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【ハンドボール】デフリンピック日本代表、強化中 | 東京で11月、初舞台

2025 年4月19日、ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)で、デフハンドボール日本代表の強化試合が行われた=久保写す、以下すべて
デフハンドボール日本代表の強化試合が東京・ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)で行われた=2025年4月19日(久保写す、以下すべて)
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デフリンピックとは、耳が聞こえない、聞こえにくい人のためのオリンピックです。第1回大会は1924年にフランスのパリで開かれ、100周年にあたる2025年には東京で開催されます。日本で初めての開催となる2025東京デフリンピックでは21の競技が行われ、デフハンドボール日本代表は初めてのデフリンピックへ向けて強化を進めています。2025年4月19日には、リーグHのジークスター東京の前座試合で、デフハンド日本代表の強化試合が行われました。

目次

音のない環境でプレーするハンドボール

試合の残り時間は、ボードに書いて伝える
試合の残り時間は、ボードに書いて伝える

デフハンドボールは、耳の聞こえない、聞こえにくい人がプレーするハンドボールです。選手のなかにはほとんど耳が聞こえない人もいれば、補聴器をつければ会話できる人もいます。ルールやプレーは健常者のハンドボールと同じですが、言葉で伝えあうシーンがありません。だから初めてデフハンドボールを見た人は「こんなに静かな環境でハンドボールをするんだ」と驚きます。

マークの受け渡しをどうする?

2対2をどう守るかが、デフハンドボールの課題。声で伝えられないから、マークの受け渡しが難しくなる
2対2をどう守るかが、デフハンドボールの課題。声で伝えられないから、マークの受け渡しが難しくなる

デフハンドボール専門委員会の中村有紀委員長も、声のないハンドボールの難しさに苦戦しています。「経験者なら声を出すことから習いますけど、デフハンドボールでは声で伝えられません。ベンチに呼んで、手話通訳を交えて話しても、そもそもハンドボール経験が少ないから、短い言葉で伝わりにくい。特にマークの受け渡しは一番の悩みです。1人目がしっかり当たったら、そのままついていく。なるべくスイッチしないで守るようにしていますが、それだけでは解決できません。他の国がどのようにやっているのか、デフリンピックでは勉強したいですね」

ハンドボールで2対2を守る時に、マークの受け渡しが重要になります。自分のマークを外さずに「そのまま」で守るのか。それとも隣のDFとマークを受け渡す(「スイッチ」もしくは「チェンジ」する)のか。DFの練習では声で伝え合うよう教わります。ところがデフハンドボールだと、声で伝えられません。背中を叩いて知らせる方法もありますが、お互いの距離が離れると、難しくなります。(下に記事が続きます)

リーグH経験者がGKコーチ

手話通訳を交えて指示を伝える谷口コーチ
手話通訳を交えて指示を伝える谷口コーチ

谷口俊GKコーチは日本体育大学出身で、リーグHのアースフレンズBMでもプレー経験があります。トップゾーンを経験してきた谷口コーチも、2対2の守り方に頭を悩ませていました。「今の段階は『隣同士2人が同時に前に出て、裏のスペースをやられてもいいから』と言っています。『躊躇して、どちらも前に出られなくて、上からミドルシュートを打ち込まれるよりは、積極的なミスは構わないから、ミドルシュートには当たりに行こう』と伝えています。試合慣れしていないのが大きいですね」

11月の東京デフリンピックまで時間は限られていますが、谷口コーチはフィジカルの強化で活路を見出したいと考えます。「マークを受け渡さずに『そのまま』で守るには、フットワークや体力が必要になります。運動量が増えるので、フィジカルが大事になってきますね。フィジカルの強化は時間がかかりますが、やれば誰でも伸びる可能性があります。僕も身長が177㎝しかなかった分、フィジカルでカバーしてきましたから。幸いにも味の素スタジアムにあるパラトレセン(東京都調布市)が使えますし、僕と一緒にアースフレンズBMでやっていた山形佳冬トレーナーもいるので、フィジカルをこれから強化していきます」

日本のデフハンドボールの未来につなげたい

初心者の指導が得意な亀井監督は、経験の少ない選手の技量を引き上げる
初心者の指導が得意な亀井監督は、経験の少ない選手の技量を引き上げる

練習をするたびに、新たな課題に直面しますが、チームとしても少しずつ形になってきました。かつては日本女子体育大学で指導していた亀井良和監督は、2月の段階で「個々の動きは洗練されて、ハンドボーラーらしくなってきた。状況判断をしてスキルを使い分けるには、まだ時間がかかるかな」と話していました。

代表チームが本格的にスタートしたのは2023年の12月から。その時にハンドボールを始めた選手がほとんどで、その後トライアウトを経て経験者が増えてきました。2025年4月19日の都立小岩高校との強化試合(20分ハーフ)では12-19で敗れましたが、センターの津村開にGKの定野巧など、個人技で目立った選手もいました。しかし亀井監督は「津村の個人技が決まるか決まらないかではなく、組織的な攻撃のなかで津村の個人技を生かしたい」と、さらに上のレベルを求めていました。

亀井監督は「結果にはこだわらなきゃいけないが、聴覚障がいのある人達が長くハンドボールを続けていけるスタート地点を作ることが大事。これが根づいて、継続していくためにどうするのかを考えていきたい」と、デフハンドボールのこれからを見据えていました。中村委員長も「選手はみんな一生懸命で、上手くなりたい、教えてほしいって気持ちが強いです。早稲田大学との合同練習でも、選手が個別に大学生を捕まえて、教わっていました。選手は耳が聞こえないから、『何を教えてくれるんだろう』という感じで、相手をじーっと見てくるんですよ。その目力というか『教えてほしい』パワーを感じるから、大学生も一生懸命教えようとしていました」と、選手達のやる気に可能性を感じていました。

ハンドボールの経験は浅くても、意欲にあふれた選手たちが集まりました。11月には駒沢オリンピック公園総合運動場の屋内球技場で、いい戦いを見せてくれることでしょう。

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