米大リーグ・ドジャースの大谷翔平(30)が2024年11月21日(日本時間22日)、ナショナル・リーグのMVPに選ばれた。全米野球記者協会=Baseball Writers’ Association of America(BBWAA) 所属の30人の記者による実名投票で、全員が大谷に1位票を入れる「満票」での受賞。アメリカン・リーグのエンゼルスで投打の二刀流で活躍した昨シーズンも全会一致でMVPに選ばれている大谷は、150年以上の歴史がある大リーグ史上初めて「複数回の満票MVP」を受賞したプレーヤーになった。
「満票」は難しいと思ったが…
ドジャース移籍1年目。右ひじの手術の影響で今季の大谷は打者に専念し、本塁打王と打点王の2冠達成。史上初の50本塁打、50盗塁の「50-50」の偉業もやってのけ、ワールドシリーズも優勝したのだから、MVPは当然といえば当然だ。ただ、MVP確実だったとはいえ、果たして「満票」かどうかは、最後まで私は自信が持てなかった。
なぜなら、大谷は今シーズン、打撃と走塁以外は試合に参加せずに済む指名打者(DH=Designated Hitter)専任だったからだ。指名打者(DH)のMVP受賞はこれまで前例がない。
試合の大半の時間を割く守備をしなくていい、つまり「守備力不問」のプレーヤーをMVPに選ぶことに、異を唱える記者が1人、2人ぐらいはいるのでは?と私は予想していた。投票権があるのは球団がある両リーグ各15都市の記者2人ずつの計30人。日本メディアではドジャースの番記者、共同通信の白石明之記者の名前もあった。このなかには当然、地元びいきで担当チームの野手や投手を推す記者もいるだろうと踏んでいた。
しかし、それは杞憂だった。BBWAAのホームページで公開された記者投票は以下の通り。全員が、大谷の指名打者(DH)に特化した、そのずば抜けた打撃、走塁の成績を客観的に、総合的に評価する結果となった。個人的には少し意外な結果だった。
DHは暇?ゲームに夢中の外国人選手も
1846年の野球発祥からみると、指名打者(DH)の歴史は意外と浅い。1973年、大リーグのア・リーグで導入されたのが最初だ。まだ51年目。当時はいわゆる「投高打低」だったため、得点機会を増やして観客を楽しませる興行の一助としてDH制(指名打者制)が導入されたという。これにならい、やはりそのころ人気が低迷していた日本のパ・リーグでも、1975年にDH制を採用した。
DHは打って走る以外は試合に参加せずに済むから、言葉を選ばずに言えば、打席が回るまで時には1時間近く「暇」になることがある。「DHは試合中『半休』しているようなもの」という野球通もいた。かつてパ・リーグに在籍したDHの外国人選手のなかには、次の打席が回るまで任天堂のゲームをして暇つぶししていた選手もいて、その態度が問題視されたこともあった。
打撃と走塁。大谷はそれだけで圧倒的インパクトを残し、目の肥えた記者の評価を集め、今回のMVPを獲得した。MLB専門チャンネルのインタビューでは「ドジャースの代表として受け取った賞。みんなでつかみ取ったもの」と謙虚に喜んだ。昨シーズンの投・打二刀流とはまた、別次元の価値がある。指名打者(DH)のイメージを刷新し、その可能性を爆上げした。そんな大谷の2年連続3度目のMVPだった。
全米野球記者協会(BBWAA)のMVP投票 投票するのは球団がある両リーグ各15都市の記者2人ずつの計30人。投票はレギュラーシーズン終了後に締め切られる。そのため、プレーオフの成績は加味されず、参考外となる。投票権を持つ記者は実名、所属を明記し、まず、それぞれがMVPにふさわしいと思う選手上位10人を記入する。そのうえで、1位に14ポイント、2位9ポイント、3位以下は1ポイントずつ減っていき、10位は1ポイントで総合する。最も多いポイントを得た選手がMVPに選出され、どの記者が誰に投票したか内訳もすべて公表される。
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