テッチャン、フワ、ガツ、ハチノス、アキレスにシマチョウ……。大阪の下町のソウルフードがホルモンです。リーズナブルな値段で、部位ごとに違う食感、濃厚な脂とタレの味、ほどよく残る獣臭さを楽しめます。社会人野球の取材で立ち寄る大阪・西成を中心に、昔お世話になった店、新規開拓に成功した店などを紹介していきます。 ※営業時間はご確認ください。
第3試合終了後「夜9時過ぎでも持ち帰りOK」の店へ
京セラドーム大阪で行われる、社会人野球の日本選手権。朝の10時から夜の9時過ぎまで、ひたすら野球を見て、写真を撮って、スコアをつけ、話を聞きます。第3試合終了後の楽しみが、ホルモン炒めのテイクアウトでした。JR大正駅の近くにあった「忠岡屋」は夜遅くまで営業していて、とても便利なお店でした。
JR大正駅近く「忠岡屋」。ホルモン炒めグラム160円
「忠岡屋」では不愛想なオヤジさんが黙々とホルモンを焼き、割れたプラケースにホルモンをギュウギュウに詰め込んでいました。袋の中でタレがこぼれるし、ホルモンは獣臭いし、外で焼けるのを待つのは寒いしで、なかなかハードルの高いお店でした。でも遅い時間に100グラム160円でホルモン炒めが手に入るのだから、文句は言えません。七味とネギを用意して、テッチャン(小腸)とフワ(肺)200グラムずつをご飯とともに食べるのが、毎晩の楽しみでした。
ある日突然、ホルモン難民に
一時期日本選手権が神戸・ほっともっとフィールドで1回戦が行われたため、京セラドームに行く機会が減っていました。2022年秋、久しぶりにJR大正駅周辺に行くと「忠岡屋」はなくなり、携帯ショップに変わっていました。なんてこった!長時間社会人野球を見た帰りに、ホルモン炒めが食べられないなんて。かくして昨年の秋から、ホルモン難民になったのです。
「肉のさかもと」名物すじコン
大阪で泊まる時は、JR新今宮駅(地下鉄動物園前駅)周辺の安宿に泊まります。通天閣界わいには美味しいホルモンの店がいくつかあります。午前中に余裕がある時は「肉のさかもと」まで行って、名物のすじコンをテイクアウトするのが楽しみでした。
脂とゼラチン質の塊
「すじコン」とは、牛すじ肉とコンニャクを甘辛く煮込んだものです。「肉のさかもと」ではアキレス(アキレス腱)を使っているので、赤身肉はほとんどありません。プルプルの半透明なゼラチン質がてんこ盛りになっています。ひとパック(大500円)食べると、脂で口がテカテカになります。バラムツとかノドグロみたいな脂が乗った高級魚と同じですね。美味しいけれど、食べすぎると危険が待っています。
すじコン、お前までいなくなるのか
ところが、今年になって「肉のさかもと」に行くと、「すじコン」のコーナーがなくなっていました。テイクアウトは揚げ物だけになったようです。昼の楽しみも消えてしまったのか。ホルモン炒めは他にあっても、「すじコン」は「肉のさかもと」しかないんですよね。「すじコン」のぬくもりを思い出しながら、私は足早に店の前を立ち去りました。ああ、あの熱々でズルズルのすじ肉にはもう会えないのか。美味しい脂でギトギトになった口を、なめ回すことはもうないのか。大切な人を失くしたような気分です。
肉のさかもと
住所:大阪市浪速区恵美須東1-22-6
営業時間:10~16時(木曜日定休。揚げ物は売り切れ次第終了)
こぎれいになった「ホルモンうどん権兵衛」
なくなった食べ物の思い出だけでは、お腹はふくれません。今もやっている店に目を向けましょう。ホルモン焼きそば等で有名な「ホルモンうどん権兵衛」は、昔は新今宮駅の高架下にありました。いかにも下町といった雰囲気で、西成の諸先輩方が壁に向かいながら黙々とホルモン焼きそばを食べる、ハードコアな店でした。ところが最近は通天閣の近くに移転して、店もすっかりリニューアル。女性客でも入りやすい、こぎれいな感じに生まれ変わりました。
煮込みの汁で蒸し焼きにするホルモン焼きそば
味の方はいい意味で変わっていません。焼きそばの麺を蒸す時に、ホルモン煮込みを汁ごと入れて作ります。だからホルモンは味が染みていてフヨフヨです。麺にもしっかりホルモンの味が入っています。ソースと醤油(というか煮込みの汁)がほどよくミックスされた、他の店にはない味つけです。麺を3玉使う大770円を食べるとお腹いっぱい。もう他に何も入りません。
ホルモンうどん権兵衛
住所:大阪市浪速区恵美須東1-23-5
営業時間: 12~19時(木曜日定休)
夜の救世主「俺の西成」
さて、肝心の夜の部なのですが、新たな候補が見つかりました。JR新今宮駅を降りてすぐのところにできた「俺の西成」が、夜遅くまで営業していて便利です。手書きの荒々しい看板のおかげか、新規店舗なのにすんなりと街に溶け込んでいます。
アブラがきっかけで会話が生まれる
店頭でマスターが炭火で串を焼いていたので、アブラを5本注文しました。すると立ち飲みをしていたおっちゃんが、声をかけてきました。
男「ここの店のアブラ、食べたことあるの?」
久保「いや、初めてですよ。他の店のアブラなら、食べたことあるけど」
男「ここのアブラはめっちゃうまいから」
久保「美味しそうですよね」
男「絶対期待を裏切らへん。見てのとおりのおいしさやから」
ここに店のおばちゃんが割り込んできます。
おば「ウチのアブラ、食べたらヤミツキやで」
久保「怪しい粉でもかけてるんですか?」
おば「西成の粉や!」
久保「捕まるで!」
西成警察署のお膝元で、かなり際どいブラックジョーク。味つけは普通に塩コショウですので、ご心配なく。
アブラから染み出る脂
実に大阪らしい適当な会話を楽しんでいるうちに、アブラが焼きあがりました。マスターも会話に参加してきます。「想像以上の味やからな」と。実際に食べてみると、熱々の脂が、噛むたびに染み出てきます。アブラは店によって使う部位が違いますが、ここのは豚肉の脂部分をシンプルに使っているようです。この串1本120円で、ご飯が進むなあ! 後日テイクアウトしたホルモン串も美味しかったのですが、アブラの方がダイレクトにうまみを感じられました。疲れた脳の隅々にまで脂のうまみが伝わっていく感じ、わかりますか?いくつになっても脂は美味しいのです。
俺の西成
住所:大阪市西成区太子1-3-23
営業時間:10~23時(不定休)
西成も物価高ですが
最近は何でも値上がりで、「チャーライ極」で食べた西成チャーライホルモン大盛りは1200円をオーバーしてしまいました。西成で炒飯が1000円以上なんて!上に乗っているホルモンにはハチノスも入っていて、かなりぜいたくなトッピングなのですが、値段が値段です。動物園前の安宿も、昔は1泊2000円ちょっとだったのが、今は繁忙期だと3000円オーバーだったりします。
昔より多少値上がりしていますけど、これからも大阪に行く時は安宿を利用して、ホルモンを食べて、社会人野球やハンドボールを楽しみたいと思います。来季から男子の日本ハンドボールリーグにアルバモス大阪が参戦することですし、行く機会も増えるでしょう。今回は大阪で仕事帰りに食べたい内臓肉について書きました。「西成でホルモンなら『やまき』を知らない時点でもぐりだろ」といったクレームは受け付けませんので、あしからず。
チャーライ極
住所:大阪市西成区山王1-1-10 天王寺パークヴィラ 1F
営業時間:10~15時、18~20時(不定休)
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