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【ビーチハンドボール】女子のKUNOICHI、東海ビーチ連覇。フィリピン遠征が糧

ビーチハンドボールチームKUNOICHI
ビーチハンドボール女子・KUNOICHIのメンバー=2024年5月、久保写す。以下、提供写真以外すべて
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第14回東海ビーチハンドボールフェスタ(東海ハンドボール協会主催)が2024年5月18~19日、愛知県碧南市の碧南緑地ビーチコートで開かれました。女子の部では同市が本拠地のKUNOICHIが2年連続で優勝しました。日本で一番ビーチの練習をしているチームとして知られるKUNOICHIは、海外への遠征にも積極的に取り組んでいます。今回優勝できたのも、ゴールデンウイーク中に行ったフィリピン遠征の成果だと言います。同チームの奮闘を紹介します。

目次

宿敵・SWAGを破り4戦全勝

ルーズボールに飛び込む田烏
ルーズボールに飛び込む田烏

東海ビーチハンドボールフェスタ女子の部は、5チームによる総当たり戦で行われました。KUNOICHIは大会初日、愛知と関東の2拠点で活動するSWAGと、大阪の桜ノ宮ビーチで活動するraccolta大阪と対戦。SWAGは2023年度の全日本ビーチハンドボール選手権の覇者です。raccolta大阪とは、2023度の全日本ビーチハンドボール選手権の初戦で当たり、シュートアウトの末にKUNOICHIが敗れています。チームの創設者でもある星野美佳(元三重バイオレットアイリス)は「初日が勝負」と、気合を入れていました。

KUNOICHIは初戦のraccolta大阪戦にセットカウント2-0で勝利すると、続く大一番のSWAG戦では攻守によさを発揮しました。ポストの島田香織(旧姓・中谷)が浮いて4人が横並びで位置を取り、素早いパスでずれを作ります。大谷萌をはじめとするノーマークになったシューターは、GKを見て、左右に打ち分けていました。またDFでは田烏千浩(旧姓・伊賀)、新加入の笠松千夏がよく動き、再三のシャット(シュートブロック)でピンチを防ぎました。ルーズボールへの反応もよく、特に田烏が下のボールに飛び込みマイボールにするシーンが多く見られました。SWAGが中心選手を欠いていたとはいえ、KUNOICHIが内容で圧倒し、2セット連取しました。

翌日もビーチハンドボールのアンバサダーを務めるモデルのヤハラリカが率いるThetis東京と、愛知の老舗・東海Weeds!に勝ち、4戦全勝。KUNOICHIは2年連続で東海ビーチを制しています。(下に記事が続きます)

きっかけは2018年、フィリピンビーチゲームス

KUNOICHIの創設者でもある星野
KUNOICHIの創設者でもある星野

東海ビーチで勝てた要因を、星野は「私たちの原点でもある、フィリピン遠征の成果」と言いました。ここでKUNOICHIの歴史を少し振り返っておきましょう。KUNOICHIは2018年2月に開催されたフィリピンビーチゲームスに出場するために作られました。世界で通用するプレーを目指して、日本代表級の選手がKUNOICHIに集結しました。その後メンバーの入れ替わりはありましたが、フィリピンのビーチハンドボール協会とのつながりは続いていました。

2024年2月も、2度目のフィリピンビーチゲームスに参加する予定でしたが、フィリピン代表がスペイン遠征に行くことになり、いったん話はなくなりました。ところが後日、フィリピン協会の方から「もし日本からフィリピンに来るようなら、親善試合をやるよ。いつなら来られる?」と言ってきたのです。「連休中なら行きやすいです」ということで、5月の連休中にフィリピンへ遠征し、2024年6月の世界選手権に初めて出場するフィリピン代表のプレーを肌で感じてきました。

対フィリピン戦「ずっと見られている」

全敗だったとはいえ、フィリピン代表や現地のチームと試合できた経験は大きかった(提供:KUNOICHI)
1勝5敗だったとはいえ、フィリピン代表や現地のチームと試合できた経験は大きかった(提供:KUNOICHI)

2023年もハンガリーの大会に出場するなど、精力的に海外遠征をするKUNOICHIのリーダー星野に、海外と日本の違いを教えてもらいました。まずはOFについて。

「国内ではOFでボールを持っていない時に動かなくても、相手のDFも動いていないから、ボールをもらってからの動きで何とかなります。でもフィリピンやハンガリーだと、10センチ大きい選手が相手だから、長い手が伸びてきてパスカットされてしまいます。パスを出したあとにボーッとするのではなく、早く位置を取り直さないといけません。海外のチームはOFもDFもよく見ているんですよ。自分の目の前だけでなく、反対側までよく観察しています。今回のフィリピンとの試合でも、ずっと見られている感覚がありました」

ビーチハンドボールは、GKと同じユニフォームを着たスペシャルプレーヤーが攻撃参加します。だから4対3の数的優位な状態でセットOFができます。速いパスを出してずらしていけば、プラス1(1人余った状態)が作れるはずですが、それだけではないと星野は言います。

「シューターが相手のシャット(シュートブロック)にかかるのは、本人よりも他の3人が丁寧に作れていないからです。打とうと思えば打てるけど、より余裕を持って打てる形まで、粘ってボールを回せるようにしたい。そのためにはパスを出したあとにすぐ位置を取り直して、攻撃を継続させたいんです」(下に記事が続きます)

DFも「先読んでけん制」

DFの原理原則を伝える今泉監督
DFの原理原則を伝える今泉監督

続いてDFについて星野に聞きました。こちらは海外との違いよりも、自分達の改善点がメーンになってきます。

「これまでは、起こった出来事に対するリアクションで守っていました。今は先を読んでけん制したり、いい位置取り、いい準備がDFでもできるよう練習しています。シャットに跳ぶ時も、あてずっぽうに跳ぶのではなく、相手の体の向きやタイミングを考えて跳ぶよう伝えています。相手がクイックで跳んできたなら、このタイミングで両手を出せばいい。ためて打ってくるなら、このタイミングで両手を出しても間に合う。シューターの軸を見て、内に跳ぶのか、外に跳ぶのかを判断して跳ぶ。そういった駆け引きの考え方を、今泉貴雄監督が言葉で落とし込んでくれています」

フィリピン遠征でもやっていた先手を取るDFができたことで、東海ビーチでは常に優位に試合を運べたと、星野は言います。

「相手に対して、今のはDFに行っていいのか。それとも行かなくていいのか。そういった基準が言語化されているから、選手同士でも話し合いができるんです。今までは「行け」と言われたから行っていました。今は考え方がわかっているから、言われなくても自分で行けるようになって、遅れることが少なくなりました。こういう駆け引きの考え方がわかれば、自分で修正ができますし、一生ビーチハンドを楽しめます」(下に記事が続きます)

ビーチハンド「身体能力より頭の回転」

大谷はDFのシャットに捕まることなく、シュートを打てていた
大谷はDFのシャットに捕まることなく、シュートを打てていた

今大会DFで活躍した田烏は「今日はたまたまシャットに跳んで当たったけど、もっと相手を見て、跳ぶタイミングを調節したい」と言っていました。これまで以上にシュートを決めた大谷は「流しか引っ張りかの二択だけでなく、流しの上に狙って打てるコントロールをつけたい」と言っています。2人とも駆け引きの土俵に上がるために何が必要か、ようやく分かってきたようです。

星野は「新しく入った子にも考え方を教えて、持続可能なチームにしたい」と言います。いい選手が集まってチームを作っても、主力が1人、2人と抜けていき、チームが衰退するのはよくある話です。KUNOICHIというチームをつなぎ、ビーチハンドボールの考え方を伝えていくことで、日本のレベルを上げていきたいと、星野は願います。

「ビーチは理屈さえわかれば、サイズや身体能力に関係なく戦えると思うんですよ。インドアよりも身体接触ができないルールですし、身体能力よりも頭の回転が勝負になってきます。だから自分で考えてプレーできるための引き出しを持ってもらいたいんです。せっかく時間とお金をかけてビーチでプレーするんだから、一生ものの財産を持ってほしい。考える引き出しがあれば、ちゃんと悔しがれるんじゃないかな。ただ『わ~い』と楽しむだけではなく、本質を議論できる楽しさを追求したいですね」

いいハンドボールをしていると、見る人には伝わるのでしょう。KUNOICHIがフィリピンでプレーしたと伝え聞き、今度は別の国からもオファーがあったそうです。KUNOICHI以外にも、オーストラリアなど海外でプレーするチームや選手が増えてきました。世界とつながれるのも、ビーチハンドボールの魅力のひとつです。

ビーチハンドボール ゴールキーパー(GK)1人とコートプレーヤー(CP)3人の計4人でプレーする。交代は自由。GKと同じユニフォームを着た「スペシャルプレーヤー」が攻撃参加するので、常に4対3の攻撃側有利で試合が行われる。スペシャルプレーヤーのシュートや、スカイプレー(空中でパスをもらって打つ)、スピンシュート(空中で一回転するシュート)などの創造性の高いシュートは2点になるのが大きな特徴。近い将来の五輪競技を目指している。試合は1セット10分で、2セット先取したチームの勝ち。お互いに1セットずつを取った場合、第3セットはシュートアウト(サッカーのPK戦を、ワンマン速攻のような形で行う)で決着をつける。

星野美佳 1984年2月27日生まれ、愛知県出身。身長160㎝、右利き。桜花学園高~愛知教育大~三重バイオレットアイリス。インドア時代は右利きのライトウイング(右サイド)。高い守備力と、柔軟性を生かした倒れ込みシュートが武器だった。日本リーグで5年間プレーしたが、インドアでの代表経験はなし。引退、結婚後にビーチハンドボールに目覚め、念願の日本代表入りをビーチで果たした。世界を目指すために、愛知県碧南市を拠点としたビーチハンドボールチーム「KUNOICHI」を2018年に立ち上げ、各地で体験会を開くなど、普及、育成にも力を入れている。 

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