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【サッカー】鎌田大地が起こした164年目の奇跡 | クリスタル・パレス、FA杯制覇し史上初タイトル

FAカップで初優勝し、優勝カップを掲げるクリスタル・パレスの鎌田大地=2025年5月17日、写真:Osports Photos/アフロ
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サッカー日本代表MF鎌田大地が所属するクリスタル・パレスFCは5月17日、英国ロンドンで行われたFAカップ決勝戦でマンチェスター・シティを1-0で下し優勝した。クリスタル・パレスにとって創設164年目にして初のメジャータイトル。また、来季のヨーロッパリーグ(EL)出場権も獲得した。

先発フル出場した鎌田は、日本人として初めてFA杯で優勝し、その名をクラブの歴史に刻むことになった。サポーターの間で今後、永遠に語り継がれるであろう伝説的な試合を振り返る。

目次

世界最古の大会決勝で攻守の要を務めた鎌田

FAカップは、その名の通りイングランドサッカー協会(The FA)が主催する最も由緒正しいトーナメント大会だ。1871年にサッカーの母国で初めて開催された大会であり、世界最古の大会だ。日本の天皇杯のモデルにもなっている。

聖地ウェンブリー・スタジアムで行われた決勝は、ウィリアム皇太子も観戦した。観衆84,163人が見守る厳かな雰囲気のなかキックオフすると、鎌田は守備的MFとして中盤で絶妙なポジショニングをとり守備のブロックを形成。チーム全体が引きすぎないように、時折タイミングよく前方に寄せてボールを奪おうとする動きも見せつつ、守りながらも前線にパスを供給する役割を果たした。

スタンドには、ガレス・サウスゲート元イングランド代表監督やロイ・ホッジソン、スティーヴ・コッペル、アラン・スミスなどクリスタル・パレスの歴代監督も駆けつけて歴史の証人となった。(下に記事が続きます)

鎌田が決勝弾の起点に、乾坤一擲でジャイアントキリング

序盤に早くも試合が動く。ゴールキックからDFラインでパスをつないだクリスタル・パレスはDFクリス・リチャーズが前線にロングフィード。

FWジャン=フィリップ・マテタが競って落としたボールを鎌田が倒れながらも右足ダイレクトで正確なパスを前方に返すとマテタが右サイドにボールを散らす。そのボールに走り込んだウイングバックのダニエル・ムニョスがドリブルから上げたクロスをエベレチ・エゼが右足ワンタッチボレー。16分に伏兵クリスタル・パレスがまさかの先制点。

しかし、これが生き地獄の始まりだった。劣勢のチームがスコアレスのまま耐え凌いで試合終盤にカウンター攻撃で1ゴールを決めて勝つゲームプランは一般的だ。しかし、幸か不幸か、早い時間帯で先制したため、たっぷりとある試合の残り時間に、マンチェスター・シティの怒涛の攻撃を受け続けることになった。

78分にはCKでアーリング・ハーランドのクリアボールを鎌田が胸トラップから右足ロングシュートもわずかに枠を外れる。

マンチェスター・シティが最後の力を振り絞って同点弾を目指す終盤の86分に鎌田は2度のインターセプトで相手のボールを奪い、クリスタル・パレスがボールを支配するリズムを演出し、攻めたいシティを苛つかせた。

そして見事にそのままリードを維持し、勝利をものにした。1990年と2016年のFAカップ決勝でマンチェスター・ユナイテッドに敗れたクリスタル・パレスにとって、3度目の正直だ。(下に記事が続きます)

忍耐の賜物、鎌田もチームもクラブも耐えに耐えた

2024-2025シーズンは、鎌田にとってプレミア初挑戦の年であり、適応するのに時間を要して出場機会に恵まれない時期もあり決して順風満帆ではなかった。しかし、この決勝戦ではチームの重要な役割を果たした。

この試合でも耐える時間帯が長く、シーズンでも辛抱の時期が続いた。しかし、終わり良ければ全て良し。有終の美を飾った。

思えば、日本代表でもW杯出場を決めたバーレーン戦で鎌田は先制点を決めた。強心臓で重要な試合、重要な局面で仕事をする頼もしい選手だ。

クリスタル・パレスは耐え、鎌田も耐えた。そして奇跡は訪れた。

表彰式でクリスタル・パレスのフラッグを首に巻いてマントにした鎌田は、まるでスーパーマンのようだった。(下に記事が続きます)

3倍超の年俸格差を覆す

クリスタル・パレスとマンチェスター・シティのデータを見ると「ボールポゼッション22%:78%」、シュート数「7本:23本」、枠内シュート「2本:6本」と、すべてがマンチェスター・シティ優勢に傾いた一方的な内容だった。

クリスタル・パレスと比較してリーグ最高のマンチェスター・シティの予算規模(2022-2023、デロイト調べ)は、人件費が1億3100万ポンド(約252億2200万円)に対して4億2300万ポンド(約814億4200万円)で3.2倍。

収益では、1億3100万ポンド(約252億2200万円)に対して7億1800万ポンド(約1382億4000万円)で4倍。

同じプレミアリーグのクラブでも月とスッポンほどの差がある。しかし、その格差を覆して番狂わせを起こすことができるのがサッカーの醍醐味だ。

影の立役者はGKヘンダーソン、神の手で完封

クリスタル・パレスのイングランド代表GKディーン・ヘンダーソンは、24分にペナルティエリアのわずかに外で右手でボールを弾いたように見えたが笛は鳴らず。VARもマンチェスター・シティFWアーリング・ハーランドの進行方向がゴールから遠ざかっていったため、明確な得点機ではないとしてVARの介入がなされなかった。

「キックすればいいのにと思った。VARの介入がないように祈ったが、うまくいった」とクリスタル・パレスのオリヴァー・グラスナー監督。

伏線はあった。8分にロングボールをキャッチして、そのままの勢いで体ごとゴールラインを割るという珍プレーを見せていた。疑惑のハンドで俄然、注目を集め始めたヘンダーソンは、同じ右手でスーパーセーブを連発。

33分には、ドリブルでペナルティエリア内に侵入したベルナルド・シウバに対してタイリック・ミッチェルがスライディングタックルするとPKの判定。そのPKを36分にオマル・マーモウシュが蹴るも、GKヘンダーソンが右に横っ飛びして右手1本で弾く。するとスタンドからは、どっと大歓声が上がった。

43分にはジェレミー・ドクが枠の隅を狙って巻いたシュートを左手で弾くと、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は頭を抱えた。(下に記事が続きます)

予感的中、幸せな瞬間をもたらしたのが最大の成功

クリスタル・パレスには運が味方したが、その運を手ぐりよせるだけの何かがそこには確かにあった。試合後の記者会見では歴史的な試合にふさわしい名台詞も飛び出した。

クリスタル・パレスのオリヴァー・グラスナー監督コメント:今日はクリスタル・パレスの日だった。無いスペースを見つけ出してチャンスを作り完封した。信じられない試合だ。シティはとてつもなく強かった。試合全体を通じてだが、1-0でリードすると、シティはとてつもないプレッシャーをかけてきた。守備するのは、とても難しく忍耐が必要だったが、効果的に得点できた。ウェンブリーは特別なスタジアムで、半分はパレスのファンが、もう半分はシティのファンが入場した。試合はとてもタフで、ハーフタイムにどうしたら解決策が見つかるか話していた。ヨーロッパリーグでフランクフルトが優勝するとは誰も思っていなかった。比較するのは難しいが、誰もクリスタル・パレスがFAカップで優勝するとは思っていなかった。最初の8試合で勝点3しか取れなかった。最近も大量失点の連敗があった。しかし、サポーターは常に支えてくれた。これは特別な絆だ。厳しい時にこそ助けが必要。辛いときに蹴飛ばすのではなく抱きしめてくれた。クラブそしてサポーターにとって特別な勝利だ。私は神でも占い師でもないがシーズンを通じて、この選手たちは物凄いことを成し遂げるんじゃないかという予感がしていた。素晴らしいタレント、個性がいて、士気が高く一致団結していた。不可能を可能にする最高の雰囲気があった。最大の成功はトロフィーを掲げることではない。最大の偉業とは南ロンドンの数万人のファンの人生に一切合切を忘れて幸せになれる瞬間をもたらすことだ。それがスポーツにできる最高のこと。我々は、それを成し遂げたんだ。この成功に力を貸してくれた皆は、誇りに思ってほしい。私もじわじわとパーティーモードになってきた。喜ぶあまりに、羽目を外してしまわないように気をつけたい。

負けっぷりもあっぱれのグアルディオラ「リズムつくれなかった」

マンチェスター・シティは2年連続でFAカップ準優勝となった。2024-25シーズンの初タイトル獲得はならなかったがグアルディオラ監督は、表彰式ではピッチに残りクリスタル・パレスを祝福し続けた。

疑惑の判定がありながら、全く不快な態度は見せず、祝賀ムードに水を差すことは一切しなかった。強いグアルディオラも見事だが、負けっぷりもあっぱれ。最高のスポーツ精神を見せた。

マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督コメント:クリスタル・パレスのクラブ史上初のFAカップ優勝、おめでとうございます。彼らは守備がしっかりしていた。我々はトランジションをコントロールし、たくさんチャンスをつくった。VARについては、審判に聞いてほしい。彼らと話す機会はなかった。私にVARや審判のことは聞かないでほしい。日柄もよく両チームの観客が入ったウェンブリーは最高の舞台。我々はここで勝つためにプレーした。しかし、リズムがつくれなかった。非常に落胆している。選手たちは全力を尽くした。あれだけチャンスをつくった。しかし、これは得点を決める競技で、我々はスコアできなかった。

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