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【バレーボール】ペルージャ・ロレンツェッティ監督「祐希を誇りに思ってください」

【バレーボール】ペルージャ・ロレンツェッティ監督「祐希を誇りに思ってください」
ペルージャのアンジェロ・ロレンツェッティ監督。TVで見るよりも柔和な印象=2024年5月、中山写す
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イタリア男子バレーボール・スーペルレガで、2023-24シーズンを制したペルージャ(正式名:SIR SUSA VIM PERUGIA=シル ・スーサ・ ヴィム・ペルージャ)。2017-18シーズンの初優勝以来、プレーオフ常連ながら手が届かなかったこのチームを2度目のスクデット奪回に率いたのが、アンジェロ・ロレンツェッティ(Angelo Lorenzetti)監督である。奇しくも、来季から加入する石川祐希がイタリアリーグに初挑戦したモデナの監督でもあったロレンツェッティ監督に2024年5月、9季ぶりに石川とともに戦うこと、チーム作りの秘訣など、書面インタビューに応じてもらった。

目次

スーペルレガ監督歴24年の「優勝請負人」

2023-24シーズンを制したペルージャ(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)
2023-24シーズンを制したペルージャ(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)

アンジェロ・ロレンツェッティ監督は1964年生まれの60歳。1988年にセリエB2だった自身の地元チームから監督としてのキャリアをスタートし、3シーズンでB1、A2と2カテゴリー昇格を果たしてすぐにその才能を発揮する。その後、ナショナルチームのアンダーカテゴリー監督などを経て、2000年にパドヴァでスーペルレガの監督デビューを果たした。翌シーズンには名門モデナを優勝に導き、ピアチェンツァ、そして再びモデナ、昨季はトレンティーノ、そして今季はペルージャと、異なる4チームでスクデットを取ってきたまさに「優勝請負人」。

トレンティーノが優勝した2022-23シーズンといえば、ペルージャはレギュラーシーズン無敗で圧倒的な強さを見せつけたものの、プレーオフ準々決勝で石川祐希が活躍したミラノに2-3で敗北したことは皆さんの記憶にも新しいことだろう。その後、満を持してペルージャに呼ばれたのがロレンツェッティ監督で、その期待を裏切らずにリーグ優勝のみならずコッパ、スーペルコッパ、世界クラブ選手権の4冠までやってのけた。(下に記事が続きます)

少年ユウキの理解力にびっくり

厳しい面持ちでコートを見つめるロレンツェッティ監督(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)
厳しい面持ちでコートを見つめるロレンツェッティ監督(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)

そんな監督がモデナ在籍の2014年12月、やってきたのが19歳の石川祐希だった。彼は2024年5月、ペルージャ入団会見の際にこのチームを選んだ理由の1つとしてロレンツェッティ監督の存在を挙げ、「アンジェロに自分がどれだけ成長したか見てもらいたい」とも話していた。その言葉を監督はどのように受け止めたのだろうか。

「あの時のユウキは少年だったけれど、初めて見た時からすぐに関心を持ちました。あんな短い期間でしたが、親しみやすさ、誠実さ、勤勉さなどの彼の特性はチームでも話題になったほど。彼が大人となった今もこの特性を持ち続けているのか、それとも別の何かと入れ替わったのか、何かが追加されたのか、とても興味があります」

 筆者が日本のTV番組で見た当時の石川の体はまだ細く、イタリアのプロチームの練習についていけずにへばっていた。しかし監督は、現在のようなトッププレーヤーになる片鱗を見逃していなかった。

「私が一番驚いたのは、チームメートや私から受け取った技術的・戦術的なフィードバックを瞬時に理解する能力。ユウキのこの能力については、いろんな人、いろんなの選手に頻繁に話したほどです。多くのアジア人選手と同様に、あの当時でもすでに技術的にはかなり優秀でした。彼の実力を確信していたので、ユウキがプロとして自身の才能を最大限に生かせる選択をするよう、心から望んでいました。その後の9年間も止まることなく、より高いレベルへステップアップし続けていますね」

そんな風に監督が認める石川。その名前が来季のチーム構想を決めるミーティングで出てきた時は、監督をはじめ、参加者全員が即時に賛成したと言う。

石川の加入を伝えるペルージャのインスタグラム投稿は、アジア料理店でロレンツェッティ監督が14番をオーダーするという粋な演出。「9年ぶりにユウキと一緒にやれるという特別な動画に出演させてくれて感謝」

肝心なのは”DOVERE”でなく”VOLERE”

タイムアウト中に指示を出すロレンツェッティ監督(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)
タイムアウト中に指示を出すロレンツェッティ監督(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)

ロレンツェッティ監督について、石川は「完成した選手をバランスよくまとめるのがとてもうまい」と言う。リーグ戦優勝後のウンブリアTVのインタビュアーも同じことを言っていた。監督は笑いながら「ラッキーだっただけですよ」と答えていたが、いくら個人が強くてもチームがまとまらなければバレーボールでは決して勝つことができない。チーム内でしのぎを削りあうトップクラスの選手をまとめ、常勝チームにする秘訣を聞いた。

「1つのチームを形成するというのは、様々な特殊性を抱える複雑なテーマです。それゆえ、私たち監督は大きな配慮を持たなくてはいけません。役割、個への期待とニーズ、相違点のすり合わせ、共有ビジョンの設定など。これらのコンセプトがチームや環境にフィットするような適切な雰囲気をつくるよう、最大限の努力をしています」

ウンブリアTVのシーズン後の番組で、今季でペルージャを去るレオン(今季までペルージャのキャプテンで、ポーランド代表の世界最強とも呼ばれるアウトサイドヒッター)がロレンツェッティ監督から言われたある言葉が胸に残っていると語っていた。それは、「DOVERE(ドヴェーレ= やらねば)」の代わりに「VOLERE(ヴォレーレ=したい)」を念頭に置くこと。それがやはり、ペルージャのような、また以前に監督が優勝に導いたモデナやトレンティーノのような強いチームを作るカギなのかもしれない。

「言語は行動になる、言葉は扉を開けることも閉めることもできる、と教えてもらいました。つまりは、言葉は行動になる、行動は自分自身を構築する、私たちは言葉を通じて在り方を変えることもできる、ということ。「やらねば」と「したい」の言葉の違いはコートの中だけでなく、私たちすべての人間の人生にとってとても重要なことなのです。ウィルフレド(レオン)がペルージャを去る時にこの教えを持ち帰ってくれるのなら、自分がした仕事に対して満足しますし、耳を傾けてくれた彼にも感謝します」(下に記事が続きます)

選手をかわいがるペルージャファン

プレーオフ4戦目でモンツァに詰めかけたペルージャファン(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)
プレーオフ4戦目でモンツァに詰めかけたペルージャファン(写真提供:SIR SUSA VIM PERUGIA)

今季のメンバーからはレオンなど5人がペルージャを去り、石川やミラノでチームメートだったロセルらが加入した。トッププレーヤー揃いは変わらない。特にアウトサイドヒッターは、セメニウク、プロトニツキという4冠に貢献した2人が残留した中に石川が入り、スタメンが注目されるところだ。しかしシルチ会長と同様、ロレンツェッティ監督もスタメンについての明言は避けた。

「これはチーム内をまずよく見てから話し合う問題ですので、今は私の考えは自分の内に秘めておきます。ペルージャに全員が揃った時に、それを話して共有したいと思います」

最後に、石川加入により激増する日本人ファンへのメッセージをお願いしたが、その一文目を目にした時、筆者の心が震えた。

「ユウキを誇りに思ってください」

そして、「これまでイタリアリーグで素晴らしい経験を積んだあなたたちのプレーヤーは、彼のその能力を最大限に生かせる、本当に偉大なチームの一員になるのです」とその理由を述べた。

「多くの日本人ファンの来場をパラ・バルトンでお待ちしています。私たちのホームアリーナの素晴らしい空気、そしてシル・スーサ・ヴィム・ペルージャのすべての選手をかわいがるファンの真骨頂を感じることができるでしょう」

応援する、支える、ではなく、COCCOLARE(コッコラーレ=かわいがる、なでなでする)という単語が使われたところに、イタリアでは、特にペルージャでは、選手とファンがとても近いだけでなく、もはや家族のような間柄であることが分かる。そんなペルージャで石川がどんな活躍を見せるのか、筆者もTVだけでなくリアルで観戦に行くのがさらに楽しみになった。

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