イタリア女子バレーボール・セリエAの第9節、無敗で首位を独走するコネリアーノ(正式名:Prosecco DOC Imoco Conegliano=プロセッコ・ドック・イモコ・コネリアーノ)と2位のミラノ(正式名:Numia Vero Volley Milano=ヌミア・ヴェーロ・バレー・ミラノ)との試合は2024年11月22日、ミラノ郊外の大型アリーナ、ウニポル・フォルムで開催された。昨季も1万人越えの観客を動員した同カードは、更に上をゆく12,626人を動員し、イタリア女子レギュラーシーズンの新記録を達成。そのビックゲームには、今季イタリアで海外初挑戦の2人の日本人選手、リベロの福留慧美(27)とセッターの関菜々巳(25)の姿があった。試合後、アリーナのカフェで2人にインタビューをおこなった。今回の記事ではミラノの福留に焦点を当てる。
福留慧美(ふくどめ・さとみ) 1997年11月23日、京都府生まれ。姉の影響で小学生からバレーボールを始める。京都橘高、龍谷大を経て2020年にV.LEAGUE1部(当時)デンソー・エアリービーズに入団し、4シーズンに渡ってプレーした。ポジションはリベロ。粘り強いディフェンスが評価され、2022年に日本代表に選出。女子世界選手権8強、パリ五輪にも出場した。2024-25シーズンから自身海外初挑戦、昨シーズンセリエA3位のミラノへ加入。パリ五輪で金メダルを獲得した女子イタリア代表のオポジット(OP)パオラ・エゴヌや、セッターのアレッシア・オッロ、ミドルブロッカーのアンナ・ダネージらがチームメートにいる。身長162cm。
A昇格8年、パリ五輪金メダリスト勢ぞろい
福留が所属するヴェーロ・バレーは、ミラノとモンツァの2都市にまたがる5クラブが形成する連合体だ。男子モンツァには2023-24シーズンに日本代表の高橋藍が在籍したため、日本でも広く知られるようになった。一方、女子はミラノの名を冠し、2016-17シーズンにセリエAに昇格したにも関わらず、昨季はリーグ戦3位、コッパ、スーペルコッパ、欧州チャンピオンズリーグともに2位と、たった8年でトップ争いに食い込むまでになった強豪だ。
そのメンバーは錚々たるものである。女子最強選手とも言われるオポジットのエゴヌを筆頭に、パリ五輪金メダリストのセッターのオッロ、アウトサイドヒッターのシッラ、イタリア代表キャプテンでもあるミドルブロッカーのダネージ。この全員が各ポジションの最優秀選手にも選ばれている。他にもオランダ代表のダールデロップやフランス代表キャプテンのカソーテなど、各国代表が並ぶ。そして今季からの監督は、ポーランド代表監督も務めるステファノ・ラヴァリー二だ。
日本人選手がこんなビッグチームに所属することは筆者にとっても頼もしい限りであり、福留本人も「海外クラブに疎い私でも知っていたミラノから、声がかかるなんて信じられなかった」と振り返る。(下に記事が続きます)
海外留学の友人を見て「自分も変わりたい」
イタリアに来る前は、大学卒業後に入団したデンソーに4シーズン、足掛け5年所属していた福留。海外挑戦を意識したのは、日本代表に選ばれた翌年あたり。海外のレベルを体感して、海外に行かないとレベルアップできないのかな?と思い始めた。しかし、海外生活に興味を持っていたのはもっと前からだった。
「大学のバレーの同期や先輩後輩が海外留学に行っていて、静かな子が意見を言うようになったりと性格が変わって帰国したのを目の当たりにして、自分もいつか行ってみたいなと漠然と思っていた」と言う。しかしまさか本当に自分がイタリアに、しかもミラノのようなチームに来られるとは自分自身もびっくりしたそうだ。
3か月が経ち、イタリアでの生活にもやっと慣れてきた。英語は苦手だが、チームメンバーはいろいろ誘ってくれる、と言うように、12月初旬のエゴヌのインスタグラムでは、ラーメンを前に福留の教えで「いただきます」をする二人の動画と写真がストーリーに投稿された。特に仲が良いのは、フランス代表で同じリベロのジェリン。住まいが隣ということもあり、彼女の家で一緒に映画を見て楽しむこともある。
オフの日は、大型スーパーに買い物に行ってそこでピッツァを食べたり、時にジェラートを食べたりするのがささやかな楽しみだとか。
「(現在ノヴァーラ在籍、フィレンツェでイタリア1年目だった昨季の石川)真佑よりは出かけてますけど」と笑いながら、私生活はもっと充実させたいと語った。(下に記事が続きます)
「ダイソン福留」オリジナルソングも
昨季2位に終わった決勝は全て、女王コネリアーノに負けた。そんな宿敵との対戦に、ミラノ郊外のアリーナは新記録となる12,626人を動員。リベンジを期する応援団「STELLARS」にも熱が入る。外国人選手も多く在籍するなか、応援団エリアに日本国旗だけが掲げられているのが気になり、彼らに質問しにエリアまで足を運んだ。
「サトミのことが大好きなのよ、選手としてもすごいし、とってもかわいい!」と、特別扱いをはばからない。「なんといっても『ダイソン』だからね!」と応援団員が口々に言う。ダイソンは、イタリアでも高機能と評判の高い掃除機メーカー。どんなボールも取りこぼさずに拾いまくる福留につけられたニックネームなのだ。
サトミソングもあるんだけど、聞いてくれる?と歌ってくれた歌詞は…
「飛ぶ、いけ、フクドメは飛ぶ、サポーターは恋しちゃう、いけ、フクドメは飛ぶ、サトミは飛ぶ」
試合中、福留のスーパープレーが飛び出すたびにこの歌が聞こえてきただけでなく、「サトーミー、ダイソン!フクドーメ!」とDJのコールが響き渡り、会場も大盛り上がり。筆者が別の試合をTV観戦している時も、解説者から「出た!掃除機の福留!」と言われるほど、このニックネームはイタリアですっかり浸透している。ミラノ公式応援団Stellars Vero Volley Milanoのインスタグラムには、チーム合流時にバラの花で応援団に歓迎される福留の写真が掲載されている。
スタメン定着、遠い先よりまず今季
今季のミラノのメンバーを見た時、どちらのリベロがスタメンになるか?筆者をはじめ多くの人が予想がつかなかったように思う。それはメンバーが確定した後に就任したラヴァリー二監督も同様だった。
「サトミのことは国際大会で見て知っていた。予想通り確かな技術を持つ素晴らしい選手で、練習でもスマホの翻訳機を使って指示を完璧に理解している。シーズン前の練習や試合の結果からサトミをスタメンに使うことが多いが、ジュリエット(ジェリン)も優秀な選手。2人が良い競争心で磨きあってくれれば、チーム全体の向上にもつながる」とリベロ2人の切磋琢磨を期待する。
国際大会でラヴァリーニ監督を見て、福留はよく怒っている印象が強かったそうだ。しかし実際は、自主練でも積極的にアドバイスをくれる面倒見の良い監督。選手と監督の距離の近さも、日本と大きく違うと実感しているところだ。
今までのところ、リーグ戦では福留が先発、チャンピオンズリーグではジェリンが先発と役割分担をし、どちらかの調子が悪ければ交代するなど必要に応じてコートに立っている。
そんなジェリンについて福留は「彼女は私に持っていないものを持っている。例えば、私もフィジカルには自信があったほうだけど、彼女はもっと強い。あの一歩が出せるんや、片手であのボールが取れるんや、と感心することも多い。英語での声掛けも積極的で、それは今の私にはできないこと」と高く評価する。お互いが高めあって共に成長したい、と語る。
気になる日本代表と2028年ロサンゼルス・オリンピックについては、「ロスどころか、代表に選ばれることすら分からない。今はここで各大会でのチームの優勝と自分自身が安定したプレーで貢献できるようにやっていくだけです」と、遠い将来よりも「今」に集中している。
筆者のインタビューで初めて自分のニックネームを聞き、「ええ〜知らんかったわ〜」と京都人らしいおっとりとした口調で笑う福留。しかし、コートに立つとたくましい顔つきに変わり、縦横無尽に駆け回って高性能掃除機のごとく、どんなボールも逃さない。シーズンもほぼ半ば、これからさらにヒートアップするなか福留にどのような変化が見られるのか。これからさらにファンを楽しませてくれるに違いない。
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コメント一覧 (4件)
Grazie per il bel articolo!!
Vedere Fukudome-san giocare è sempre uno spettacolo, prende palle impossibili.
E’ un tipo di giocatrice rara nella pallavolo italiana e sono contento che sia già entrata nel cuore dei tifosi italiani.
Mi è capitato di pensare che è il tipo di giocatrice che manca a Novara, che trovo debole nella ricezione.
Ma certo a Milano avrà tante soddisfazioni.
Grazie Leo!
Prendere palle impossibili…per questo la chiamano Dayson!!
Era popolarissima fra i tifosi milanesi, mentre facevo la foto e l’intervista tanti venivano chiederle foto e autografo.
Hai visto la partita di Novara contro Scandicci? E’ stata bellissima, conbattutissima!
Ora e’ tornata libero titolare, Fersino, insieme Mayu e Lina la ricezione dovrebbe essere a posto.
Grazie a te!!
Si, penso che in Giappone sia quasi normale, ma qui in Italia non ci sono giocatrici così brave nel salvare palloni che sembrano già caduti a terra.
Per questo i tifosi l’ammirano così tanto.
Novara Scandicci è stato un partitone, sono contento che l’abbia vinta Novara, la ricezione è andata meglio, Mayu-san è molto brava anche in questo, sa fare tutto questa ragazza, visto che alzate? E’ incredibile… Vorrei che le compagne la impegnassero di più in attacco, ma forse sarebbe troppo anche per lei.
^-^
A quella alzata di bagher la commentatrice tecnica ha dato grande complimento!!
Lei e’ una giocatrice completa, per questo vale tantissimo anche piu’ di una bomber che fara’ 40 punti. Per la pallavolo comunque e’ fondamentale sempre la difesa….se non cade la palla vince!!