2025年9月6日、リーグHの新しいシーズンが開幕しました。飛騨高山ブラックブルズ岐阜は、伊藤寿浩ヘッドコーチ体制で3年目を迎えました。昨季は上位勢を相手にも接戦が増えるなど、地力がついてきました。今季も継続して「個の強化」をテーマに掲げ、初のプレーオフ進出を目指しています。
昨季終盤3連勝が自信

2024~25年シーズン終盤を、飛騨高山ブラックブルズ岐阜は3連勝で締めくくりました。イズミメイプルレッズ広島、三重バイオレットアイリス、大阪ラヴィッツに勝った試合を振り返り、伊藤寿浩ヘッドコーチは「個の勝負で負けていなかった」と、手応えを感じていました。特にラヴィッツ戦の後半に見せた、小川玲菜が相手の3枚目に1対1を仕掛けた場面については「小川の成長が感じられたシーン。よく勝負した」と絶賛していました。
小川(玲)は「相手がどうこうではなく、チームで取り組んできたことだから」と言っていました。レフトバックの小川(玲)がポジションチェンジでコート中央に移動。相手の3枚目を孤立させて、広いスペースの1対1で抜き去る――。相手の強みであるはずの3枚目DFで勝負できるのは、個の強さがあるからです。以前の小川(玲)は1試合に1本、目の覚めるようなロングシュートを打つ選手でしたが、ロングとカットインのバランスの取れた点取り屋になってきました。最近はむしろカットインの粘り強さが際立っています。(下に記事が続きます)
伊藤ヘッド、個の強化へ転換

伊藤ヘッドが目指してきたのは「個の強化」。高岡向陵高校(富山)の男子を指導してきた大房和雄監督(現富山ドリームス監督)との会話が、ひとつの転機になったそうです。
「僕も以前は『女子は個の能力が高くないから、もっと組織で組み立てよう』と思っていました。でも大房監督の話を聞いて『女子でも個の力で勝負できる。もっと個の力を高めよう』と、考え方が変わりました。弱者の戦法から脱却します」
最終順位は11チーム中9位でしたが、上位相手にも僅差の試合を続けるなど、昨季のブルズは「個の強さ」を前面に押し出し、一定の成果を残しました。(下に記事が続きます)
齊藤詩織に頼らないチーム作り

2024~25年のシーズンを最後に、センターの齊藤詩織が熊本ビューストピンディーズに移籍しました。司令塔でありエースであり、日本代表にも選ばれた齊藤は「ブルズの顔」とも言える存在でした。齊藤がいたから、近年のブルズの躍進がありました。ブルズファンは未だに「齊藤と小林可奈、角森彩の3人が揃ってブルズを選んでくれたのは奇跡」と言います。
絶対的な柱の齊藤が抜けた穴は大きいですが、伊藤ヘッドは昨季から「齊藤だけに依存しないチーム作り」を進めてきました。ひとつの例として、ピヴォットが本職の中嶋沙央をセンターで起用する時間帯を作っています。伊藤ヘッドは「中嶋は3枚目が守れて、ピヴォットとセンターの両方ができる。こういう選手は今の日本代表にはいない。中嶋にはオールラウンダー枠で代表を狙わせたい」と育成のビジョンを語っていました。中嶋は強い体がありながら、サイドシュートも器用にこなすので、複数のポジションでこれから出番を増やしていくでしょう。(下に記事が続きます)
菊地柚葉の身体能力、センターで生かす

また2025年7月の東海ダービー(名古屋、三重、岐阜の3つのクラブチームによるプレシーズンマッチ)では、センターの一番手に抜擢された菊地柚葉が、9mの外からロングシュートを決めました。カットインのイメージが強かった菊地のロングに驚いていたら、豊島梨奈が「あれは菊地の一番得意なシュート。練習でもよく入りますよ」と教えてくれました。菊地は身長161㎝でもジャンプ力があるので、高い打点からのディスタンスシュートがとても絵になります。
菊地は「バスケットボールのリングの下にあるネットに手が届きますよ」と言っていました。高い身体能力をゲームのなかで的確に使えたら、3年目の今季はブレイク間違いなし。純正のセンターではありませんが、点を取ることで試合の流れを作ってくれそうです。本職ではないセンターに戸惑いはあるものの「ゲームコントロールは伊藤さんの助けを借りながら、やっていきます」と、菊地は話していました。(下に記事が続きます)
開幕戦、セットOFに課題

そして迎えた2025~26年シーズンの開幕戦。9月7日のホーム戦で、ブルズはザ・テラスホテルズ ラティーダ琉球に23-29で敗れました。ライトバックの小林、レフトバックの小川(玲)のシュートがゴールの枠に嫌われるなど、紙一重のところでリズムをつかみきれないうちに、ラティーダの速攻にやられました。セットOFで行き詰まり、期待のセンター菊地は無得点でベンチに下がりました。ラティーダから移籍してきた近内智春の2対2で、チームはようやく落ち着きを取り戻しましたが、悔しい黒星スタートとなりました。
GK邉木薗結衣、高い阻止率

GKの邉木薗結衣はノーマークを止めまくり、阻止率41.7%の大当たりでした。レフトウイングの豊島は最後まで相手に立ち向かい、8得点を挙げました。ライトウイングとピヴォットの両方で気が利く角森は、攻守にハードワークします。頼れる3人が仕事したにもかかわらず、差がついてしまいました。相手に3連続でエンプティゴールを許すなど、OFのミスでボールを失い、簡単に失点したのが響きました。
どの競技でも「OFは水物」と言われます。特に個の判断力で勝負するフリーOFを多用すると、好不調の波は大きくなります。点が入らない時間帯がどうしても出てきます。そこを打開するには「個の強化」しかありません。今は苦しいかもしれませんが、ここを乗り越えたら、プレーオフ争いに絡めるだけの地力がついているでしょう。ブルズの取り組みは間違っていません。継続しての強化に期待しています。
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