【ハンドボール】橋本南(大阪ラヴィッツ)引退。「最後はコート」かなえる 

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食事がケガ防ぐ

全体のアップが始まる前から、丁寧に体を動かす橋本=2026年4月
全体のアップが始まる前から、丁寧に体を動かす橋本=2026年4月

仕事は忙しいが、サポート体制はしっかりしていた。サッカーのレディースチームの栄養士が橋本について、食生活を管理してくれた。リハビリの時期と試合期で米の量を変えるなど、きめ細かなアドバイスがあった。

「栄養士さんからは『みそ汁は1日3食必ずつけて』と言われています。手軽に作れるよう、味噌に乾燥野菜を混ぜた味噌玉を用意して、お昼に支給されるお弁当に合わせています。朝からせいろ蒸しも作っていますね。さつまいもやキノコ類をせいろ蒸しにして、夜ご飯用のお弁当に入れたりしています」

「本当にいろんな人に支えてもらっています。もう体は限界に近いので」

30代になり「さすがにサイドで40mを走るのはきつくなってきた」とこぼしていた。試合前に真っ先に出てきて、丁寧にアップをするのも「これくらいしないと、体が動かないから」だという。照れ隠しもあるが、衰えを痛感しているようだった。

このメンバーで1勝したい

ウォーミングアップでのひとコマ。上田遥歌(写真右)と体をぶつけ合う=2026年4月
ウォーミングアップでのひとコマ。上田遥歌(写真右)と体をぶつけ合う=2026年4月

最後はコートに立って引退したい。そう思ってリハビリから復帰した8年目。橋本にはもうひとつの願いがあった。

「このチームでなんとか1勝したい」

2025-26シーズンのメンバーで、一度でもいいから勝つことが目標だった。シーズンの途中に大エースの喜田ことみがセルビアに移籍した。1年間で二度も監督が替わった。チーム最年長の橋本は若いチームがひとつになれるよう、キャプテンの奥山夏帆や上田遥歌らと話し合い、チームを支えてきた。

最大のターゲットだった2026年4月5日の飛騨高山ブラックブルズ岐阜戦では、前半こそ質の高い得点で食らいついたものの、後半はブルズのGK邉木薗結衣に止められて、13-21で敗れた。前半にはポストパスがカットされ、そのこぼれ球を橋本が拾って決めるラッキーな得点もあったが、後半は完全に手詰まりになった。GKの泉幸歩が止めても、なかなか点が取れない。攻撃力不足がチームの課題だった。

ラストゲームで活躍

間を割る橋本。カットインが自身の生命線とも言えるプレーだった=2026年4月
間を割る橋本。カットインが自身の生命線とも言えるプレーだった=2026年4月

レギュラーシーズン最終戦となる2026年5月23日のザ・テラスホテルズラティーダ琉球戦で、橋本は好調だった。スタートからライトバックで出場すると、間にはまったアウト割りから始まり、インに回り込んでのミドルシュートも決まった。速攻での得点もあったし、後半18分にはライン際に切って、センターの土居佳加からのパスをもらってポストシュートを決めた。この日4得点。橋本らしいカットインもあれば、練習を重ねてきたコンビネーションでの得点もあった。現役最後の日に、橋本は持てる力のすべてをコートで出し尽くした。

試合は20-32で敗れ、ラヴィッツは2025-26シーズンを全敗で終えた。目標にしていた勝利はつかめなかったが、橋本はさっぱりとしていた。

「ケガで手術をしたあと、多くの人たちに助けてもらって、再びコートに立つことができました。ハンドボール人生で後悔することはありますが、不思議と未練はありません。自分の持てる力は出し切れたと思っています。もう1年現役を続ける選択をして、本当によかった。そう思えるのも、支えてくださった皆様のおかげです。ありがとうございました」

「最後の試合は、ほぼ(土居)佳加からのパスで得点しています。いつもは私が佳加の決定力を生かすパターンが多いのに、『最後は逆になったね』と、試合後は2人でしんみりしてしまいました」

体が言うことを聞かなくなるまでプレーした。ケガで終わらず、コート上で競技人生を終えることができた。最後までやり切って区切りをつける選手が増えれば、チームの空気は濁らない。最下位に低迷する大阪ラヴィッツのなかで、最年長の橋本は最後まで責任を果たし、次の世代にバトンを渡した。

フィットネストレーナーとふるさとアスリートに

「女と男」のワダちゃんこと和田美枝(元日立栃木)。ラヴィッツのホームゲームではMCを務める=2026年2月
「女と男」のワダちゃんこと和田美枝(元日立栃木)。ラヴィッツのホームゲームではMCを務める=2026年2月

現役を退いた橋本は、セレッソ大阪を2026年6月末に退職し、現在は大阪の梅田でフィットネスジムに勤務している。

「ケガをしたシーズンにトレーニングを勉強して、興味を持つようになりました。今はフィットネスジムで指導しながら、将来的には個別指導などもできれば」

また橋本は先日「よしもとスポーツふるさとアスリート」に登録された。四天王寺高校ハンドボール部から吉本興業へのルートは、「女と男」のワダちゃん(和田美枝・元日立栃木)以来2人目かと思いきや、「芸人ではありません。ふるさとアスリートですよ」と軽くいなされた。

「四天王寺の先輩でもあるワダちゃんの紹介もあって、よしもとスポーツふるさとアスリートになりました。ラヴィッツでの出前授業やセレッソでの経験も生かしながら、ハンドボールの普及活動にも取り組んでいきます。子どもに教える時は、自分自身も楽しみながらやっています」

HYROXにも挑戦

引退後の2026年8月、HYROX千葉に出場した橋本=本人提供
引退後の2026年8月、HYROX千葉に出場した橋本=本人提供

引退後の橋本は精力的である。8月には千葉で開催されたHYROX(世界的なフィットネスレース)にも出場した。初出場で女子の部866人中60位。年代別(30~34歳)では19位と健闘している。

「ケガをしたシーズンにHYROXを知って『ハンドボールの鍛錬期のメニューに似てるな』と興味を持ちました。現役中はできないから、引退後に出場しようと思っていました。来年(2027年1月)のHYROX大阪では、表彰台を密かに狙っています。今後はハーフマラソンにも挑戦したいですね」

現役時代からいい意味で「どっちつかず」な感じが持ち味で、マルチタスクの方が輝いていた。トレーナー業と「ふるさとアスリート」を軸に、様々なジャンルに挑戦しながら、引退後も「橋本南らしさ」を見せてくれるだろう。

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