつを取った場合、第3セットはシュートアウト(サッカーのPK戦を、ワンマン速攻のような形で行う)で決着をつける。国際ハンドボール連盟(IHF)などは近い将来、「ビーチバレー」のように五輪で採用される種目になることを目指し、IOC(国際オリンピック委員会)に働きかけている。

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