サッカー日本代表DF町田浩樹(27歳)が、2025-2026シーズンに欧州5大リーグのドイツ・ブンデスリーガに初挑戦することになった。ワールドカップ・イヤーという重要な時期に転機を迎えた魂のディフェンダーのこれまでを振り返り、今後について占ってみる。
まずは、つかみはOK!
ブンデスリーガのTSG1899ホッフェンハイムは6月27日、ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)から町田浩樹を獲得したことを発表した。
その紹介動画で主演を演じる町田がなんともコミカルで、ソーシャルメディアで大受けしている。TSG1899ホッフェンハイムが仕込んだ動画を解説する。
当時、鹿島アントラーズに所属していた町田は2021年5月26日セレッソ大阪戦において、ゴール前でオーストラリア代表FWアダム・タガートと競り合った。タガートが腕をつかむようにしてチャージすると、町田はバランスを崩して前に倒れ込んでしまう。
しかし、そこで闘牛かイノシシのように頭を振り上げて超低空のヘディングを繰り出す。ダイビングヘッドは、自ら飛び込んで合わせるが、不可抗力で倒れた果てに必死に頭を合わせた「すっ転びヘッド」といったところだろう。倒れながらも最後まで諦めずにクリアした執念は称賛に値する。
燃える魂を感じつつも、思わずクスッと笑ってしまうようなワンシーン。これで、ばっちりとサポーターの心をつかんだことだろう。初っ端からギャグキャラとして登場した町田が、ホッフェンハイムのチームでどのような位置づけになるか注目しよう。
豪州で睾丸破裂し緊急オペ
北中米ワールドカップ・アジア最終予選グループCのオーストラリア戦(パーススタジアム)の翌6月6日、日本サッカー協会(JFA)は、町田が怪我のためにチームを離脱することを発表した。町田は、接触プレーで睾丸が破裂し激しい腫れと痛みに苦しみ、オーストラリアで睾丸を出して縫って戻すという緊急手術を受けたことを番組出演時に明かした。
この試合のハーフタイムに町田は負傷交代していた。試合終了間際の失点シーンでオーストラリアに崩された場面は、もし退いていなければ町田がマークについていた可能性がある。町田の負傷というアクシデントがなければ、もしかしたら日本は無敗でワールドカップに出場することができたかもしれない。
アジア最終予選で30得点3失点という輝かしい成績を残した日本代表にとって、唯一の黒星となったオーストラリア戦は「玉に瑕(きず)」となった。
町田は、2024年6月7日に一般女性と入籍したばかりだが、今後の健康状態に支障は出ないという。無事にTSG1899ホッフェンハイムのメディカルチェックもパスして、晴れて正式契約をすることになった。(下に記事が続きます)
文武両道の努力家
町田は、鹿島アントラーズの下部組織でプレーし、ユース代表にも選出されたエリートだ。2021年東京五輪にも出場した。プロ生活を送りながら、早稲田大学人間科学部・通信教育課程を卒業した秀才でもある。
2022年1月にロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)に移籍すると、2023年9月12日にベルギーのゲンクで開催された国際親善試合トルコ戦でA代表デビュー。
2024-2025シーズンは90年ぶりのベルギー・リーグ優勝を果たし、欧州チャンピオンズリーグ出場権を獲得。2023-2024シーズンには、ベルギーカップ決勝で決勝点を決めて110年ぶりに優勝した。
ベルギー・ファースト・ディビジョンA(ジュピラー・プロ・リーグ)への挑戦は実り多きものとなった。
総合力が高い左利きセンターバック
町田浩樹は身長190cm・体重80kgと世界基準のサイズを誇る。ディフェンダーで左利きというのは貴重だが、攻守において空中戦で強さを発揮し、足元でのボールさばきも巧みでフィードを得意とする正統派センターバックだ。
それに加えて、頭の良さも光る。一般的には相手が勝負に出た際や相手からボールが離れた際が守備側としては狙い目だ。しかし、町田は相手のアクションにただ対応するのではなく、相手がボールを持ってまだこれからだと思っている時に、前に寄せてボールを奪うセンスがある。
これは、一つ間違えば突破を許してしまうが、奪うことができれば一瞬で数的優位を作れる高い守備テクニックだ。これには、日本人離れしたリーチの長さと鋭い判断力、そして勇気がものをいっている。
センターバックとしてトータルの能力が高く、ドイツでも活躍することが期待できる。その先には、W杯での日本代表のポジションも見えてくることだろう。(下に記事が続きます)
町田「ブンデスリーガはキャリアの次のステップ」
町田は「TSGホッフェンハイムへの移籍が万事うまくいったことを大変嬉しく思います。TSGはヨーロッパのトップ5リーグで戦う、非常にエキサイティングで野心的なクラブです。私にとって、ホッフェンハイムへの移籍、そしてブンデスリーガへの参戦はキャリアの次のステップであり、新しいチームメイトと早くスタートを切るのが待ちきれません。今後このチームで成功するために、全力を尽くします」とクラブ公式サイトで述べている。
TSGのスポーツ担当マネージングディレクターであるアンドレアス・シッカーは、新加入に際して大きな期待を口にした。「町田浩樹は、まさに我々がこのポジションに求めていた資質を備えたセンターバックです。日本代表として国際経験を積んでおり、昨シーズンにリーグタイトルを獲得したロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズでも絶対的なレギュラーでした。浩樹はどんな挑戦にも臆することのない、妥協を許さないディフェンダーです。また、長身を活かした空中戦での存在感があり、優れた戦術眼でプレーを的確に構築します。浩樹の存在と特性のおかげで、私たちの守備陣は望んでいた安定性を得ることができると確信しています」
TSG1899ホッフェンハイム ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州ジンスハイム(人口約37,000人)にあるホッフェンハイム地区(人口約3,000人)が本拠地。1899年創設と歴史はあるが、長らくドイツ7部から9部を行き来する地方のアマチュアクラブだった。ドイツのソフトウェア大手SAPの創設者ディートマー・ホップがユース時代にプレーしていた縁から1990年以降に支援を行うようになり、ドイツ8部から昇格を繰り返して2007-2008シーズンにブンデスリーガ2部に、そして翌2008-2009シーズンにブンデスリーガ1部に昇格。2024-2025シーズンは勝点32で15位。
ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ 1897年創設。ベルギー・ブリュッセル首都圏地域のサン=ジルに本拠地を置く。古豪という位置づけだったが、2024-2025シーズンはレギュラーシーズン3位を経て、プレーオフは無敗で優勝。90年ぶり12度目のリーグ優勝を果たした。2024-2025シーズンには、期限付きで三笘薫がプレーした。2018年以降は、イングランド・プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンのオーナーであるトニー・ブルームがオーナーを務める。
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