ハンドボール・堺リエゾン大阪のリーグH参入決定お披露目会が2025年9月27日、大阪府堺市の大浜だいしんアリーナ(堺市立大浜体育館)でありました。リーグH入りを果たした堺リエゾン大阪は、2025年度は11月1日から始まるチャレンジ・ゲームズに参戦。2026年度からはリーグHのレギュラーシーズンをフルに戦います。
選手3人からスタート

堺リエゾン大阪の運営会社「TeToTe」は2021年に創設されました。2023年からは「堺リエゾン大阪」として再スタート。湧永製薬(現・安芸高田わくながハンドボールクラブ)や日本代表でも活躍した玉村健次監督を初代監督に招きました。
玉村監督は日本歴代屈指のサウスポーで、1988年のソウル五輪にも出場しました。日本リーグ(現在のリーグH)通算601得点。シュート技術には強いこだわりを持っています。引退後はU-19、U-21日本代表監督を務めたのち、湧永製薬の監督に就任。2012年の全日本総合(現在の日本選手権)では日本一になりました。
現場復帰を熱望していた玉村監督は、堺リエゾン大阪からのオファーを二つ返事で引き受けましたが、就任当初の選手はわずか3名。「俺はなんてチームを引き受けたんだ」と、頭を抱えたそうです。(下に記事が続きます)
矢田路人、すべて背負う

堺リエゾン大阪は2024年8月の社会人選手権に、初めて出場しました。この時は開催地の福井から選手を借りて、ベンチ入り10名で戦いました。チームの核になるのは、湧永製薬から移籍してきた矢田路人。「新しいチームが日本リーグに入れるよう、お手伝いです」と言っていましたが、ゲームを作って、点を取って、3枚目を守ってと、孤軍奮闘の活躍ぶり。対戦した日本リーグ勢から「矢田って、湧永の時よりうまくなってないか?」と言われるくらい、伸びやかにプレーしていました。一人で背負い過ぎて苦しんでいた湧永時代と違って、吹っ切れた感じがありました。
身長213cm、アントン・ホッグ・ローセン

矢田と並ぶもう一人の目玉は、身長213㎝のデンマーク人、アントン・ホッグ・ローセンでした。日本では見たことのない長身が武器のアントンは、気さくな人柄で人気者でした。ただ体力がないため、バックプレーヤーで疲れたら、すぐにライン際に切ってピヴォットになろうとしていました。チームとしてはレフトバックからのロングシュートに期待していたのですが…。 (下に記事が続きます)
2025年社会人選手権で手ごたえ

それから1年。2025年7月の社会人選手権にも、堺リエゾン大阪が出てきました。リーグH参入が承認されて、11月のチャレンジ・ゲームズを見据えての戦いです。アントンは家庭の事情で引退しましたが、ベンチ入り選手は14人になり、関西の大学から有望な選手が加わりました。
大会の結果は6チーム中5位。初戦はレッドトルネード佐賀の速さに圧倒されて、19-39と大敗でした。2戦目のトヨタ自動車東日本レガロッソ宮城では、相手の4:2DFを上手に攻略する場面も見られ、32-37と健闘しました。最終戦では、豊田合成OBチームのアブレイズに36-33で勝ち、力がついてきたことを証明しました。玉村監督の言葉からも手ごたえが感じられました。
「矢田とキャプテンの土田航平、長谷川隆太の上3枚が得点源。彼らが点を取れば、DFが前に出てくる。そうなったら裏のスペースをピヴォットの野々下敦己、加藤大晟が走る。もしくはパラレルで展開して、最後は小池凜と江藤辰紀の両ウイングで仕留める。ウチの両ウイングはいいからね」
GK林優尊、リエゾンの宝

DFに関しては、大阪体育大学時代に日本代表に選ばれたこともある、GKの林優尊を軸に組み立てていきます。
「林はウチの宝です。彼を中心にDFを固めていきたい。せっかくいいGKが入ってくれたんで、DFと連携してシュートを捕れるようにしたい。湧永製薬時代と同様、『山脈』を作りたいな。真ん中を守れる、サイズのあるディフェンダーがほしい」
3枚目を守れる選手がケガや失格でいなくなり、矢田を3枚目に起用する「非常事態」はなるべく避けたいところです。(下に記事が続きます)
個の強い若手も増えた

選手層は厚くなったものの、やはり矢田は「替えの効かない存在」です。ですが矢田は「そんなことないですよ」と言っていました。
「僕の代わりはいる。誰でもできる。個の強い子が集まったんで、新人でも自分の意見が言える。まだ経験が少ないから、思考力、判断力は成長途上ですが、頼もしいですよ。課題は先発メンバーとセカンドメンバーの差。そこを埋めていかないと」
キャプテン土田航平は、リーグの厳しさを知る男

矢田とともに若いチームを落ち着かせるのが、29歳のキャプテン土田です。トライスター東京、ジークスター東京でプレーしたのち、教員免許を取るために大学に通い直していましたが、リエゾンで現役復帰しました。
「ジークを辞める時は自分から『辞めます』と言ったし、もうハンドボールはいいかなと思っていたけど、自分のなかにくすぶっていた気持ちもあって、このままじゃ終わりたくないと思って、リエゾンに加わりました」
「初戦のレットル戦は、久しぶりにリーグH勢との対戦で舞い上がって、間合いが近くなり過ぎました。東日本戦は自分の間合い、自分のプレーを思い出してやれたかな。今までは漠然としか見えていなかったリーグHの存在を、実際に肌で感じられたのは、若いチームにとって大きかったです。最初は強さに圧倒されて面食らいますが、その強さに慣れてくれば『自分らも戦えるんや』というのがわかってくる。そこに早くたどり着けるように、普段の練習から強さを発揮できるよう、口うるさく言っていきたいですね」(下に記事が続きます)
選手は21人体制に

そして2025年9月27日のリーグH参入決定お披露目会で、堺リエゾン大阪は21名の選手を発表しました。元琉球コラソンの東江太輝、元富山ドリームスの青戸和樹、土佐竜眞なども加わり、選手層がかなり厚くなりました。お披露目会の挨拶で、玉村監督は「選手3人しかいなかったチームが、今では21人になりました」と言ったあと、しばらく言葉に詰まりました。明日も見えないチーム状況から、地元企業の協力もあり、長丁場を戦えるだけの戦力が整ったのです。
11月からチャレンジ・ゲームズへ

HC滋賀との壮行試合では、前半最大7点リードを、終盤に逆転される苦しい展開。しかし新戦力の青戸のカットインで勝ち越し、最後はGK林が、滋賀のエース玉井宏章(元トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)のミドルシュートをセーブして、32-31で勝ちました。玉村監督は「HC滋賀とは何度も練習試合をしていますが、やっぱり強い」と相手を称えつつ、「これまでなら逆転されてズルズルいくところを、もう一度ひっくり返せたのは成長」と、勝利にホッとしていました。
9月に合流したばかりの選手も多いので、10月にじっくりチームを作り上げてから、11月に始まるリーグHチャレンジ・ゲームズに臨みます。玉村監督が「今年のメインターゲット」と位置付けてきたチャレンジ・ゲームズは7試合。11月8日には大浜だいしんアリーナで、リエゾン主管の試合が行われます(堺リエゾン大阪対レッドトルネード佐賀は19時スローオフ)。
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