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【ハンドボール】大黒柱レフトバック40人 | リーグH名鑑2025 vol.2

左から服部沙也加(熊本ビューストピンディーズ)加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)西山尚希(大崎オーソル埼玉)高尾将吾(富山ドリームス)ハムザ カブロティ(ジークスター東京)=久保写す、以下すべて
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ハンドボールの各ポジションに求められる役割、技術について、2024年9月に発足した国内トップリーグ・リーグHでプレーする選手のプレースタイルとともに紹介します。第2回はレフトバック(LB)です。昔で言う左45度はエースポジションとも呼ばれ、チームで最も得点力の高い選手が揃っています。レベルが上がるほどロングシュートの威力が問われますが、ただ打つだけでは通用しないポジションです。 

目次

山口直輝(レッドトルネード佐賀)ロングシュート

山口直輝(レッドトルネード佐賀)のロングシュートは破壊力抜群
山口直輝(レッドトルネード佐賀)のロングシュートは破壊力抜群

レフトバックの基本は、ロングシュートが入るかどうか。ロングシュートが入れば、DFが前に出てくるので、ピヴォットへのパスを落としやすくなります。ロングシュートの選択肢を消されると、セットOFが苦しくなるので、高いレベルで通用するロングシューターは欠かせません。

日本を代表するロングシューターは部井久アダム勇樹(ジークスター東京)ですが、パリ五輪後はコンディションが上がらず苦労しています。9mラインの外からガンガン打ち込む「アダムキャノン」の復調が待たれます。次世代のロングヒッターでは、親子二代で世界選手権出場を果たした山口直輝(レッドトルネード佐賀)の評価が高まっています。「師匠」と仰ぐ成田幸平(レッドトルネード佐賀)との筋トレで、力強さが増してきました。ロングシュートの破壊力は、若い頃の成田と同じレベルにまで成長しています。伊地知愛妃(ブルーサクヤ鹿児島)は、日本の女子では数少ないロングシューター。好調時には得意の引っ張り下(右利きの伊地知から見て左下)にシュートが決まります。小川玲菜(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)はロングシュート一辺倒のイメージから脱却し、今季はカットインを効果的に使いつつ、ロングを織り交ぜるスタイルに進化しています。瀧川璃紗(北國ハニービー石川)は今季になってロングシュートが入る兆しが見えてきました。学生時代から注目されてきた大器が覚醒間近です。(下に記事が続きます)

服部沙也加(熊本ビューストピンディーズ)独特のフォーム

右肩が脱臼したかのような柔らかいテークバックが服部沙也加(熊本ビューストピンディーズ)の武器
右肩が脱臼したかのような柔らかいテークバックが服部沙也加(熊本ビューストピンディーズ)の武器

2010年前後にミケル・ハンセン(デンマーク代表の英雄で、腕のしなりが代名詞)が登場して以降、日本球界でも投げ方が変わり、ハンドボールの質も変化したと言われています。エースポジションは特に、投げ方の特徴が大きな武器になります。 

投げ方が個性的な選手と言えば、男子は吉野樹(ブレイヴキングス刈谷)、女子では喜納歩菜(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)が代表格と言えるでしょう。吉野の大きいテークバック、喜納の野球選手のようなしなりは唯一無二です。安倍竜之介(大崎オーソル埼玉)は不来方高校(岩手県)時代からヨーロッパ流のしなりを武器にしていました。あまりにもコンパクトなモーションで投げるので、ハンドボールでは珍しく肘の故障に悩まされました。服部沙也加(熊本ビューストピンディーズ)は独特な間合いで打ち込むロングシューター。ヌタッとした腕の振りから、思った以上に速い球を打ち込みます。肩甲骨周りの柔らかさがあるから成り立つ、オリジナルの技です。前屋敷龍佳(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)、郁佳(北國ハニービー石川)の姉妹も、大きめのテークバックから人とは違うタイミングで打つので、見た目以上にシュートがよく入ります。

野尻雄偉(琉球コラソン)抜群のキレ味

野尻雄偉(琉球コラソン)のカットインは、リーグHでも通用している
野尻雄偉(琉球コラソン)のカットインは、リーグHでも通用している

ボールを持った利き手側に動きやすいのが人間の特徴です。だから右利きのレフトバックはインに行きたがります。利き腕の反対側のアウトに行けたら、相手が守りにくくなりますし、DFも広がります。1枚目と2枚目の間の「アウトスペース」を割れる選手は、セットOFを組み立てる際に欠かせません。

琉球コラソンの新人・野尻雄偉はキレキレのカットインを武器に、1年目からエース格になりました。関東学生の2部リーグ出身で、身長も170㎝台と、目立つような経歴やサイズはありませんが、掘り出し物でした。インにアウトに自在に抜けて、とっさに左手に持ち替えてのシュートもできるなど、理想的なカットインプレーヤーです。基本の指導に長けた、湘南工大附属高校(神奈川県)の吉岡寛之監督の教えがベースにあると思われます。

森永浩壽(富山ドリームス)は藤代紫水高校(茨城県)、筑波大学とレフトウイングだった選手。中学でほぼ身長の伸びが止まってしまった典型的な早熟タイプですが、富山ドリームスに入ってフィジカルとコーディネーションを鍛えて、後天的に力強いカットインを手に入れました。「のびしろがない」と言われがちな早熟タイプでも、フィジカルを強化して身体の機能を改善していけば「新たなのびしろがある」ということを、身をもって証明しています。女子では前田みのり(北國ハニービー石川)、得点ランキングのトップを走る喜田ことみ(大阪ラヴィッツ)がカットインを得意としています。 (下に記事が続きます)

濱津秀斗(アースフレンズBM)天性の点取り屋

シンプルに点を取れるのが濱津秀斗(アースフレンズBM)の強み
シンプルに点を取れるのが濱津秀斗(アースフレンズBM)の強み

レフトバックはエースポジションですから、点取り屋のポジションとも言えます。ガンガン打つことで、チームを勝利に導きます。

清水裕翔(アルバモス大阪)は氷見高校(富山県)で2018年に高校三冠を達成した、生まれつきの点取り屋です。DFの陰からしゃくりあげるようなシュートを突然放つなど、ひと目でわかるスキルフルな選手です。清水の移籍に伴い、アースフレンズBMのエースに昇格したのが濱津秀斗です。身長は180㎝とレフトバックにしては小柄だし、特に小難しいことはしないのに、速い腕の振りからサクッとシュートを決めます。得点ランキングのトップを争いながらも、余計なエゴを見せないプレースタイルが好印象です。泉本心(ジークスター東京)は中央大学の大エースで、日本代表の経験者。大学レベルなら多彩なシュートバリエーションで1試合10点は当たり前ですが、世界を見据えるとなると、強さのあるカットインをメインに組み立てた方がよさそうです。

加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)トップアスリート

加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)は躍動感あふれるプレースタイル
加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)は躍動感あふれるプレースタイル

走る・投げる・跳ぶ。ハンドボールに必要な三要素を満たした選手がエースでいてくれると、チームに勢いがつきます。

中田凌河(福井永平寺ブルーサンダー)は身体能力抜群のレフトバック。速攻で走り、セットOFでは高く跳び、高い打点から気持ちよく打ち込みます。富永聖也(ブレイヴキングス刈谷)は体のバネを感じさせるカットインで、ベンチからの起爆剤になります。まだチームにフィットしきれていませんが、ジェームス ジュニア スコット(大同フェニックス東海)は身体能力の高い選手で、トップDFでも長い手足を生かします。加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)は様々な測定で圧倒的な数値を叩き出すアスリート。酒巻清治監督は「将来は津屋大将(元トヨタ車体)みたいになるぞ」と、かつての教え子を引き合いに出して、加納のポテンシャルを絶賛していました。身体能力のある無名な選手を良質なトレーニングで鍛え、一人前に育て上げるのは、酒巻監督の得意技です。(下に記事が続きます)

岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)アシスト能力

岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)は得点力だけでなく、周りを生かせる
岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)は得点力だけでなく、周りを生かせる

レフトバックは打ち屋のポジションとも言われますが、パカパカ打つだけでは限界があります。ピヴォットにパスを落としたり、レフトウイングとの横の2対2でズレを作ったり、大きく逆サイドに飛ばしたりといった視野の広さも求められます。

川島悠太郎(大崎オーソル埼玉)はレフトバックとセンターバックの両方ができる選手です。レフトバックに回った時には1歩で迷いなく打ち込んで、場の空気を支配できます。重藤駿介(福井永平寺ブルーサンダー)も視野の広さがあるので、両方のポジションで機能します。レフトバックで中田凌河の休憩時間を作ったり、センターで中田と並んでロングシュートを狙ったりと、使い勝手のいい選手です。水町孝太郎(豊田合成ブルーファルコン名古屋)は若い頃の剛腕からモデルチェンジして、今では速いパス回しと判断力が武器のベテランになりました。2024年のプレーオフ決勝で見せたパッシングゲームの時間帯は、水町が主役でした。岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)は元々がセンターなので、点を取る以外の動きもよく理解しています。香川銀行は松浦未南、岡田、江本ひかると、実質センターを3枚並べるような布陣でありながら火力が高いという、他のチームにはない組み合わせが特徴です。

カブロティ(ジークスター東京)バランサー

エゴを見せないハムザ カブロティ(ジークスター東京)はチームにフィットしそう
エゴを見せないハムザ カブロティ(ジークスター東京)はチームにフィットしそう

他のポジションにエースがいる場合、レフトバックに調整役の選手を入れることでバランスが整います。いわゆる「死に役」になる選手が1人いないと、バックプレーヤーの3人ともが「オレが、オレが」と自己主張しすぎて、攻撃のリズムが悪くなってしまいます。

日本を代表するバランサーが信太弘樹(ジークスター東京)です。かつて日本代表のエースだった男が、いい意味でロールプレーヤーの役割を受け入れ、攻守に複数のポジションで渋い働きを見せています。ジークスター東京の新外国人選手ハムザ カブロティもバランサータイプの選手です。周りとうまく合わせながら、忘れたころに腕をしならせブラインドシュートを放ちます。行本朱里は得意のポストパスやカットインもありつつ、新たなセンターエース・酒井優貴子が打ちやすいようお膳立てに努めます。南夏津美(イズミメイプルレッズ)は攻撃の2人目、3人目で絡むのが得意な選手。洛北高校(京都)~大阪体育大学の経歴からもわかるように、周りを生かす「死に役」になる動きを理解しています。(下に記事が続きます)

西山尚希(大崎オーソル埼玉)インパクトプレーヤー

西山尚希(大崎オーソル埼玉)はベンチから出てきて、ひたむきに前を狙う
西山尚希(大崎オーソル埼玉)はベンチから出てきて、ひたむきに前を狙う

現代ハンドボールでは、スタメンの選手7人だけでは勝てません。途中から出てくる強力なバックプレーヤーが必要不可欠です。

「ベンチからの起爆剤」と言えば、西山尚希の名前が真っ先に思い浮かびます。得点力不足に悩む今季の大崎では貴重な、爆発力が期待できる選手です。チームにエネルギーを注入するべく、ギラギラとゴールを狙い続けます。山﨑洸平(安芸高田わくながハンドボールクラブ)は本来はエース格の選手ですが、今季はベンチスタートが多くなっています。稲毛隆人監督が言うには「阿部将成は先発で使わないと力を発揮できないけど、山﨑は途中から出してもいいパフォーマンスをしてくれる」とのこと。ロングシュートだけでなく、ルーズボールへの執念でもチームの士気を高められる存在です。菊池杏奈(アランマーレ富山)は、短時間集中で力を発揮できる選手。今季はケガで出遅れましたが、コンディションが戻れば、強烈な1対1を入ってすぐに見せてくれるでしょう。競輪選手のような太腿から繰り出されるカットインは脅威です。 

藤川翔太(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)エースの矜持

肩の手術から復帰し、得点ランキング上位に食い込む藤川翔太(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)
肩の手術から復帰し、得点ランキング上位に食い込む藤川翔太(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)

得点は6ポジション均等にばらけるのが理想ですが、メンバー構成上、エースが打ちまくらないと勝てないチームもあります。勝負の責任を背負って打ち続けるエースシューターは、替えの利かない存在です。

伊藤極(ゴールデンウルヴス福岡)はタフなエース。どんなに苦しい状況でもシュートを打ち続けて、創設当初からウルヴスを支えてきました。藤川翔太(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)は1年目から打ちまくり、チーム浮上の立役者になりました。2022年の日本選手権準優勝は、藤川の得点力があったからこそ。その後はシュートの打ちすぎで肩を痛めて、手術しました。阿部直人監督は「高校野球じゃないけど、藤川には『球数制限』を設けようと思う」と言っていました。連戦が続いた場合の「肩の管理」は、これからのハンドボールの課題になるかもしれません。(下に記事が続きます)

小澤基(大同フェニックス東海)勝負の責任背負う

打って守って、勝負どころで誰よりも体を張れるのが小澤基(大同フェニックス東海)
打って守って、勝負どころで誰よりも体を張れるのが小澤基(大同フェニックス東海)

攻守両面で勝負の責任を背負える選手は、チームの柱です。特にエースが3枚目を守ってくれると、とても助かります。点を取って守るのがハンドボール。点を取るだけの選手だと、本当の信頼は得られません。 

山口眞季(三重バイオレットアイリス)はソニーから移籍後にブレイクし、3枚目を守れる大エースに成長しました。日本代表でも左右の3枚目のDFで貢献し、2024年12月のアジア選手権決勝の韓国戦では、勝負どころでのパスカットで勝利をもたらしています。DFでは2枚目になりますが、吉野樹(ブレイヴキングス刈谷)も攻守にフル回転できるエースになりました。2025年1月の世界選手権ではエースらしい状況判断で、世界を相手にコンスタントに点を取っています。

攻守の柱で忘れてはならないのが小澤基(大同フェニックス東海)。打てるタレントが揃った今季は「僕が無理に打たなくてもいい」と言っていましたが、いざ試合になると、勝負どころで頼れるのは小澤だけ。3枚目を守って、節目の得点を決めて、獅子奮迅の働きを見せています。小澤のプレーぶりを見たら「勝負の責任を背負うとは、こういうことなんだな」と理解できると思います。海外になりますが佐々木春乃(ドルトムント/ドイツ)も3枚目を守って、エースポジションで点を取る、替えの利かない存在です。女子日本代表は、佐々木の後継者育成が急務です。

高尾将吾(富山ドリームス)まさかの左利き

左利きでレフトバックに入る高尾将吾(富山ドリームス)
左利きでレフトバックに入る高尾将吾(富山ドリームス)

レフトバックは右利きのポジションだと思い込んでいたら、左利きの選手が出てきました。

高尾将吾(富山ドリームス)は左利きなのに、リーグH開幕からしばらくはレフトバックで出場していました。こういう奇策は「さすが富山ドリームス」といったところですが、吉村晃監督には根拠がありました。「デンマーク代表のマシアス・ジセル(2024年パリ五輪得点王)が左側でのカットインで点を取っているから、高尾で試してみました」。高尾に聞くと「アウト側に行きやすいし、利き手の左手がズレやすいから、やりやすさもあります」とのこと。利き手側で強くプレーしたいのなら、左利きをレフトバックに入れるのも「あり」かもしれません。 

以上がレフトバックに求められる資質と、プレーの特徴です。次回はセンターバックのポジションを紹介します。

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