サッカー日本代表は米国で2025年9月6日にメキシコ代表と、9月9日にアメリカ代表と国際親善試合を行うが、緊急事態が発生している。この遠征は、2026年北中米ワールドカップの予行演習という重要な位置づけだが、守備系の選手に故障者が大量発生しており、本大会を想定したメンバーが組めない可能性が出てきた。
代表クラスの守備系の負傷者だけでも冨安健洋、高井幸大、鎌田大地、田中碧、伊藤洋輝、町田浩樹、板倉滉、守田英正、鈴木淳之介と9人を数える。とりわけ町田浩樹は、ワールドカップに間に合うかどうかという重症を負い、森保一監督としては悩ましいところだ。招集メンバーは8月28日午後1時(日本時間)に発表される。
町田は左ひざ前十字靭帯断裂、W杯も微妙
2025年夏、ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)からTSG1899ホッフェンハイムに加入した町田浩樹は、8月16日にカップ戦「DFBポカール1回戦」でFCハンザ・ロストックを相手に先発フル出場しデビューを飾った。
続く8月23日のドイツ・ブンデスリーガ開幕戦ではバイエル・レヴァークーゼンを相手にアウェイで先発し、スコアが1-1の緊迫した状況でFKからヘディングシュート。GKが横っ飛びで手を伸ばしなんとかセーブしたが、あわやゴールかという見せ場をつくった。しかし、スペイン代表MFアレハンドロ・グリマルドと接触し、なかなか立ち上がれずに険しい表情でスタッフに肩を抱えられ40分に交代となった。
クラブは、左ひざ前十字靭帯断裂の重症で長期離脱し手術が必要だと発表。2024-2025シーズンにブンデス・リーガ2位だったバイエル・レヴァークーゼンを相手にアウェイで2-1と勝利し好発進したホッフェンハイムだったが、あまりに大きな代償を払うことになった。
前十字じん帯を断裂すると一般的に全治まで8カ月〜10カ月を要する。代表チームでプレーするには単に運動ができるようになるだけでは十分ではなく、身体的に最高の状態に仕上げる必要があるため、2026年6月開幕のワールドカップはギリギリのタイミングだ。ひざの大怪我をすると本調子に戻らず選手生命を絶たれる場合もあるだけに心配される。
過去に大怪我を乗り越えた経験
町田浩樹はソーシャルメディアで積極的に自らの言葉を発信し、気丈に振る舞っている。
町田浩樹はプロ2年目のJリーグ2試合目で前十字靭帯を断裂。しかし、この大怪我があったから日本代表になり欧州5大リーグのブンデス・リーガまでたどり着いたと強調し、今回も前向きな姿勢で克服する決意を表明している。
町田浩樹とセンターバックを組むことが多い板倉滉も怪我を乗り越えた経験がある。2022年カタール・ワールドカップを目前に控えた9月上旬に板倉滉は当時所属していたボルシア・メンヒェングラートバッハのトレーニングで右ひざ内側側副靱帯を部分断裂。本大会を諦めかけたが、手術を必要とせず懸命に治療とリハビリに励んだ。
そして11月17日の国際親善試合カナダ戦で67分までプレーすると、11月23日にはドイツ戦のピッチに立っていた。グループE全3試合に先発出場し、2枚の警告を受ける大暴れ。累積警告でラウンド16のクロアチア戦は出場停止となり涙したが、グループステージ敗退という予想が大勢を占めるなかドイツとスペインを撃破し決勝トーナメントに進出した。
急場をしのぐ打開策とは
故障者の多くは守備の中心線の選手だ。アンカーの主力には、日本代表キャプテンの遠藤航(リヴァプールFC)が健在だが、後方のセンターバックのスタメン常連は全滅と言っても過言ではないほど離脱者がいる。
これまでバックアップ的な役回りで途中出場することが多かった瀬古歩夢が先発する可能性が高まるだろう。仏リーグ・アンのル・アーヴルACに移籍した瀬古歩夢は、開幕スタメンを獲得したが、日本代表で必要とされるセンターバックではなくアンカーで主にプレーしている。器用なのでポジションの変更は問題ないだろうが、国際試合でセンターバックとしてプレーするのであれば、日頃からクラブでも同じポジションでプレーしているのが理想ではある。
渡辺剛(フェイエノールト・ロッテルダム)の起用も十分に考えられる。佐野海舟(1.FSVマインツ05)を守備的MFに大抜擢し、遠藤航の位置をセンターバックに下げるウルトラCもありうるだろう。
E-1サッカー選手権では長友佑都(FC東京)がセンターバックとして出場し能力の高さを示したが本職はフルバック(サイドバック)であり、この大会で招集されたのは国内組だった。
センターバックの絶対数が少ないため、森保ジャパンのプランに狂いが生じる可能性もあるが、ある意味では不測の事態への対処のシミュレーションになるだろう。(下に記事が続きます)
日本代表・守備系選手の故障者
- 冨安 健洋(元アーセナルFC:センターバック、守備的MF、右フルバック):左右ふくらはぎを度々、負傷し戦列を離脱。2023年3月16日スポルティングCP戦では右膝を負傷し交代すると、重症のため手術を受ける。2024年から2025年にかけて右ひざ軟骨を度々、手術するも2025年夏に双方合意のもと契約解除。戦力として評価されながらも度重なる負傷に泣き、アーセナルに在籍した4シーズンでプレミアリーグ65試合出場。
- 高井 幸大(トッテナム・ホットスパーFC:センターバック):2025年夏に川崎フロンターレからトッテナム加入も、プレシーズンに足底腱膜を負傷し開幕に出遅れる。
- 鎌田 大地(クリスタル・パレス:セントラルMF):2025年8月10日、リヴァプール戦で右ひざを負傷し交代。
- 田中 碧(リーズ・ユナイテッド:セントラルMF):2025年8月23日、アーセナル戦でひざ内側側副靭帯を負傷し交代。
- 伊藤 洋輝(バイエルン・ミュンヘン:左フルバック、センターバック):2024年夏のプレシーズンマッチで右足中足骨を骨折。リハビリを経て2025年3月29日のザンクト・パウリ戦で途中出場も再び同じ箇所を痛めて交代。
- 町田 浩樹(TSG1899ホッフェンハイム:センターバック):2025年8月23日、バイエル・レヴァークーゼン戦で左ひざ前十字じん帯を断裂。手術が必要な重症。
- 板倉 滉(アヤックス・アムステルダム:センターバック):2025年8月17日、ゴー・アヘッド・イーグルス戦で右脚を抑えるしぐさを見せ負傷交代。
- 守田 英正(スポルティングCP:守備的MF):2025年8月23日、CDナシオナル戦で違和感を感じて負傷交代。
- 鈴木 淳之介(FCコペンハーゲン:センターバック、守備的MF):2025年6月28日、湘南ベルマーレの横浜F・マリノス戦で左足首を負傷もデンマークに移籍。
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