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箱館醸蔵取締役 ・山田秀樹さん アイデアと熱量を故郷に

山田秀樹さん
山田秀樹さん。北海道・函館西部地区の八幡坂で(原田写す)
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たまに会っては刺激を受ける友がいる。函館ラ・サール高校の2学年下の後輩で北海道教育大附属函館小・中学校も同じ。山田秀樹(50)だ。

山田にはいくつもの顔がある。株式会社Pleasure Party(プレジャー・パーティー)代表として飲食コンサルティングを手がけるかたわら、東京・世田谷代田にある北海道食材にこだわったパン屋”Boulangerie du Désir”(ブーランジュリー・ドゥ・デジール)を経営。2024年3月15日には渋谷区富ヶ谷で函館十字屋珈琲が味わえる”Cafe Desir TOMIGAYA(カフェ・デジール・富ヶ谷)”をオープンした。かと思えば、AI✕エンターテインメント開発会社の取締役として、公立はこだて未来大学などとプロジェクトを推進している。2021年から北海道・七飯町で醸造をスタートした日本酒「郷宝」で知られる箱館醸蔵の取締役でもある。ここでも函館ラ・サールの先輩、杜氏の東谷浩樹さんらを販促の方面から支え、全国の百貨店で北海道物産展があれば自ら法被を着て店頭ブースに立つ。

目次

起業後すぐ大事故「生かされている」

左から若山豪・株式会社五島軒代表取締役社長、山田秀樹さん、菅原雅仁・株式会社十字屋代表取締役、筆者=北海道函館市若松町の「はる鮨」で

壁を作らず、フットワークが軽く、情に厚い。高校の同窓会やイベントがあれば、山田は誰よりも率先して声をかけ、人集めに動く。母校のラグビー部が初めて花園での全国大会に出場して応援ツアーが組まれた2015年もそうだった。私は彼の誘いで初めて記者席ではなく、母校の大応援団のなかで観戦し、たくさんの年下の友と知り合えた。

世話焼きで頼りになるから、先輩たちからはかわいがられ、後輩に慕われる。人と人をつなげ、新たな価値を生み出すプロデューサー的なアイデアマンでもある。2024年の元日も「函館からあけましておめでとうございま〜す」と、東京にいる私に電話をかけてきた。時刻は午前2時半だった。非常識と律儀さのバランスがおかしい。でも、なぜか許せる。そんな男だ。

実は山田は、起業して間もない2011年7月に大事故にあった。自転車に乗っている時に車にひかれ、頭蓋骨陥没骨折。それでもなんとか一命をとりとめた。50歳に差しかかり、「生かされている命」だと感じている。

だから山田は東京に家があるのに、2024年になって函館市に住民票を移した。今も母と兄、妹が暮らす函館に人一倍、愛着と誇りがあり、函館が好きでたまらないから。そして何より、自分のキャリアの軸である「飲食」のジャンルで、地元・北海道と函館を盛り上げていきたいと思いを強くしているからだ。今後はこれまで以上に東京と函館を行き来して、故郷にアイデアと熱量を注ぎ込む。

筆者自身もはこだて夜景の日(8月13日)を考案したことを契機に、30年来「はこだて観光大使」を函館市から委嘱されている。山田とこれまで40年近く、つかず離れず付き合ってこられたのも、お互いの根っこに「函館愛」があるからだと振り返る。最近の言葉で言えば強い「シビックプライド」でつながっている。

「ストーリーへの思い感じた」クラファン2000万円

そんな山田と2024年3月、東京・麻布十番で飲んだ。前日に静岡・焼津の老舗鮮魚店「サスエ前田魚店」の職人、前田尚毅さんの勉強会に行ってきたという彼は語りだした。

「前田さんは魚を卸す先によって氷の大きさ、量を絶妙に調整することで温度管理を徹底して、魚の締め方を変えているんです。箱館醸蔵の東谷杜氏からも、酒造りは赤ちゃんが寝返りを打ったらそっとタオルケットをかけてあげるぐらいの、紙一重の調整が大事だという話を聞いていました。まさに職人技といえる究極のこだわりには、通じるものがあります。でも、その鮮魚職人の前田さんは言うんです。本当に大事なのは魚の温度管理よりも『それを扱う人の温度、熱量だ』って」

「箱館醸蔵の立ち上げの時、高校の同窓会を中心にたくさんの方にクラウドファンディングで応援してもらいました。その額、2000万円以上。その人それぞれが”はこだて”に思い出やストーリーがあって、その思いがよみがえって応援いただいたんだと思います。すごい熱量を感じました」。

函館を「食」から盛り上げたい

幕末の開港から170年。港町として栄えた函館はいま、超高齢化と急激な人口減少の只中にある。私が高校時代に33万人だった人口は、周辺町村と合併してもいまは約24万人に減った。函館山から望む夜景もグレードダウンは否めない。観光業以外の産業も乏しい。「だから自分は自分ができることをやる」と山田はいう。「飲食の分野で函館を盛り上げていきたい。函館がかつて栄えてきた街の歴史を踏まえて、そこで暮らす人々の息づかいや、生産者の顔が見えるようなストーリーとともに地元の食材を文化として発信していければ」と意気込んでいる。

おいしいものやうまい酒は、その街で過ごした楽しい思い出やストーリーとして人々の心に刻まれる。それは私がPen&Sportsで目指している「勝ち負けだけではない、スポーツのストーリーテリング」にも通じる。飲食で函館の活性化を志す友に刺激を受け、自分もペンで、ふるさとにできることをしていくと誓う。

箱館醸蔵

住所:041-1121 北海道亀田郡七飯町大中山1-2-3
電話:0138-65-5599
URL:http://gohhou.jp/

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