2024-2025シーズンのエル・クラシコ(スペイン伝統の一戦)は、FCバルセロナが4戦全勝だった。しかし、前2023-2024シーズンには、3つのタイトルを獲得したレアル・マドリードに、バルセロナは3戦全敗と苦杯をなめていた。この短い期間に形勢が逆転したスペインの2強に一体、何が起こったのか詳しく検証してみよう。
ムバッペのハットトリックを打ち消すバルサの4得点
サッカーのスペイン1部ラ・リーガは2025年5月11日、バルセロナが本拠地エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニスでレアル・マドリードに4-3で勝利。3得点を決めたフランス代表FWキリアン・ムバッペは今季37得点とし、レアル・マドリード加入1年目における最多得点記録を更新した。
しかし、バルセロナはFWラミン・ヤマルのスーパーゴールなど4得点でそれを上回り、乱打戦を制して3冠を大きく手ぐりよせた。(下に記事が続きます)
スペイン国王杯決勝では個性が裏目に
前回対戦した4月26日のスペイン国王杯決勝では、延長戦の末に3-2でバルセロナが勝利して優勝を決めた。この試合終盤には、追いつこうとドリブルで攻撃を仕掛けるレアル・マドリードのムバッペの手が相手ディフェンダーの顔に当たったとしてファウルになると、ドイツ代表DFアントニオ・リュディガーは激昂して主審に物を投げつけて走り寄ろうとした。
複数のチームメイトが身を挺して羽交い締めにして必死に制止したが、鬼気迫る形相でその迫力はまるでプロレスラーのようだった。この一件でレアルのリュディガーには、6試合の出場停止処分が科された。強烈な個性が、裏目に出てしまったかたちだ。
優勝を祝うラミン・ヤマルが金髪にサングラスでノリノリなのとは、対極だった。(下に記事が続きます)
シーズン序盤は大量得点差、ムバッペは空回り
1月12日のスーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝では、ブラジル代表FWラフィーニャの2ゴールなど大量得点で5-2。
2024-2025シーズン初対戦となった10月26日の試合では、レアル・マドリードのホームながらロベルト・レヴァンドフスキの2得点などでバルセロナが 4-0と大量得点して完封。新加入したムバッペはマドリードのチームやラ・リーガにまだ完全に馴染んでおらず、空回りした。(下に記事が続きます)
監督交代で立て直しに成功したバルサ
前2023-2024シーズンのラ・リーガは、首位レアル・マドリードに勝点10差の85で2位となったバルセロナ。シャビ・エルナンデスが監督を務めた最後のシーズンとなった。
第二のペップ・グアルディオラを輩出すべくバルセロナ育成組織ラ・マシア生え抜きのシャビを招へいしたバルセロナだったが、まだ指導者としての経験が浅い上、クラブの財政難もあいまって大きな成果を挙げることができなかった。
2024-2025シーズンにバルセロナは、バイエルン・ミュンヘンやドイツ代表で実績のあるハンジ・フリックが監督に就任した。フリック監督はドイツ式のプレスとディフェンスラインを高くするコンパクトな布陣といった戦術をバルセロナに叩き込んだ。
チームワークを重視するバルセロナだが、スペインのお国柄で選手は緩やかなつながりでプレーするのが通例だ。しかしフリック監督は、徹底した組織を作り上げることでチームを効果的に機能させた。
レアル・マドリードほど強烈な選手が揃っているわけではないが、バルセロナにもロベルト・レヴァンドフスキやラミン・ヤマルといった傑出したタレントがおり、チームワークと個性がうまくハーモニーを織りなした。
「集団」で銀河系の「個人」撃破、双方の哲学の違い
バルセロナは3人、4人で連携して崩していく。これはお家芸的なものだが、フリック監督のコンパクトな布陣でさらに引き締まった感がある。さらには個で打開できるラミン・ヤマルがアクセントになっている。
一方のレアル・マドリードは、3人以上で崩していくシーンが少ない。「FWヴィニシウスの個人技の突破」「MFジュード・ベリンガムの深いタックルからの展開」「MFルカ・モドリッチの巧みなインターセプト」といった1人のスーパープレーを起点にしてチャンスが芽生えて2人目にはもうビッグチャンスになる。
これは連携不足というよりは、個性の強い選手たちの特徴を最大限に活かそうとするカルロ・アンチェロッティ監督の意図だろう。個々で戦えば一番強いのだから、これも理にかなっている。(下に記事が続きます)
名将アンチェロッティも降参
レアル・マドリードが悪かったのではなく、バルセロナが飛び抜けて良かったと考えるべきだろう。
レアル・マドリードのカルロ・アンチェロッティ監督は、スペイン国王杯決勝後の現地インタビューで「バルセロナは非常に良いチームだ」と感服。
65歳になるイタリア人の名将はレアル・マドリード退任と、ブラジル代表監督への就任が決定した。アンチェロッティは、柔軟で個性を活かせる監督だからこそ、数々のビッグクラブに多くのタイトルをもたらしてきた。自身初となる代表監督だが、これまでの経験を生かして個性派揃いのカナリア軍団を指揮することだろう。
新監督が率いるレアル・マドリードは、巻き返しを図ることができるか。フリック監督の1年目でやや危うさの残るバルセロナは、チームの完成度を高めることができるか。2025-2026シーズンのエル・クラシコも見ものだ。(下に記事が続きます)
エル・クラシコ戦績
2023-2024シーズン:Rマドリード 3勝-0勝 バルセロナ
- バルセロナ 1-2 Rマドリード(2024年10月28日ラ・リーガ)
- Rマドリード 4-1 バルセロナ(2024年1月14日スーペルコパ・デ・エスパーニャ、決勝)
- Rマドリード 3-2 バルセロナ(2024年4月21日ラ・リーガ)
2024-2025シーズン:バルセロナ 4勝-0勝 Rマドリード
- Rマドリード 0-4 バルセロナ(2024年10月26日ラ・リーガ)
- Rマドリード 2-5 バルセロナ(2025年1月12日スーペルコパ・デ・エスパーニャ、決勝)
- バルセロナ 3-2 Rマドリード(2025年4月26日スペイン国王杯決勝※延長戦)
- バルセロナ 4-3 Rマドリード(2025年5月11日ラ・リーガ)
絶好調のバルセロナが7月来日へ
苦しい低迷期を克服して、ついに完全復活したバルセロナが今夏、来日する。
「30周年記念チャリティーマッチ」と題してヴィッセル神戸と2025年7月27日、ノエビアスタジアム神戸で対戦することが、クラブから発表された。
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