ハンドボール女子日本代表(おりひめジャパン)は2023年11月29日に開幕する第26回女子世界選手権(デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3カ国共催)に出場する。日本ハンドボール協会はこのほど、代表メンバー20名を発表。楠本繁雄監督体制では2度目の世界選手権で、前回大会の11位よりも上の順位を狙う。ハンドボールライターでペンスポコラムニストの久保弘毅が、メンバー紹介と世界選手権を展望する。
【展望】日本は独・ポーランド・イランと同組
32カ国が参加する世界選手権は4カ国ずつ8つのグループに分かれ、予選ラウンドを戦います。日本はドイツ、ポーランド、イランと同じグループFに入りました。4カ国中3カ国が次のメインラウンドに出場します。2年前の世界選手権の順位で見るとドイツ7位、日本11位、ポーランド15位、イラン31位。メインラウンドへ行くには、イラン戦を確実に取っておく必要があります。ドイツは格上。ポーランドは前回の順位こそ日本より下ですが、互角かやや上の力があると思っていいでしょう。欧州勢の実力はあなどれません。
予選ラウンドの勝敗が、次のメインラウンドへ持ち越されるので、準々決勝へ行くにはできれば予選ラウンド1位で通過しておきたいところ。各グループの予想はIHF(国際ハンドボール連盟)の大会ページに出ています。
史上初の準々決勝進出を
準々決勝までくれば、どこの国も実力は紙一重です。たとえば前回4位のスペインですが、積極的に前に仕掛けるDFのため、日本が裏のスペースを取りやすいこともあり、日本ースペインはいつも僅差になるイメージがあります。実力差だけでなく、プレースタイルによる相性なども影響しそうです。
世界選手権の優勝国にはパリ五輪の出場権が与えられます。2~7位の国には世界最終予選の出場権が与えられます。日本にいきなり優勝を求めるのは酷なので、まずは史上初の準々決勝進出を目指してほしいですね。7位までに入っておけば、来年の世界最終予選の組分けでも有利になります。頑張れおりひめジャパン。
1:亀谷 さくら(ブザンソン / フランス)GK
ワールドクラスのGKさくら。ダイナミックなキーピングで流れを呼び込んでくれるでしょう。ヨーロッパのシューターを肌で感じているのも強み。世界選手権で30%以上シュートを阻止してくれたら、日本の上位進出が見えてきます。
2:永田 美香(北國銀行)PV
2023年9、10月の杭州アジア大会には参加しませんでしたが、世界選手権ではメンバーに復帰。世界と戦ううえで、永田のサイズ、機動力は欠かせません。もう一度気持ちを整えて、シンプルに自分のよさを発揮してくれたら。
3:佐原 奈生子(北國銀行)PV
何度も言いますが、対アジアより対ヨーロッパで力を発揮する選手。楠本繁生監督が就任した直後の2021年世界選手権では、DFからの速攻で大活躍。「奈生子はここまでできるんだ」と、チームメイトを驚かせました。
4:初見 実椰子(三重バイオレットアイリス)PV
非常にクレバーで、どんなときにも楠本監督の求める役割に応えてくれます。本人も自覚しているように、よくも悪くも「人に合わせるのがうまい」選手。自分から発信できる強さを、世界選手権の舞台で見せてほしいところです。
6:北原 佑美(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)LB
守備型のバックプレーヤーで、3枚目の貴重なバックアップ。フットワークがよくて、クレバーな守りは、チームに落ち着きをもたらします。攻撃力がない訳ではないので、流れのなかで1本決めてくれたら言うことなし。
7:服部 沙紀(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)RW
国内、対アジア、対ヨーロッパ、どこが相手でも7割決めてくれるフィニッシャー。初出場だった2年前の世界選手権でもシュート率7割を叩き出しました。服部という強みをチーム全体で生かしていけたら、日本の点数が伸びるでしょう。
9:笠井 千香子(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)PV キャプテン
今年8月のパリ五輪予選で株を上げたピヴォット。いい位置を取ってのスクリーンもありつつ、DFを押し込んでからスッと動き出す「離れ際」の感覚が抜群です。元々がセンターなので、ピヴォットでもパスをつなげる展開力もあります。
12:馬場 敦子(北國銀行)GK
杭州アジア大会で韓国に大勝した立役者。馬場がシュートを止めて、素早いパス出しにつなげられたら、シンプルな得点が増えます。前回の世界選手権は悔しい思いをしましたが、最後の試合で感覚をつかんでいるはずなので、今大会ではリベンジを。
13:中山 佳穂(北國銀行)RB
10月の国体でケガをして以降大事を取っていますが、世界選手権では中山のロングシュートが欠かせません。長い腕をありえないくらいにしならせて、インに回り込んで強く打ち込みます。アウトスペースを割るカットインも上手。
15:笠 泉里(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)LW
サイズのある守備型のレフトウイングです。所属では3枚目のDFを任されるなど、守れて走れる特性を評価されています。打点の高いシュートも含めて、国際レベルで通用しそうな武器を持っています。
18:松本 ひかる(北國銀行)LW
ベンチ入り16人に必ず入れておきたい応急処置要員。GK以外の全ポジションで力を発揮し、苦しい時間帯の「やりくり」を陰で支えます。本職のレフトウイングからの精度も高く、前回大会ではシュート率が7割越えでした。
20:秋山 なつみ(キスヴァルダ / ハンガリー)RW
所属との兼ね合いもありパリ五輪予選は不参加でしたが、世界選手権では現地で合流予定。堅実なサイドシュートに守備力、さらには人懐っこい性格でチームに貢献してくれたら。ハンガリーで揉まれて、精神的に強くなった部分を見せてほしいですね。
22:犀藤 菜穂(北國銀行)GK
遅咲きのGK。パリ五輪予選で自信をつけて、表情にも強さが出てきました。ハイコーナー(ゴールの上の隅)に手が届くから、国際レベルのロングシュートにも対応可能。対ヨーロッパで出番が増えそうな予感。
23:相澤 菜月(北國銀行)CB
日本の絶対的司令塔。打ててさばけて切れ込めて、アジアレベルではOFの判断にほぼ間違いがありません。このクオリティを世界でも維持できたら、きっとヨーロッパからのオファーが殺到するでしょう。和製オフテダル(ノルウェーの名センター)の本領発揮に期待。
24:岡田 彩愛(香川銀行)CB
得点力のあるセンターで、自らの得点で攻撃のリズムを作ります。ミドルシュートを決める力もありますが、カットインを多くした「国際仕様」のゲームメイクを今大会で覚えてほしいところ。それができればインパクトを残せるはずです。
32:佐々木 春乃(ドルトムント / ドイツ)LB
攻守に重責を担ったパリ五輪予選。やはり日本のレフトバックは佐々木しかいません。世界選手権では守りの負担が減りそうなので、得意の攻撃面に集中できるでしょう。彼女のディスタンスシュートが入れば、日本の攻撃のバランスが整います。
49:藤原 ひなた(筑波大)LB
地肩の強い大学生。エースポジションのバックアップという位置づけですが、シンプルに強い選手なので、国際大会向きの可能性を感じます。余計なことをせず、自分にできることだけに集中すれば、今大会でブレイクする可能性も。
50:外口 若奈(筑波大)RB
これからに期待の左利き。筑波大ではライトバックとライトウイングの2ポジションを掛け持ちでプレーしています。ウイングから回り込んでのロングシュートは、純正のウイングにはない強みです。
51:吉留 有紀(北國銀行)LW
左の2枚目のDFに入り、1枚目にいる相澤の盾となります。相手が嫌がる間合いからの巧みな牽制が持ち味。パスカットからの速攻で流れを呼び込みます。セットOFでレフトウイングから飛び込む勇気が出てくれば、ワンランク上の選手になれるでしょう。
89:石川 空(大阪体育大)RB
インカレ10連覇から休む間もなく、日本代表に合流。次代を担う大型左腕は大舞台に強く、プレッシャーにも動じません。9mの外からのロングシュートを狙いつつ、打つ以外の選択肢も常に視野に入れてプレーできる選手です。姉はイズミの石川紗衣。
ペンスポニュースレター(無料)に登録ください
スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]ではニュースレター(メルマガ)を発行しています。ペンスポの更新情報やイベントのご案内など、編集部からスポーツの躍動と元気の素を送ります。下記のフォームにメールアドレスを記入して、ぜひ登録ください。
\ 感想をお寄せください /