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【フェンシング】「わざと負けて」と高校生に指示か | 総体予選 歪められたフェアプレー精神と五輪選手の教訓

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フェンシングの全国高校総体(インターハイ)岐阜県予選で、フェアプレー精神を揺るがすあってはならない「事件」が起きた。きょう2025年5月13日付の朝刊各紙が社会面で報じた。読売新聞は「高校総体県予選『故意負け』不正」の見出しで報じている。同じ高校同士で対戦した2人の選手がそろって全国インターハイの出場権を得られるよう、選手の関係者が一方にわざと負けるように頼んでいたことが発覚した。

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「不自然だ」の声で調査、再試合へ

記事によると、事件は5月10日に行われた6人総当たりの女子エペ最終試合で起きた。岐阜県から同種目で全国高校総体に出場できるのは2人。最終試合は全国高校選抜大会などで優勝実績がある県立羽島北高校の選手同士が対戦したが、4勝していた選手が2勝2敗の選手に敗れた。勝った選手は3勝2敗となり、他の高校の2選手と勝敗で並んだが、得点差で2位が確定。その結果、最終試合で対戦した県立羽島北高校の2人が出場権を得た。ところが、試合後に他校の指導者から「不自然だ」などとの声が上がり、調査の結果、「関係者」が4戦全勝していた選手にわざと負けるように依頼していたことが判明した。

「関係者」が誰なのかや、負けを依頼した経緯は明らかにされていないが、「不正」が明らかとなり、岐阜県高体連は再試合を行うことを決めた。今回、故意に負けるよう頼んだとされる「関係者」が大人だった場合、高校生が断ることは難しいのは察するに余りある。勝者も敗者もまだ未来ある高校生。大人の事情で、フェアプレー精神が歪められ、2人が「不正」のレッテルを貼られてしまったとしたら、その傷は深く、「関係者」の罪は重い。(下に記事が続きます)

フェアプレー精神貫いた例も

今回の事件で思い出したことがある。2016年5月2日、リオデジャネイロ五輪予選を戦っていたバドミントン五輪代表ペアを取材した時のことだ。今回の一件と境遇は似ていても、対応は真逆。フェアプレー精神を貫いた教訓のようなエピソードを紹介したい。

その日、私は中国・武漢でのアジア選手権女子ダブルスで優勝したタカマツペアこと高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)を成田空港で取材していた。彼女たちは世界ランキングでリオ五輪出場をすでに確実にしていたが、同じ便で帰国した福万尚子・与猶くるみ組(再春館製薬)はまさにボーダーライン上にいた。アジア選手権決勝でこの二組が対戦したのだが、もしも福万・与猶組が勝てば、日本から女子ダブルス2組をリオ五輪へ送り込むことができた状況。それを高橋、松友組は真剣勝負で勝ち切った。

中国の記者「なぜわざと負けなかったのか」

成田空港で取材に応じた高橋は中国の記者から「なぜわざと負けなかったのか」と質問されたことを明かし、「自分たちのやるべきことをやった。無気力な試合をしたら相手に失礼になる」。松友も「私たちは五輪の金メダルのために戦っている。誰にも負けるわけにもいかないし、それがスポーツマンシップ」と話した。その3か月後、タカマツペアがまさに「有言実行」でリオ五輪本番で金メダルを獲得したのはご存じの通りだ。

日本代表の中島慶コーチ(当時)の本音は「できれば2つのペアを五輪に行かせたかった」。それでも「正しいことをしないとダメ」。決勝前には両ペアに「正々堂々とプレーしなさい」と伝えていたと語っていた。

バドミントンの試合では世界ランキングで争う五輪代表の決定方法や次のラウンドの対戦相手を決めるだけの消化試合が生まれる大会方式がある意味、負けが利益となる状況を作り出すことがある。その仕組みを改善しなければ、「八百長」の誘惑に、「チームのため」という言い訳が常について回る。(下に記事が続きます)

「正々堂々のプレー、ありがとう!です」

私はリオ五輪出場の可能性が消えた福万、与猶組にも取材をした。すると、さぞ悔しがるだろうと思った彼女たちは意外な反応を見せて驚いた。福万は所属先の再春館製薬がある熊本県民が熊本県地震で被災したことに触れ、「熊本の皆さんが前を向いて頑張っている。私たちも前を向きます」。そして与猶は笑顔でこう言ったのだ。「正々堂々勝負してくれた、タカマツペアにありがとう、です!」

私はこの記事の結びで、こう書いた。「彼女たち(福万、与猶組)の潔い言葉に、バドミントンが救われた」。心からそう思って書いた。

再試合が決まったフェンシングの岐阜県高校総体予選。「関係者」はそれこそ正々堂々と謝罪し、高校生もフェンシングも救われることを期待する。

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