ハンドボールの国内トップリーグ・リーグHも2024-2025レギュラーシーズンが残りわずかとなり、各チームが今季限りで引退する選手を発表しています。女子の三重バイオレットアイリスではGK高木エレナ、正GK花村美香、攻撃型ピヴォット渡辺樹、トップDF要員の水野祐衣の4選手が引退を表明しています。バイオレットの歴史を作った選手たちの功績を、ここで振り返ります。
#1 高木 エレナ GK/12年目

旧姓山根エレナ。そこにいるだけで場が華やぐGKでした。チームのラジオのタイトルコールでもスター性を発揮していました。高木の「みんな、始まるよ!」のひと声には、愛されるクラブチームに生まれ変わったバイオレットのワクワク感が詰まっていました。
元々爆発力のあるタイプでしたが、結婚したあたりからGKとしての格がさらに上がりました。お調子者の細江みづき(現モルベドレ/スペイン)がパスカットから速攻に飛び出したはいいが、ノーマークシュートを外してしまった直後、相手のシュートをバシンと止めてチームを落ち着かせた姿が、今も記憶に残っています。試合の流れ、勝負の節目をわかってきたから、いよいよ円熟の境地かなと思ったところで、2児の出産とコロナ禍が被る不運もあり、5年間のブランクができてしまったのは残念でした。復帰に向けて理解のあった櫛田亮介監督(現中部大学男子監督)がいなくなったのも、復帰が遅れた原因のひとつかもしれません。
苦しみながらも2024年の年明けには約5年ぶりにコートに立ち、「このままでは終われません」と意地を見せました。勝負勘もさびついていなくて、節目の一本を止めていましたが、リーグH元年の今季は一度もベンチ入りしていません。チームの初代背番号1の橋本由紀子のように本格的に復帰してほしかったのですが、最後は不完全燃焼で終わってしまいました。
どんなときにも笑顔で、前を向いて戦う姿勢を見せてきた高木は、スーパーバイオレットソウルの象徴でした。漆畑美沙、原希美、高木エレナと受け継がれてきた勝利のメンタリティを、引き継いでくれる選手はいるのでしょうか。
#10 水野 祐衣 LW/4年目

長い手足を生かして、トップDFで動き回る選手でした。レフトウイングというよりは、DFでチャンスをつかんでほしかったのですが、王道の6:0DFを重視する黄慶泳監督のもとでは、あまり出番はありませんでした。
水野で覚えているのが、入団1年目の日本選手権準々決勝。後半に新人の水野をトップに据えた5:1DFで速い展開に持ち込んだのですが、3次速攻の流れでピヴォットに入った水野が、不慣れなポジションでシュートを打てませんでした。あの場面でパスをキャッチして打ち切れていたら、水野のハンドボール人生も大きく変わっていたような気がします。
#14 渡辺 樹 PV/6年目(三重では5年目)

ソニーで1年間プレーしたのち、縁あってバイオレットに移籍してきました。当時の櫛田監督は、桐蔭横浜大学時代から渡辺にご執心で、「ウチのドラフト1位でほしい」と言っていました。角南果帆(現デレフォーレ岡山)が抜けて以来となる、チーム待望の純正ピヴォットが、1年遅れでやってきました。
得意技はエリア内での片手キャッチ。バウンドパスを片手でつかみ捕る姿は、男子の山口修(元湧永製薬・現高知中央高校監督)を彷彿とさせました。大学時代の取材で「山口修みたいですね」と言ったら、本人はポカンとしていましたが、当時から片手キャッチの技量は男子顔負けでした。「この子は世代有数の攻撃型ピヴォットになるぞ」と思っていたのですが、三重に移ってからも足踏みが続きました。思っていたよりもDFができなかったのが響きました。
渡辺で記憶に残っているのは、レギュラーで使ってもらった2年前のブルズ戦。終了間際にバタバタと自陣に戻り、ブルズのエース齊藤詩織から運よくチャージングを取って、1点差で勝った場面が思い浮かびます。裏を返すと、大学を卒業してからは、セットOFで渡辺本来の姿を見ることができませんでした。いつも前向きで、出番があれば全力で頑張るのですが、勢い余ってのミスや退場が多かったのも事実です。巡り合わせがよければ、グレイ クレア フランシス(熊本ビューストピンディーズ)や大学の後輩・兼子樹(アランマーレ富山)にも負けない、得点力のあるピヴォットになれたのですが…。
#16 花村 美香 GK/10年目

おとなしくて芯の強いシュウさん。練習の前後では3つ年下の岩見佳音(現GKコーチ)のうしろをついて回って、時折ニヤッとするけれど、特に自分から話すこともなく、何が楽しくてハンドボールを続けているのか、ちょっとよくわからないキャラクターでした。
それでも岩見GKコーチが「シュウさんは私よりも頑固。一度決めたら、テコでも動かない」とあきれるくらいの芯の強さで、バイオレットのゴールを守り続けました。焦れるような接戦でも、大崩れすることなく、花村は地味に止め続けます。ディスタンスシュートにはめっぽう強く、当時の櫛田監督は「ロングシュートを線で捉える感覚がある」と絶賛していました。ロングシュートの軌道に体を入れて、両手でペチペチと叩き落とすのが、花村の得意技。苦手だったサイドシュートの阻止やスローイングも、時間をかけて克服しました。プレーオフで敗れたあとに「(プレーオフ初勝利へ)今年は自信があったんですけどね」と語るなど、内に秘めた闘志を感じさせる選手でした。
右肩上がりに己を高めてきた花村でしたが、10年目の今季は不振に陥りました。元々やられ方が脆いタイプとはいえ、あっけなくゴールを割られるシーンが増えました。花村は「コート上で最年長になって、私が引っ張っていかなきゃと思うんだけど、うまくいかなくて」と悩んでいました。若返ったDFラインをカバーしようと頑張るほど、「DFに守られてよさが出る」花村本来の特徴が消えてしまったようです。最後は持ち味を発揮して、選手生活を終えてほしいです。
5月25日のホームゲームでお別れ
三重バイオレットアイリスの今季最終戦は2025年5月25日のHC名古屋戦(13時スローオフ)。AGF鈴鹿体育館での試合後に、4選手の引退セレモニーが行われる予定です。
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