第76回日本ハンドボール選手権女子の部決勝は2024年12月22日、福井県あわら市のトリムパークかなづで行われました。この試合で香川銀行シラソル香川が34-27でソニーセミコンダクタマニュファクチャリングブルーサクヤ鹿児島を下し、初優勝を成し遂げました。MVPにはこの日15得点の新人・松浦未南が選ばれています。
初タイトルか6年ぶりか
香川銀行は準々決勝で、大会6連覇を狙う北國ハニービー石川に勝ちました。準決勝では7mスローコンテストの末にアランマーレ富山を振り切って、初の決勝に駒を進めました。一方のブルーサクヤ鹿児島は、準決勝で難敵・大阪体育大学を下しての決勝進出。川村杏奈のステップシュートが冴えまくった2018年以来、6年ぶりの日本選手権のタイトルを目指します。
決勝の審判は村田哲郎・古川英樹ペア。国内で最も安定感のある2人の笛で、女子のファイナルが始まりました。
前半5分:香川銀行早々にタイムアウト
立ち上がりは完全にブルーサクヤ鹿児島のペース。伊地知愛妃、北之薗遼、金城ありさの3人が、積極的に間を割ってきました。準決勝の大阪体育大戦同様、ブルーサクヤのバックプレーヤー陣は好調です。対する香川銀行は前日の疲れが残っているのか、ディフェンスの足が動きません。「試合前のアップから、体が重かった」と言う選手もいたように、試合の入りでややもたつきました。前半5分2-6となったところで、香川銀行の亀井好弘監督が早くもタイムアウトを取りました。
前半15分:堅守速攻、香川銀行が逆転
タイムアウト明けに新人のセンター松浦未南がこぼれ球を拾って1点を返すと、香川銀行は本来のペースを取り戻します。立石恋菜、和田薫の3枚目を軸に、ディフェンスが安定してきました。守れると速攻も増えてきます。11分には西川千華のパスカットからの速攻を松浦が決めるなど、香川銀行が10分間で5連取して7-6と逆転しました。ブルーサクヤ鹿児島の宋海林(ソン・ヘリム)ヘッドコーチは「前半の10分ほど無得点だった時間帯が痛かった」と悔やんでいました。
立石とGK下馬場のコミュニケーション
その後ブルーサクヤが17分のタイムアウト明けに連続得点で9-9としますが、直後に香川銀行が4連取。13-9と突き放します。藤井のエンプティゴールや、和田のパスカットからの速攻など、GKの手を煩わせることなく、守りから速攻につなげていました。GKの下馬場燦とDFの要・立石とがよく話し合い、勝負どころを絞れていたからでしょう。立石は「(GKの)下馬場は『今日はあまり活躍できなかった』と納得していませんでしたけど、『そんなに欲張らなくていいよ』と言っておきました。『ここはお願い!』ってGKに任せたシュートは、確実に捕ってくれましたから」と笑顔でした。準々決勝、準決勝は、退場者が出た時間帯などでGK下馬場が大当たりしました。決勝はディフェンスが崩れなかったので、GK下馬場に頼るまでもなく、安定した試合運びができました。香川銀行が勝てるチームになってきた証拠と言えます。
前半27分:青の7mスローが決まる
前半27分、5点差を追いかけるブルーサクヤ鹿児島は、青麗子の7メートルスローで1点を返します。ケガで出遅れていた青は、日本選手権から実戦復帰を果たしましたが、準々決勝、準決勝ともに7メートルスローを外していました。「三度目の正直」と誓った決勝では有言実行。2試合分の借りを返しました。青のサイズ、打点の高いシュート、賢さは、やはりチームに欠かせません。
青の1点が起爆剤になるかと思われたのですが、直後に香川銀行が連続得点を挙げ、前半は18-12で終了しています。
後半6分:江本が連続得点
後半に入っても香川銀行の勢いは止まりません。後半の立ち上がり10分ほどは、ライトバックの江本ひかるの得点が目立ちました。エースの岡田彩愛がいて、センターの松浦が絶好調となると、相手は右利きライトバックの江本に打たせるよう仕向けてきます。しかし江本は「私のところで勝負されるのはわかっていたから、逃げずに前を狙いました」と強気でした。
江本は中堅どころとの対戦では「いい仕事」をする選手でしたが、上位勢が相手となると、やや得点が止まる傾向がありました。亀井監督も「上位に勝つには、江本がどれだけ点を取れるか」と、課題のひとつに挙げていました。この日の江本は5/7の高確率。6得点のライトウイング西川とともに、懸案だった右側の得点が大きく改善されたことで、香川銀行はスキのないチームに生まれ変わりました。
後半16分:松浦のシュートで10点差に
後半16分に松浦の引っ張り(右利きの松浦から見て左側)へのシュートが決まり、26-16。ついに10点差がつきました。この日は松浦が最後まで止まりませんでした。松浦が言うには「最初の1本が入ってくれたから、自信を持って打つことができました」とのこと。前半の早い段階で、ブルーサクヤの3枚目の上から打ち込めたから、試合を優位に進めることができました。ブルーサクヤの泣きどころは3枚目のサイズ不足。小柄な松浦に上から打ち込まれたことで、ライン際をピヴォットの藤井愛子にやられたり、ライトバックの江本にも打ち込まれたりと、後手に回ってしまいました。「効いている攻めは、相手が対応するまでやり続ける」という松浦が、この日は「自分が打つ」選択肢を最後まで押し通した結果、15得点でMVPに選ばれました。
後半22分:岩元がポストパス
終始劣勢だったブルーサクヤ鹿児島の見せ場は後半22分でした。センターの岩元侑莉とピヴォットの笠井千香子がポジションチェンジ。笠井が展開力を見せたあとにもう一度ライン際に戻って、スライドしました。そこを見逃さずに岩元がポストパスを落として、笠井のポストシュートを引き出しました。2人のよさが凝縮されたコンビネーションでした。新人の岩元はまだ20歳になったばかりなのに、ピヴォットを視野に入れながらの判断ができています。課題だったアウト割りもできるようになるなど、1年目からリーグHのレベルに順応しています。将来は日本を代表する司令塔になれる選手です。
OGの頑張り実る
最終スコアは34-27。香川銀行が最後まで危なげない試合運びで勝利し、日本選手権初優勝を手にしました。かつてはジャパンオープンで13連覇の大記録を打ち立てたにもかかわらず、後発のチームが続々と日本リーグ(現在のリーグH)に参入していく姿を見て、亀井監督は「どうしたら日本リーグに入れるんやろ」と嘆いていました。風向きが大きく変わったのが2022年。亀井監督の願い続けていた日本リーグ参入が決まり、力のある選手が入ってくるようになりました。優勝後の取材では、耐え忍んだ時代を振り返り、亀井監督が言葉を詰まらせる場面もありました。良質なハンドボールを続けてきた亀井監督とともに、チームを支えてきた歴代OGの頑張りがあったから、今回の優勝があったと言えるでしょう。
年明けから始まるリーグHへ向けては「もっと選手層を厚くしていきたい」と、亀井監督は言います。今大会は松浦、藤井、西川と「データの少ない選手」が、短期決戦で活躍しました。厳しくマークされるであろう年明け以降が勝負です。今回の優勝で自信をつけた香川銀行シラソル香川が、次なる目標である「プレーオフ初出場」を実現できるか。来年のリーグHでの戦いが楽しみです。
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