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【観戦マナー】スポーツの現場に多い「禁止」「NG」「やめて」にうんざり

Pen&Sports編集長・原田亜紀夫コラム
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2025年もあと数日で終わります。私の近所の水道橋交差点付近には来年1月2日~3日に行われる箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の交通規制を告げる横断幕が例年通り掲げられました。正月はもうすぐそこだよ、と教えてくれます。

そしてクリスマスの2025年12月25日の読売新聞朝刊には「箱根駅伝を応援する皆様へ」という社告が社会面に掲載されました。主催の関東学生陸上競技連盟と共催の読売新聞社との連名で箱根駅伝の「観戦マナー」を呼びかけています。安全な競技運営のためには大事なことです。でも、これらを文字で読むと、いささかげんなりしてしまうのは私だけでしょうか。とにかく「〇〇はおやめください」「絶対にしないでください」などの「禁止事項」のオンパレードで、「応援」の気持ちが萎えるのです。

読売新聞の社告の要旨は以下の通りです。

①「車道での応援は危険です。(中略)手を出したり、体を出したりしないでください」
②「脚立を使っての応援はおやめください」
③「自動車や自転車など車両による応援は危険です。絶対におやめください」
④「ペットが車道に飛び出さないようにご配慮ください」
⓹「横断幕や旗などをガードレールや橋などの公共物にくくりつける行為は道路交通法に違反します」
⑥「コース周辺ではドローンなどの操縦・飛行、自撮り棒の使用はできません」

箱根駅伝公式サイトより
目次

リスクを回避したい主催者


私も新聞社の事業部門にいた時や、2021年東京五輪のホッケー会場の責任者だったころには、大会を運営する立場で、安全な競技運営の責任を負っていました。だから、〇〇はダメ、〇〇禁止、〇〇しないで、と当たり前のことでも言いたくなるのです。万一の場合、その責任が自分に降りかかるから。

例えば東京五輪の開催中、試合の放送、海外配信を担当していた外国人たちが時差の中、連日のハードワークで疲労困憊し、会場近くのベンチで寝たり、木にハンモックをつるして休んだりしていました。屋外の会場だったため、近くに休める場所はありません。ところが、公園の指定管理者から、会場運営責任者の私にクレームがあり、「ベンチで寝そべるのは禁止」「ハンモックは木々を傷つける可能性があるのでNG」だと私から注意してほしいといわれ、ためらったのを思い出します。

ボランティアへの「伝え方」にも苦慮しました。コロナ禍で東京五輪のほとんどの競技会場は「無観客」としたため、ボランティアが競技を「観戦」しているとクレームが来るとして、「運営は支えてほしいが、観戦はNG」というのが大会組織委員会のスタンスでした。活動の合間に、競技を観ているボランティアを締め出す方針のスタッフもいましたが、私は無償で競技を支えてくれたボランティアに「競技は観ないで」とは言えませんでした。

6回のオリンピック、数々の国際スポーツ大会の現場をみてきた経験から感じることがあります。日本はとにかく、いたるところに「禁止」「NG」事項が多い。これはスポーツの現場に限ったことではないかもしれません。そしてその伝え方も、高揚感や盛り上がりに水を差すような、残念な場合が多いということです。(下に記事が続きます)

オランダで見かけた「抑止力」のヒント


2025年12月、ハンドボールの女子世界選手権取材で訪れたオランダ・ロッテルダムの街角で「Smile! You are on Camera」との看板を何度か目にしてはっとさせられました。

「笑って!(監視)カメラに写っているよ」という意味ですが、これが「立小便」や「不法侵入」「強盗」などの抑止力になるのだと、バーの店主が教えてくれました。「立小便するな」「NO ENTRY(進入禁止)」などと直接的に訴えるよりも、ユーモアで人々の自尊心に訴えるアプローチは角が立たず、それなりの効果も見込めそうです。

ファンあってこそ、のスポーツの現場に多すぎのように思える「禁止」「NG」「やめて」の替わりに、こうしたコミュニケーションのアプローチが危機管理とエンタメを両立する一つのヒントにならないだろうかと考えをめぐらせています。

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