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【編集長コラム】東京に女子ハンドボールチーム構想 | ペンのチカラで後押し

2004年以来、10大会ぶりのアジア選手権優勝を果たしたハンドボール女子日本代表
2004年以来、10大会ぶりのアジア選手権優勝を果たしたハンドボール女子日本代表=2024年12月10日Ⓒ©JHA/Yukihito TAGUCHI
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ワクワクするプロジェクトに参画することになった。私はこのプロジェクトを勝手に「プロジェクトW」と呼ぶことにする。

「W」は「Women(女子)」にちなんだプロジェクトという理由が一つ。そして何より、この話を聞いた時に私自身が衝動的に抱いた「ワクワク(WakuーWaku)」だ。ただ実現に向けては課題も多く、正直「Wondering(疑問に思う、思いをめぐらす)」なこともある。

その「プロジェクトW」とは、ハンドボールの国内最高峰リーグ「リーグH」に現時点では存在しない、東京に拠点を置く女子チームをつくろうというプロジェクトだ。

早ければ年内にも運営会社を立ち上げる計画が進む。その後、コーチングスタッフを人選し、選手を選抜するトライアウトに着手する予定だ。それと同時に練習場の確保やホームタウンの選定、もちろん資金面での支援の輪を広げていく。今から3シーズン後の2027〜28シーズンに、リーグHへの加盟を目指している。

目次

仕掛け人は「アルバモス大阪」の生みの親

仕掛け人はリーグH男子の新規参入チーム「アルバモス大阪」の立ち上げを主導したことで知られる小坂哲英さん(60)、そしてハンドボール月刊専門誌「スポーツイベント」元代表取締役だった南木貞夫さん(故人)夫人の南木香乃さんらだ。ハンドボール界隈で顔が知られる2人にはすでに多数の支援者がいる。

2025年1月31日、東京都品川区南品川の創作ダイニング居酒屋「王様のポケット」で開かれた「ハンドボールファミリー懇親会」で、小坂さんは「女子プロハンドボールクラブ創設プラン」という紙を配り、その構想を披露した。

小坂哲英さん(後列中央)、南木香乃さん(後列左から2人目)とプロジェクトを応援する人たち
小坂哲英さん(後列中央)、南木香乃さん(後列左から2人目)とプロジェクトを応援する人たち=2025年1月31日、東京・品川で

ハンド愛に満ちた熱い人

小坂さんは早大ハンドボール部出身。私たちPen&Sports [ペンスポ] が取材に出向いた昨年のハンドボール女子パリ五輪最終予選(ハンガリー・デブレツェン)には自費で出向いて応援していた。そんな「ハンドボール愛」に満ちた熱い人だ。

生前の南木貞夫さんと意気投合し、ハンドの未来を語らっていた小坂さんは2020年6月に急逝した南木さんに「大阪に男子チームをつくること」と「東京に女子チームをつくること」などを約束していたのだという。

大阪に男子チームは「アルバモス大阪」で実現した。次は「東京に女子チームを」というわけだ。そんな小坂さんからこのほど、「ペンのチカラで協力を」とペンスポにも声がかかった。

小坂哲英さん(右)と筆者
小坂哲英さん(右)と筆者=2025年1月31日、東京・品川で

リーグH女子、西日本に集中

そもそもなぜ、東京に女子チームを作ろうとしているのか。

リーグHに加盟して戦っている女子チームは現時点で11ある。そのチームのラインナップを見れば一目瞭然。全て拠点は西日本に集中している。

首位を走るブルーサクヤ鹿児島、2位北國ハニービー石川、3位イズミメイプルレッズ広島、4位アランマーレ富山、5位熊本ビューストピンディーズが6月のプレーオフ進出をかけて、勝ち点5差の中にひしめく大接戦を繰り広げていることは、ハンドボールファン以外にはあまり知られていない。

6位には香川銀行シラソル香川。以下、HC名古屋、ザ・テラスホテルズラティーダ琉球、三重バイオレットアイリス、飛騨高山ブラックブルズ岐阜、大阪ラヴィッツと続く。

これら11チームに加え、昨年末に発足した「デレフォーレ岡山」が3シーズン後の2027〜28シーズンのリーグH参入を目指して動き出したところだ。それを含めても、日本のトップリーグであるリーグH女子の実態は「西日本リーグ」なのだ。

小坂さんは「ハンド界を盛り上げるためには、中、高、大学の強豪校や、スポンサー候補企業、メディアが集中する東京にチームを置きたい」と説明する。そしてその先には「首都・東京から世界へ」を意識した欧州、米国、アジアとのクラブ間の交流や、2028年ロサンゼルス五輪への機運醸成、1976年モントリオール大会以来、自力で五輪に出場していない女子日本代表(おりひめジャパン)の強化が念頭にある。(下に記事が続きます)

国内競技人口8.6万人、ハンドボールに市場はあるか

欧州の人気スポーツで世界に約3千万人の競技人口がいるハンドボール。では、国内の現状はどうか。

ペンスポは最新の国内競技人口を日本ハンドボール協会(JHA)に取材した。それによると、2024年12月末時点の国内競技人口(登録料3,000円)は8万6,543人。男子は5万7,998人、女子は2万8,545人。男女比は2:1だ。2014年には男女で約10万人の登録者がいたのでこの10年で約1万5千人近く減少したことになる。特に女子は高校卒業と同時に82%が競技をやめるというデータがある。

リーグH参入の高いハードル

一方、1976年に発足した日本ハンドボールリーグは将来的な「プロ化」を掲げて2024年9月開幕の今シーズンから「リーグH」と名称を変え、再スタートしたばかりだ。

プロ野球選手のように、選手が専業ハンドボール選手として自活できることが理想だが、下位チームを中心にほとんどのチームの選手が別の仕事をしながらハンドボールを続け、リーグ戦を戦っている。遠征には飛行機や鉄道ではなく、経費削減のためレンタカーを利用しているチームもある。

その一方で、リーグHはチームとしての「経営のプロ化」を推進し、独立法人による入場料収入、グッズ販売収入、スポンサー収入などで各チームに黒字化を促す。

それだけではない。リーグHは「地域貢献」の理念を掲げ、チーム名に地域名を入れることや、小学生チームの育成組織の保有や提携、4年目までに1,500人収容のホームアリーナ確保などの要件を提示している。

実業団からの転換を求められるチーム、新規参入チームがクリアするハードルは多い。東京に女子チームができたとしても、対戦相手は全て西日本のチーム。そのホーム&アウェイの遠征費だけを考えても相当な負担がのしかかる。(下に記事が続きます)

「市民球団」を目指したい

それでも、「東京に女子ハンドボールチームをつくる」と決めた小坂さんは本気だ。

「大いなる挑戦であり、社会実験の一面もありますが、特定企業の資本や業績に依存しない、『市民球団』を目指したい」と小坂さん。まだ何も決まっていない段階から、こうしてアドバルーンを揚げるのも、「ハンドボール村」以外の人にもまっさらな状態からチーム作りに関わるチャンスや余白を残す狙いがあるのだろう。

話は少し脱線するが、今から20年ほど前、通称「サカつく」(プロサッカークラブをつくろう)というゲームが流行った。プレーヤーはクラブの代表(オーナー)に就任し、チームの運営や施設・人事の管理、選手育成などを行いながら、世界最強クラブを目指す「クラブ経営シミュレーションゲーム」だ。それまでは選手を直接操作するサッカーゲームが主流だったから、オーナー目線が目新しく、私自身もハマった時期がある。

今回の「東京に女子ハンドボールチームをつくる」はその「女子ハンドボール版」であり、「リアル版」とも言える。このプロジェクトの推進者は小坂さんであり、南木さんなのだが、監督、コーチも選手もホームタウンも、練習拠点も決まっていない。未来のオーナーはこの記事を読んで「東京の女子ハンドボールチーム」に関心を抱き、可能性を感じたあなたかもしれない。(下に記事が続きます)

チーム名「一口馬主」を参考に

文筆業の私はこれから決まる「チーム名」に特に関心がある。

例えば、競馬には数万円の出資でその馬の共同オーナーになれる「一口馬主」という制度がある。馬に出資すると馬名案をクラブに提案する権利が与えられる。最終選考として残った数案からその馬名は出資者が投票して決める仕組みだ。

競馬のように賞金による配当は見込めないかもしれないが、自分がチームのネーミングに関わるとなれば、自ずとそのチームに愛着がわく。「一口馬主」にヒントを得た「一口オーナー」を募り、投票による「命名権」を与えてはどうだろう。黒字化した場合には、「一口オーナー」は試合に招待されてもいい。

ハンドボール好きな人も、そうでない人も、新チームのネーミングを提案でき、それがオープンな投票によって決まるとなると、ちょっとした話題にもなるだろう。

既存チームの試合を観に行って、「推し」の選手ができ、そのチームのファンになるパターンは多いけれど、思わず応援したくなるチーム、クラブづくりにゼロから関われる機会はそうない。ハンドボールファンや関係者だけでなく、設立前から多くの「部外者」とのタッチポイントを増やし、みんなが応援できる文脈で、東京に愛される女子ハンドボールチームをつくっていく。ペンのチカラでそんな「プロジェクトW」の後押しができたら、と思っている。

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