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【格闘技】空手✕柔道の総合武道「空道」復権へ。2026年国スポ公開競技に

寝技になり、上から絞め技、関節技を狙う青の選手=2025年11月のアジア選手権、大道塾提供
第4回アジア空道選手権で寝技になり、上から絞め技、関節技を狙う青の選手=2025年11月3日、東京都・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)
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 1990年代のキックボクシング系K-1や総合格闘技(MMA)の修斗、リングス、PRIDE等の第1次格闘技ブームの頃、そのリングで異彩を放った「大道塾」を覚えているだろうか。故東孝初代塾長が1981年創設。打撃系の空手と寝技を含めた組み技系の柔道を掛け合わせた技術は、一世を風びした。その後、プロ興行から離れて、「空道」という新しい競技名で活動してきたが、2026年秋の国民スポーツ大会(国スポ=開催地青森)でデモンストレーション競技に採用された。名うての格闘技団体が、再び脚光を浴びようとしている。

目次

第4回アジア選手権、ロシア選手も参加

女子220未満のクラスで準優勝したロシアのオレシア・セルゲエヴナ・ブルダコワ=2025年11月のアジア選手権で(提供:大道塾)
第4回アジア空道選手権・女子220以下のクラスで準優勝したロシアのオレシア・セルゲエヴナ・ブルダコワ=2025年11月3日、東京・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)

 文化の日の2025年11月3日。東京都渋谷区の国立代々木競技場第二体育館には日本を含めて7カ国・地域から51人の選手が集まり、男女8階級で第4回のアジア空道選手権が開催されていた。注目は今回特例の個人資格で参加が認められたロシアの選手たちだった。ウクライナ侵攻に伴い、国際スポーツ界から締め出されている同国選手に「政治とスポーツは別」との理念からチャンスを与えた形だった。

 様々な格闘技が盛んなロシアでは、空道も海外勢では最も普及が進み、実力がある。元々、同国を南北に走るウラル山脈から東側はアジア圏と見なされており、ウラジオストクでは同競技のアジアカップが開催されたことも。極東地区所属の選手に限定されていた特別参加は、各国にも違和感なく受け入れられたという。

 ロシア勢の代表でもある同国空道連盟のアナシキン・ロマン会長は、「本家である開催国の日本や国際空道連盟のお陰で今回、大会に参加できた。来日した男女の4選手は日本に来るのは初めて。空道が生まれた国に来ることができて、夢のような経験をしていると思う」と話した。

 男子は出場3選手中2選手が優勝。女子選手は決勝でワールドカップ王者の小野寺玲奈に敗れたものの、準優勝した。大会は11歳未満から19歳未満までの年齢別にも分かれた全日本ジュニア選手権と合わせての開催。会場では世界一流の技とスピードを堪能する観客や、憧れの選手に見入る子どもたちの歓声が響き渡った。(下に記事が続きます)

格闘空手から総合武道へ進化

顔面に防具は付けているが、フルコンタクト。白の選手の強烈な膝蹴りが決まる=2025年11月3日、東京・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)
顔面に防具は付けているが、フルコンタクト。白の選手の強烈な膝蹴りが決まる=2025年11月3日、東京・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)

 現役時代は「人間機関車」の異名を持ち、フルコンタクトの極真空手全日本王者だった故東塾長が、空手界の「顔面攻撃無しのルールは最強ではない」と極真空手を飛び出して、地元の仙台で始めたのが大道塾だ。当初は実力証明のために異種格闘技戦にも参戦していたが、エンターテインメント性を強調するプロとの認識の違いから方向を転換。「武道」としてアマチュアや青少年への普及に力を入れる中で本来の格闘空手から、投げ技や寝技、絞め技、関節技までの多彩な攻撃を認める総合武道の「空道」へと進化の道を歩んできた。

 頸椎や後頭部、ダウンした選手への攻撃等の反則行為を除けば、パンチ、キックだけでなく、事実上何でもありの競技だ。しかし、それはけんかではない。選手らには修行を通じて社会貢献を願う精神面の成長を図っているほか、「路上で、もしもの時に身を守るのに役に立つ格闘技」との位置付けで指導が進む。「最強」を目指してはいるものの、競技としては最も重要視しているのが安全面の確保。顔面への攻撃が認められているため、マウスピースや透明なシールドの着いた特性の顔面プロテクター、こぶしを守るフィストガード等も着用が義務付けられている。

 さらに試合を行うには、大会前14日以内に頭部への直接打撃やノックダウンのある空道や他競技への出場がないこと。90日以内に空道や他競技の試合、練習で頭部打撃によるノックダウンがないこと。また、同じ90日以内に交通事故、転倒等で頭部を打撃する事故にあっていないこと等も、参加必須条件になっている。(下に記事が続きます)

「身体指数」でクラス分け

投げ技もOK。柔道の払い腰に似た技で豪快に投げる白の選手==2025年11月3日、東京・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)
投げ技もOK。柔道の払い腰に似た技で豪快に投げる白の選手==2025年11月3日、東京・国立代々木競技場第二体育館で(提供:大道塾)

 他の様々な格闘技を取材してきたが、空道はルールが実によく考えられ、面白いと感じる。投げ技を仕掛ける場合に相手の道着を掴むのは10秒以内。選手には係員が声とジェスチャーで残りの秒数を知らせている。柔道のように組み合っても技を掛けない選手の場合だと、すぐに離される。寝技は3分の本戦で30秒ごと2回(女子は2分で30秒1回)。決着がつかない場合は延長、再延長もある。

 また、体格差が勝負に直結することが多い格闘技では、大相撲や柔道の全日本選手権等の無差別の試合を除くと、個人戦はほとんどが体重別で行われる。だが、空道は他に例をみない「身体指数」というクラス分けを実施している。これは身長(cm)と体重(kg)の数値を足してその値を階級制にするもので、例えば、17cm、75kgなら身体指数は「247」になる。

 これが男子の場合、230以下、240以下、250以下、260以下、260超(国際大会の場合は270以下、270超が加わる)とある。相手との距離感が大切な格闘技で、特に殴打系の場合は体重だけでなく手足の長さがプラスに働くことが多い。このため、同じ体重なら長身選手が有利だ。しかし、身体指数では階級が上がるため、背が高い分、体重は自分よりも重い選手と同じ階級で戦わなければならないという仕組みになっている。(下に記事が続きます)

創始者の死から4年、表舞台へ加速

空道の創始者である大道塾の故東孝初代塾長=大道塾提供
空道の創始者である大道塾の故東孝初代塾長=大道塾提供

 2001年の空道創設時に、故東塾長が掲げたのが将来のオリンピック参加だったという。全日本空道連盟と国際空道連盟も設立し、大道塾を両団体の事務局として下部組織化した。2012年に日本ワールドゲームズ協会に加盟。翌年の第9回ワールドゲームズ(コロンビア)にはエキジビション競技として初参加。そして2018年には2026年国民体育大会(現国スポ)へも同じエキジビションでの採用が決まった。まさに夢への実現に向けて表舞台を進み始めた直後の2021年、塾長が胃がんのために、他界した。71歳だった。

 あれから4年。27年に第7回世界選手権を開く国際連盟の加盟数は現在、55カ国・地域。日本国内では全国に約100の加盟団体(道場)がある。創始者の意を組み、新たな体制で始動した空道は国スポへの準備を加速させている。試合は今のところ、18歳未満、16歳未満が男女に分かれ、14歳未満が男女合同で、それぞれ3~6階級で行われる予定だ。出場者は来春、北海道、東北、関東、北信越、中部、関西、中四国、九州沖縄の8地区で予選会を行う。アマチュアに専念後は単独での大会開催で関係者と一部のファンのみが観戦してきた格闘技団体が、国内では初となる総合大会の舞台に立ち、そこでどんな試合ぶりを見せ、どんな評価を受けるのか。

 元世界王者で、国際空道連盟理事の東亮汰・大道塾総本部師範代は、この国スポ参加を創始者亡き後の競技発展の大きな弾みにしたいという。「バーチャル化が進む現代社会で心身の健全育成に寄与する空道が、広く社会に認知される貴重な機会だと思う。『何でもあり』とも言えるルールの中で、選手たちは礼節を忘れずに果敢に試合に挑む。その姿から魅力を感じていただければ、嬉しい。これが将来の国スポ正式採用の第一歩となってほしい」と意欲を見せている。

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コメント一覧 (1件)

  • 空道という初めて聞く格闘技でした。これからどのように世界に認知され、普及していくか楽しみです。
    確かにエンタメ的になるとどうしてもスター選手の存在が欠かせなかったり、長続きしないところがありますが、子どもたちの教育にいい影響に寄与できる様だと、武道として広がっていくといいと思います。

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