2025年6月13日(金)-15日(日)に東京の代々木第一体育館で行われる、リーグHのプレーオフ。女子は最終節までもつれた末に、プレーオフに出場する5チームが出揃いました。混戦模様のリーグH元年で初代女王の座をつかむのはどのチームか。各チームの特徴や今季の戦いぶりなどを紹介していきます。
プレーオフの仕組み
日本リーグからリーグHに変わり、プレーオフのシステムも変更されました。女子は11チーム中上位5チームが出場します。これまでの4チームから1枠増えました。初日(クオーターファイナル)は、4位と5位が対戦。2日目(セミファイナル)は4位と5位の勝者が1位と対戦し、反対の山では2位と3位が対戦します。最終日(ファイナル)はセミファイナルの勝者同士の対戦となります。
1位:ブルーサクヤ鹿児島

2024年12月の日本選手権決勝で、香川銀行にディスタンスシュートを打ち込まれたのを機に、DFをスケールアップ。笠泉里や青麗子を3枚目に入れて、大型化に成功しました。笠は前に被さり、ポストパスをカットするのが上手。青は攻撃ではピヴォットに入り、長いリーチを生かして高いところのパスをもぎ取ります。センターでは20歳の岩元侑莉の成長が著しく、刺激を受けた北ノ薗遼もできることの幅を広げています
戦力的には1番ですが、シーズンで2度ラティーダ琉球に星を落とすなど、盤石とは言い切れません。2024年5月のプレーオフ準決勝でも、オムロン(現熊本)相手に9-1とリードしながら、逆転負けを喫しました。日本選手権も含めて、節目の試合で勝ち切れていない印象があります。宋海林(ソン・ヘリム)ヘッドコーチは「私の現役時代(元広島メイプルレッズほか)から、ソニーは明るくて、能力の高い選手が揃っていた。でも実力の割には、大事な試合で勝てていない。そうならないように、普段の練習から厳しくしています」と言っていました。張素姫(チャン・ソヒ。元韓国代表で現富士大監督)が内定選手で大活躍した2010年以来となる、プレーオフ制覇を目指します。(下に記事が続きます)
2位:北國ハニービー石川

リーグ10連覇のディフェンディングチャンピオンですが、相澤菜月(チューリンガー/ドイツ)、中山佳穂(ツヴィッカウ/ドイツ)、永田美香(引退)のビッグ3が抜けた今季は、なかなか勝ち切ることができませんでした。シーズン途中から就任した河合辰弥ヘッドコーチは「勝ち癖をつけてからプレーオフに入りたい」と、リーグ3巡目はメンバーをほぼ固定して戦いました。5月18日のブルーサクヤ鹿児島戦では久々に「北國らしい」勝ち方で、プレーオフに向けて上り調子です。
加入早々にエースとなった大型左腕・石川空、本来はオールラウンダーでありながらセンター固定でがんばる松本ひかるの2人への負担が大きく、手札が少ないのが心配です。後半残り10分に出てきて、強いフィジカルでインパクトを残す辻野桃佳、シーズン前半は好調だった小柴夏輝など、若い力で追加点が取れれば、接戦を勝ち切れるでしょう。GK馬場敦子の素早いパス出しからの速攻を増やし、7mスローを犀藤菜穂が止めれば、北國の経験値がより生きるはずです。(下に記事が続きます)
3位:アランマーレ富山

開幕直前に横嶋彩が登録抹消。好調だった朴珉政が韓国に移籍。プレーの幅を広げていた檜木祐穂がケガと、得点源3枚を欠きながらも、3年連続のプレーオフ出場を決めました。福田丈ヘッドコーチは「課題は得点力。厳しいですよ」と言いながらも、次から次へと新戦力が出てくるあたりは、育成のシステムがしっかりしているから。2年目の酒井優貴子はフィジカル強化で、攻守に責任を背負えるセンターになりました。ライトバックにも高比良琉南、掛本梓乃が出てきて、いい仕事をしています。
まだプレーオフで勝ち星がないアランマーレですが、優勝するとしたらGKの大当たりが絶対条件になります。フレヤ・ハマーが長い手足でシュートコースを消し、ベンチから出てくる鈴木梨美が最初の1本を止めて流れを呼び込み、ビハインドの状況では笠野未奈のメリハリの効いたキーピングで試合をひっくり返す。3人の力を結集すれば、初タイトルが現実味を帯びてくるでしょう。GKの戦術的な交代は、アランマーレ最大の強みです。(下に記事が続きます)
4位:熊本ビューストピンディーズ

黄金期の中心選手だった洪廷昊(ホン・ジョンホ)ヘッドコーチが就任して1年目のシーズン。古きよきオムロン時代からの「厳しさ」に回帰する一方で、選手には「個の強さ」を求めて個人技を推奨するなど、独自のバランスでチーム作りを進めてきました。若い選手を積極的に起用し、GKの前田優、ピヴォット兼ライトバックの宮迫愛海、大型ライトウイングの阿久津祐子らが出場時間を伸ばしています。
勝負の札は多彩ですが、上位3チームと比べてやや見劣りするのがバックプレーヤーの決定力。2024年12月の日本選手権では、服部沙也加のロングシュートが止められた時点で、点数が止まりました。米澤綾美からピヴォットのグレイ クレア フランシスに落とす時間帯と、服部が9mの外から打ち込む時間帯を上手に使い分けながら、得点を重ねていきたいところです。1人で3人分ぐらい守ってボールを奪う、司令塔の須田希世子のハードワークも、2014年以来11年ぶりの優勝を目指す上で欠かせません。(下に記事が続きます)
5位:香川銀行シラソル香川

日本選手権初優勝に加え、最終節で勝利して初のプレーオフ進出を決めました。就任20年目の亀井好弘監督にとっては「夢をかなえた60歳」のシーズンでした。5月26日に誕生日を迎え、61歳になったプレーオフでも、勢いを持続できるでしょうか。リーグH(日本リーグ)に参入する前から、2対2をベースに丁寧なチーム作りをしてきた積み重ねが、今季は結果となって表れました。
日本選手権同様、GK下馬場燦が止めまくって、岡田彩愛、松浦未南、江本ひかるの「実質センター3枚」のバックプレーヤー陣が当たり続けたら、初出場初優勝の可能性が高まります。バックプレーヤーが厚く守られた時に、ライン際で石亀萌夏がスクリーンを張り、藤井愛子が裏のスペースに動くといった、ピヴォット陣の働きも重要です。ベストメンバーは文句なしに強く、安定感は抜群。ベンチメンバーですこしずつ上乗せできたら、3連戦を勝ち抜けるはず。今季限りで引退するキャプテン辛島美奈は、亀井監督との「記者会見(という名の漫談)」で見せ場を作ってくれるでしょう。(下に記事が続きます)
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