ハンドボール男子フランスリーグの強豪パリ・サン=ジェルマン(PSG)が4年連続で来日。東京・有明アリーナで2026年8月4日、5日、プレシーズンマッチが行われました。相手はジークスター東京、ネクスト日本代表で、両日ともに1万人を超える観客が詰めかけ、世界トップの技に酔いしれました。試合はいずれもパリ・サン=ジェルマンが勝利しています。
今年のPSGは速い

パリ・サン=ジェルマン(以下PSG)の来日はチームビルディングを兼ねています。例年だと日本の速い攻撃に対して、セットOFでじっくりと受けて立つ印象がありました。しかし今年は違います。初戦からエンジン全開で、走りでも相手を圧倒する勢いがありました。
初戦のジークスター東京戦では、試合開始から速攻、クイックスタートでアップテンポな展開に持ち込みます。司令塔のリュック・スタインズが、レフトバックのエロヒム・プランディからのリターンパスをもらって、速攻で切れ込みました。「例年は日本の速さに押されていたが、今年は走り負けなかった」と話すように、強くて速くて正確なプレーで主導権を握ります。
カラバティッチは特別なピヴォット

速攻で押したあとは、セットOFでピヴォットのルカ・カラバティッチにボールを集めます。スタインズは「ルカがスペシャルなピヴォットプレーヤーなのは、誰もが知っていること。今年は主力メンバーの入れ替わりが少なかったこともあり、チームのコンビネーションが例年より仕上がっている」と言います。開始10分足らずでPSGが8‐2とリードを奪いました。ジークスター東京の信太弘樹監督は「開始10分でほぼ勝負が決まってしまった。PSGの正確で無駄のないハンドボールに、こちらが引いてしまった」と、相手のクオリティを称えていました。
GKコラレス、手を下げて構える

後半に出てきて、興味深いキーピングを見せていたのが、PSGに復帰したGKロドリゴ・コラレスでした。大きな体を折り曲げて、両手を下におろした構えは、日本ではまず見られません。上に打たれたらどうするのかと聞いたところ、コラレスはゼスチャーを交えながら答えてくれました。
「手を下げていても、上にボールが来たらこう上げたらいい。僕は身長がゴールと同じ2m(正確には202㎝)あるから、対応できるんだ」
手を上げる動きは、手が体から離れない位置で上げているように見えました。ゴールと同じ2mあるGKだからできる駆け引きなのかもしれません。変則スタイルのキーピングで、相手シューターに「見慣れない景色」を作るベテランGKの活躍に、今後も要注目です。
スタインズ、日本で散髪

初戦は41-31でPSGが圧勝しました。上機嫌なスタインズは、頭を丸めた理由を「ステファン・マドセン監督と同じ髪型にしたんだ」と言って、笑いを取っていました。日本文化にも興味があるというスタインズ。日本に来て散髪をするなど、恒例となったジャパンツアーをエンジョイしているようです。
ネクスト日本代表が善戦

翌8月5日の日本代表ネクスト戦は、PSGがややメンバーを落としたこともあり、前半は17-15と接戦になりました。次世代の代表候補を集めたネクスト日本代表はスタートで、永森悠透(中央大学)、藤坂尚輝(大同フェニックス東海)、野尻雄偉(大崎オーソル埼玉)と、バックプレーヤーに右利きのカットインプレーヤー3枚を並べました。トニー・ジェローナ監督は「左利きのバックプレーヤーが少ないから、こういう布陣になった。大きい左利きのバックプレーヤーを募集しています」と、ジョークではぐらかしていました。2枚目DFを守れる左利きバックプレーヤーは、日本男子の課題です。
野尻雄偉が右から切れ込む

課題のポジションを任されたのが、昨季リーグHで得点王に輝いた野尻でした。「2枚目DFとライトバック、どちらも初めてのチャレンジでした。ライトバックではサイズがない分、1対1の横の動きで勝負しました。自分の強みは出せたと思います」と言うように、オープニングゴールはライトバックからの野尻のカットインでした。慣れない右側からカットインも違和感なく、左手に持ち替えて7mスローを獲得するなど、野尻らしさが随所に見られました。「トニーさんは細かい部分まで徹底しているから、チームとして、組織として戦うことができた」とも言っています。今回のネクストは例年以上に一体感があり、幅広い戦術にも対応できていました。
ハリス希生が示した将来性

ネクスト日本代表で最もインパクトを残したのが、中部大学2年生のハリス希生でした。「走りこんでのディスタンスシュートや身体能力がどこまで通用するのかチャレンジしました。チームでやることをやって得点を多く取れた(チーム最多の6得点)ので、チームで作り上げた得点です」と、手ごたえを感じていました。前半に決めたロングシュートは、最高到達点からさらに粘った「落ち際」のシュートに見えました。他にも3枚目DFを孤立させての1対1にステップシュートやラストのスカイプレーなど、一つひとつのシュートに世界で通用する可能性が感じられました。ハリスの憧れの選手は、かつてPSGにも在籍した、元フランス代表のダニエル・ナルシス。得点力以上に鉄壁のDFで評価されていたナルシスを見て育ったので、これからDF面でも成長が期待できそうです。
シプシャクを苦しめたネクスト日本代表

ほかにも南城魁星(中央大学)がDFで1対1をバチンと止めてフリースローを取ったり、GKの野津山翔(大同フェニックス東海)が連続セーブで会場を沸かせるなど、次世代のホープが活躍した試合でした。PSGの大型ピヴォット、カミル・シプシャクは「タフなDFをされたがオープンなスペースを見つけて得点できた。日本の選手は今後すばらしい選手になるだろうし、もっと強くなれる。将来はヨーロッパでプレーしてほしい」と、エールを送っていました。社交辞令はあるにせよ、身長207㎝のシプシャクを2人で挟んで止めるシーンもあるなど、ネクスト日本代表のハードワークが目につきました。
連日1万人を超す大観衆

試合は37-29で、パリ・サン=ジェルマンが貫禄を示しました。ネクスト日本代表の藤坂主将は「1万人のファンの前で、憧れの選手を目の前にして、100%の力をぶつけられる、とてもありがたい機会」と、大会の感想を語っていました。外国人選手のサイズにも戸惑うことなく、自分たちのプレーができたのは大きな収穫です。パリ・サン=ジェルマンとのプレシーズンマッチは、日本のレベルアップにつながっています。

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