パリ五輪・パラリンピックが閉幕し、4年後の2028年夏季大会は米・ロサンゼルスで開かれる。その次の2032年はオーストラリアのブリスベン大会だ。ここまでの開催地は決まっている。
気になるのは、さらにその次。いまから12年後の2036年夏季五輪の開催地だ。2036年夏季五輪の開催都市は、正式に立候補を表明した都市のなかから来年2025年に開かれる国際オリンピック委員会総会(IOC総会)で決まる予定だ。111人いるIOC委員(会長、立候補都市があるNOC選出委員などを除く)の投票によって決定するが、私がパリ五輪取材中に接触したあるIOC委員が「先頭はおそらくあの国だ。ほぼ確実だろう」と語った国がある。
「二桁の国が関心」の報道が表向きだが
すばり、インドだ。2023年半ばに中国を抜いて世界最多の人口14億人を突破した。GDP(国内総生産)でも、インドは2025年までに日本を上回ると予測されており、世界5位に躍進する見通しという。
2036年の夏季五輪開催地をめぐってはインドのほか、インドネシア、ポーランド、トルコなどが招致に乗り出す意向を表明しており、さらにエジプト、ドイツ、中国、カタール、韓国、チリ、ハンガリーなど二桁にのぼる国(都市)が招致に関心を示している(メキシコはすでに撤退)というのが、マスコミで表向きに報じられている内容だ。
しかし、水面下では着々と根回しや調整が進められていて、公にはまだスタートすらしていない招致レースで、すでに最有力なのがインドだというのが、そのIOC委員の見立てだった。(下に記事が続きます)
「2036年アーメダバード五輪」か
転機となったのは昨年2023年10月14日にインド・ムンバイで開かれたIOC総会。インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相がIOC委員たちの前で直接、「2036夏季五輪招致を目指す。五輪開催に向け全力を尽くす」と表明したことだった。
モディ首相はそのムンバイでのIOC総会で2028年ロサンゼルス五輪で採用されることが決まったクリケット、欧州で人気のホッケーのワールドカップ(W杯)など世界的なイベントをすでに開催し、その能力を備えていると強調した。地元紙はモディ首相の招致表明に際し、「インドは地元文化を象徴するソフトパワーの手段としてヨガを五輪プログラムに組み入れたいと考えている」などと具体的に報じた。
開催都市についてモディ首相はまだ明言していないが、首相の地元でもある西部グジャラート州が候補に挙がる。13万2千人収容の世界最大規模で首相の名を冠したナレンドラ・モディ・スタジアムがある同州最大の都市、アーメダバードが念頭にある。人口約635万人。グジャラート州は工業化が進むインド屈指の豊かな州で、唯一の禁酒州でもある。
モディ首相が「14億人の夢」と話す五輪招致が決定すれば、インドとしては初。アジアでは日本(1964年と2021年)、韓国(1988年)、中国(2008年)に続き、4か国目の夏季五輪開催国となる。Pen&Sports の独自取材によるIOC委員の見立て「2036年アーメダバード五輪」が現実のものとなるのか。今後の推移を注視していく。
Pen&Sports [ペンスポ]
編集長 原田 亜紀夫
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