日本代表MF田中碧(26)がプレミアリーグのデビューを最高のかたちで飾り、UEFAランキング1位イングランド・プレミアリーグへの新たな道を切り開いた。イングランド下部リーグでのプレーを経てプレミアクラブで初出場を果たした初めての日本人選手になったのである。振り返ると、ここにたどり着くまで4年を下部リーグで過ごし長く険しい道のりだった。
開幕スタメン白星、最優秀選手に
リーズ・ユナイテッドFCは2025年8月18日ホーム、エランド・ロードで行われたプレミアリーグ開幕戦でエヴァートンFCと対戦した。
先発出場した田中碧は、中盤の一角としてプレーし、ゴール正面での右足ミドルシュートを放つなど果敢にゴールに迫る。そして田中碧のプレスから連動するような守備で相手選手のハンドボールを誘発。そのPKを84分にドイツ代表FWルーカス・ヌメチャが決めて、リーズ・ユナイテッドが1-0で見事に勝利した。
3年ぶりにプレミアリーグに舞い戻ってきたリーズ・ユナイテッドが開幕戦で白星を収めて好発進した。そして、縦横無尽に走り続けて疲労困憊の試合終了間際90+4分に交代で退いた田中碧は、リーズサポーターの投票によるプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)に41%の得票率で選出された。
田中碧は、ワールドカップでもプレーした代表選手でありながら何年にもおよぶ下部リーグでの下積み生活を経て、ついに世界最高峰の舞台でブレイクしたのだ。(下に記事が続きます)
下部リーグで不遇4年
これまで、プレミアクラブに加入後にイングランド・チャンピオンシップ(2部)に移籍してプレミアに戻ってきた日本人選手には、稲本潤一(アーセナル、フルハム、ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン、カーディフ・シティ)がいるが、直接イングランド下部リーグに加入した後にプレミアクラブでプレーした日本人選手は、田中碧が初めてのケースだ。
2024-2025シーズンにイングランド・チャンピオンシップを29勝 13分4敗・勝点100で優勝したリーズ・ユナイテッドにおいて田中碧はリーグ戦43試合に出場し、5ゴール2アシストを記録。クラブの選手投票によるプレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)とゴール・オブ・ザ・シーズン(年間最優秀ゴール)に選出された。さらにはELF選出のチャンピオンシップのチーム・オブ・ザ・シーズン(年間ベスト11)に名を連ねる栄誉を得た。
今夏は去就が注目されたがクラブの昇格とともにプレミアリーグに乗り込んできた。短い選手生命の4年間という長きに渡り下部リーグで不遇の歳月が続いた。
2021-2022シーズンに川崎フロンターレから、期限付きを経て推定100万ユーロ(約1億7000万円)の移籍金で2. ブンデスリーガ(ドイツ2部)のフォルトゥナ・デュッセルドルフに移籍。しかし、いくら努力を重ねてもなかなか浮上のキッカケをつかむことができずに不完全燃焼のまま時間が過ぎていった。
そして2024-2025シーズンにイングランド・チャンピオンシップ(2部)のリーズ・ユナイテッドに4年契約で加入した。移籍金は、推定400万ユーロ(約6億8000万円)だったが、後にプレミアリーグでスタメンを張る選手になったのだから、かなりお買い得だったと言える。ダニエル・ファルケ監督は、さすがドイツ人だけにドイツ下部でくすぶっていた田中碧にいち早く目をつけることができたのだろう。(下に記事が続きます)
従来は欧州大陸かJからプレミア移籍
プレミアクラブが選手を獲得して期限付き移籍で育成する場合、ヨーロッパ大陸のリーグに貸し出すことが多い。その代表的な成功例が、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCからロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)へのローンを経てプレミアリーグでデビューを果たした三笘薫だ。
過去にプレミアクラブでプレーした日本人選手は、他の欧州リーグかJリーグから加入した選手ばかりだった。
イングランド・チャンピオンシップは、2部としては破格の予算があり、昇格すれば世界最高峰のプレミアリーグということで以前からタレントが豊富だった。そして、田中碧がこのルートを経由したプレミア日本人選手の成功事例の第1号となったのである。英国のEU離脱後の外国籍選手の移籍規定の大幅な緩和により、イングランド下部でプレーする日本人選手が増えている。今後、さらに多くの日本人選手がこのルートからプレミアで成功を収めることになるだろう。
守備での貢献が求められるセントラルMFタイプの田中碧(身長180cm・体重75kg)が、激しいフィジカルを特徴とするプレミアリーグで通用するかは、未知数だった。しかし、同じくドイツからイングランドに移籍したリヴァプールFCの遠藤航(178cm・77kg)のように、必ずしもフィジカル的に恵まれているわけではない日本人でも十分にプレミアで通用することを開幕戦で見せつけた。8月23日の第2戦は敵地でアーセナルと対戦する。
長い長い眠りから覚め日の目を見た田中碧が、2026年の北中米ワールドカップに臨むサムライブルーでも覚醒の予感だ。
2025-2026イングランドでプレーする日本人選手
2025-2026シーズン開幕時点で、イングランド・プレミアリーグには5人の日本人選手が所属している。そして下部のイングランド・フットボール・リーグ(EFL)でプレーする日本人は9人にもなる。
サウサンプトンFCの菅原由勢はプレミアリーグでプレー後に、田中碧と入れ違いでクラブとともに降格した。再びプレミアでプレーすることになれば、稲本潤一以来のイングランド下部からのプレミア復帰の動きになる。
イングランド・プレミアリーグ
- ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC:三笘薫
- クリスタル・パレスFC:鎌田大地
- リーズ・ユナイテッドFC:田中碧
- リヴァプールFC:遠藤航
- トッテナム・ホットスパーFC:高井幸大
EFLチャンピオンシップ
- バーミンガム・シティFC:古橋亨梧、藤本寛也、岩田智輝
- ブラックバーン・ローヴァーズFC:大橋祐紀
- ブリストル・シティFC:平河悠
- コヴェントリー・シティFC:坂元達裕
- クイーンズ・パーク・レンジャーズFC:斉藤光毅
- サウサンプトンFC:菅原由勢、松木玖生
- ストーク・シティFC:瀬古樹
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