【車いすハンドボール】日本代表、世界選手権で「銀」。初の快挙

世界選手権で銀メダルを獲得した車いすハンドボール日本代表=2026年9月20日、スペインのパラウ・デ・エスポルト・デ・グラノリェースで(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
第4回IHF車いすハンドボール世界選手権で銀メダルを獲得した日本代表=2026年9月20日、スペイン・グラノリェースで(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
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第4回IHF車いすハンドボール世界選手権は2026年9月16-20日、スペイン・グラノリェースで開催され、日本代表は決勝進出。開催地スペインに第3セットで惜しくも敗れましたが、日本ハンドボール界では全カテゴリーを通じて初となる、世界大会での銀メダルを獲得しています。選手、スタッフが一体となり、世界一まであと一歩に迫った大会を振り返ります。

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日本自慢の2ユニット

松本賢コーチはドイツで7人制のプロ経験があるだけでなく、ビーチハンドボールにも長く携わってきたので、数的優位を攻略する方法を熟知している=2026年7月、久保写す
松本賢コーチはドイツで7人制のプロ経験があるだけでなく、ビーチハンドボールにも長く携わってきたので、数的優位を攻略する方法を熟知している=2026年7月、久保写す

4人制の車いすハンドボールの国際ルールは、ハンディキャップの持ち点の合計が4人で11点です。軽度の障がいがある選手はクラス4で、ハイポインターと呼ばれます。中度の障がいの選手はクラス3のミドルポインター。障がいが重い選手はローポインターと呼ばれ、動きに応じてクラス1もしくは2になります。またコート上の4人のなかに、必ず1人女子選手を入れる決まりになっています。

日本代表が初めて世界選手権に出場した2024年、4人のハンディキャップの合計が12点でした。今回は11点にルールが変更されたため、前回と同じ布陣では戦えません。今大会の日本代表では、大西満監督はチーム全体のマネジメントに徹し、戦術面は松本賢コーチに一任していました。松本コーチは、11点で組める2つの基本ユニットを作っています(名前のあとの数字は、ハンディキャップのクラス)。

攻撃的ユニット
森谷幸生4、諸岡晋之助4、古矢千尋2女、村上慶太1

7人制ハンドボール経験者の森谷と諸岡を同時に使う、最もシュート力のある組み合わせです。このユニットでカギとなるのは、クラス1の村上です。ローポインターでも動けて、優秀なスクリーナーの村上は、諸岡、森谷が気持ちよく打てるスペースを作ります。 

守備的ユニット
森谷幸生4、伊藤優也3、永田裕幸2、古矢千尋2女

チェアスキル(車いす操作)が国内最高の選手を揃えた組み合わせです。タイトなマンマークができるクラス3の伊藤を中心に、相手陣内から高く仕掛ける「ハイプレス」でボールを奪います。2年前には機能しなかったこのユニットが額面どおりの力を発揮すれば、日本の戦術の幅が広がります。

この2つのユニットをベースに、車いすソフトボールで活躍する強肩左腕・小貫怜央4をGKに入れて、直接ゴールで2点を狙う組み合わせや、平井楓花3女を入れた組み合わせも練習してきました。

予選ラウンドは絶好調

車いすのロストバゲージという思わぬアクシデントから始まった日本でしたが、大会前日に競技用の車いすが空港で見つかり、予選ラウンド2試合は絶好調でした。前回準優勝のアメリカ、初出場のオーストラリアを下し、準々決勝に進出します。試合の前半は攻撃的ユニットでリードを奪い、後半は守備的ユニットで締めくくるパターンが効果的でした。特にオーストラリア戦ではハイプレスがおもしろいように決まり、ハイプレスからボールを奪った永田がそのままバックシュートを決めて、IHFのハイライト動画になっています。

オーストラリア戦のスーパープレー集(IHFの公式Xより)

準々決勝、またも宿敵エジプト

日本の伊藤優也(写真左)と、エジプトのマグディ・タラート(同右)のマッチアップ(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
日本の伊藤優也(写真左)と、エジプトのマグディ・タラート(同右)のマッチアップ(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

準々決勝の相手は、2年前と同じエジプトになりました。前回大会では第3セット終了間際に、右サイドの角度のないところから打ち込まれて、1点差で敗れました。前回大会優勝のエジプトを最も苦しめたのが日本でした。宿敵と再び相まみえることとなり、松本コーチが檄を飛ばします。

「エジプトと対戦しないでメダルを獲(と)っても、モヤモヤが残るだけ。必ずエジプトにリベンジして、メダルを獲ろう」

日本代表がチーム全体で共有していたのが「勝者のマインド」でした。苦しい時こそメンタルを崩さない。どんなに点差を離されても、最高のプレーを継続する。最悪の事態を想定し、それでも勝ち切る。キャプテンの森谷が率先して「戦う姿勢」を示しながら、チームの士気を高めてきました。

クラス1の村上慶太がクラス2に! 予想外

クラス1のはずの村上慶太が、大会途中でクラス2になる事態に(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
クラス1のはずの村上慶太が、大会途中でクラス2になる事態に(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

それでも現実は、想像のはるか上を行きます。予選ラウンドが終わった段階で、大会のクラス分け担当者が「村上さんはクラス1ではなく、クラス2です」と言ってきました。日本も当然抗議します。村上は車いすバスケットボールで10年間クラス1でプレーしてきた選手です。クラス1でも動けて、力強いスクリーンプレーができるので、今大会のキーパーソンでした。その村上がクラス2になると、日本の戦い方が根底から崩れます。岡田美優総務と安田孝志トレーナーが異議申し立ての文書を作成、提出しましたが、準々決勝以降、村上はクラス2の扱いになりました。大一番のエジプト戦で、村上を入れた4、4、2、1の攻撃的ユニットが使えません。日本、大ピンチです。

GK交代から流れつかむ

永田裕幸は車いすバスケットボールで、2016年のリオデジャネイロパラリンピックに出場している。車いすハンドボールでも攻守にツボを押さえた動きを見せる(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
永田裕幸は車いすバスケットボールで、2016年のリオデジャネイロパラリンピックに出場している。車いすハンドボールでも攻守にツボを押さえた動きを見せる(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

エジプトとの第1セットは、森谷4、伊藤3、永田2、古矢2女の守備的ユニットでスタートしましたが、6-10で落としました。エジプトのエースで前回大会得点王のマグディ ・タラートは点を取るだけでなく、GKでも大当たり。日本のシュートを何本も止めて、流れを渡しません。

第2セットで日本は、GKを女子選手の古矢から永田中心に切り替えました 。2年前の前回大会を経験した永田は、ローポインターのGKの重要性を感じ、松本コーチとともにGKでも練習してきました。

「エジプトはマグディを中心にセットを組んでくるから、彼のシュートを止められるGKが必要になってきます。本当は(クラス4の)森谷をGKに置きたいけど、森谷には相手のエースを止めてもらいたいので、(クラス2の)僕がGKできればと思って。古矢さんもDFでファイトしてくれて、いいシュートを打たせないようにできたのが、ひとつポイントになったかな」

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