【ハンドボール】飛騨高山ブラックブルズ岐阜が挑む「プレーオフ初出場」

飛騨高山ブラックブルズ岐阜の看板選手は、GKの邉木薗結衣。どんな時にも体の中心をシュートに近づけていけるGKで、2026-27シーズンは阻止率リーグ1位をめざす=2026年9月、ブラザー工業体育館で(久保写す、以下すべて)
飛騨高山ブラックブルズ岐阜の看板選手はGKの邉木薗結衣。どんな時にも体の中心をシュートに近づけていけるGKで、2026-27シーズンは阻止率リーグ1位をめざす=2026年9月、名古屋市瑞穂区のブラザー工業体育館で(久保写す、以下すべて)
  • URLをコピーしました!

ハンドボール・リーグHは2026年10月12日に開幕します。女子の飛騨高山ブラックブルズ岐阜はプレシーズンマッチで好調で、リーグH開幕記者会見ではキャプテンの角森彩が「プレーオフ初出場」を宣言しました。司令塔の吉本里緒にGKコーチ兼任の田口舞と、2人のプレーオフ経験者が加わり、チームの意識改革が進んでいます。今季にかけるブルズの意気込みを紹介します。

目次

豊島梨奈と小林可奈が引退

勝負どころのシュートを何本も決めてきた豊島梨奈。ヒザの痛みには勝てず、2026年5月限りで惜しまれながら引退した=2025年9月
勝負どころのシュートを何本も決めてきた豊島梨奈。ヒザの痛みには勝てず、2026年5月限りで惜しまれながら引退した=2025年9月

2025-26シーズンの飛騨高山ブラックブルズ岐阜は、3勝17敗で勝ち点6。リーグH女子11チーム中10位でした。GK邉木薗結衣がリーグ3位の高い阻止率(.375)を残したものの、純正のプレーメーカーがいないこともあり、得点力不足で勝ちきれませんでした。しかも2025-26シーズンを最後に、レフトウイングの豊島梨奈、ライトバックの小林可奈が揃って引退。得点源2人がいなくなる非常事態となりました。

高度なシュート技術を誇る豊島は、勝負どころの1本を常に任されてきました。伊藤寿浩ヘッドコーチが「人間的に最も信頼できる選手」と言っていた豊島の引退は、大きな痛手です。左利きの小林は、小柄でも9mの外から打ち込めるシュート力で、入団以来チームを支えてきました。伊藤ヘッドも「ケガと蓄積疲労がなければ、日本代表に入れた選手」と、小林の実力を高く評価していましたが、最後のシーズンはケガもあり、本来のパフォーマンスを発揮できませんでした。

プレシーズンマッチ1勝1敗

得点が入って喜ぶブルズベンチ。今季はこういうシーンが多く見られそう
得点が入って喜ぶブルズベンチ。今季はこういうシーンが多く見られそう

絶対的なフィニッシャーと、リーグ有数の左利きのバックプレーヤーが引退し、ブルズのOF陣は大丈夫なのか。2026-27シーズンは、より一層得点力不足に陥るのではと懸念されていました。

ところがふたを開けると、予想以上にOFが機能していました。2026年9月に名古屋のブラザー工業体育館で行われた「東海クラブダービー」で、飛騨高山ブラックブルズ岐阜は1勝1敗。三重バイオレットアイリスには敗れたものの、HC名古屋には27-21で勝利し、プレシーズンマッチでファンを安心させました。 

吉本里緒、センターに定着

新人の有隅晴香はピヴォットで戦力になりそう。ライン際のスペースを利用するのがうまい
新人の有隅晴香はピヴォットで戦力になりそう。ライン際のスペースを利用するのがうまい

OFが変わったのは、香川銀行シラソル香川から移籍した吉本里緒がセンターに定着したからです。チーム待望の司令塔が加入し、ブルズのセットOFが見違えるほど整理されてきました。2対2をわかっている吉本が真ん中にいるから、ピヴォットの角森彩のスライドプレーが生きます。吉本がOFの大枠を作るので、レフトバックに入った近内智春も楽に動けます。近内も2対2を理解しているから、吉本と響き合うシーンが何度も見られました。

いいセンターがいるとピヴォットが育ちます。キャプテンの角森をライトウイングに回した時間帯では、ピヴォットの有隅晴香が巧みなスライドプレーを見せていました。3枚目DFでもいい働きを見せ、伊藤ヘッドは「(新人の)有隅が攻守に使えるのが大きい」と喜んでいました。

近内智春、2対2狙える

加入2年目の近内智春は、吉本里緒と響き合えるハンドボールIQの持ち主
加入2年目の近内智春は、吉本里緒と響き合えるハンドボールIQの持ち主

吉本はOFの組み立てを、このように話していました。

「一人ひとりタイプが違うから、その人が動きやすいよう組み立てています。近内さんはシュート力があるし、2対2も狙える選手なので、そこを使いながら組み立てました。今日は名古屋が前に出てくるDFだったから、裏のスペースを使いながら攻めました」

吉本の統率力は、香川銀行シラソル香川での6年間で培ったものです。リーグH参入前の部員が少なくなった時代に、香川銀行の亀井好弘監督は、宣真高校(大阪)から入って間もない吉本をセンターに抜てきし、勝つためのOFを教え込んでいます。その後香川銀行はリーグHに参入し、岡田彩愛、松浦未南といった日本代表クラスのセンターを獲得。吉本はスタメンから弾き出されました。それでも亀井監督は吉本を重宝し、OFの流れが悪い時にワンポイントで吉本をコートに立たせて、試合を立て直していました。2026年6月のプレーオフでは、ワンポイントで出てきた吉本がステップシュートを決めて、強烈なインパクトを残しています。 

吉本「自身の成長を試したい」

吉本里緒はチーム待望のプレーメーカー。移籍早々にブルズのOFをまとめ、統率力を見せている
吉本里緒はチーム待望のプレーメーカー。移籍早々にブルズのOFをまとめ、統率力を見せている

亀井監督への恩義を感じながらも、吉本は出場時間を求めてブルズに移籍しました。

「自分自身がどれだけ成長したのかを、コート上で試したい思いがありました。上手な人ばかりが集まっていなくても、チームとして勝てることを証明したいです。高山市の人たちはとても温かくて、そんな地域のみなさんと共に勝って、1位という景色を一緒に見られたら、高山の街も盛り上がるだろうし、ハンドボール界ももっと盛り上がるかな」

香川での2025-26シーズンに見た頂点の景色を飛騨高山でも見たいと、吉本は思い描いています。 

高橋杏奈「戻って守れるように」

髪を切った高橋杏奈。3枚目DFでのハードワークは今年も健在
髪を切った高橋杏奈。3枚目DFでのハードワークは今年も健在

吉本が入ったことでOFが整理され、トータルでもいい効果が生まれています。DFの要で、昨季までキャプテンだった高橋杏奈は、ハンドボールの4局面でのつながりを感じていました。

「点が入ると、速攻で押されることも減りますね。昨季はOFのミスから戻れなくて、相手の速攻にやられるシーンが多かったのが、今回のプレシーズンマッチではシュートまで行けていたので、戻って守ることができました。昨季試合に出られなかった子が、自分のプレーを出していけたところもよかったですね」

セットOFがシュートで終わるから、たとえシュートを外しても、戻ってDFを整える時間が作れます。セットDFで守れたら、ブルズの強みであるGKで勝負できるし、堅守速攻の楽な得点も増えてきます。

伊藤寿浩ヘッド「最後は個の強さ」

理論と情熱を合わせ持つ伊藤寿浩ヘッドコーチ。女子選手にも1対1で勝負できる「個の強さ」を求める
理論と情熱を合わせ持つ伊藤寿浩ヘッドコーチ。女子選手にも1対1で勝負できる「個の強さ」を求める

伊藤ヘッドはセットOFに手応えを感じつつも、さらなる個の強さを求めていました。

「香川銀行が2対2で相手を崩すと言っても、最後は松浦未南が1対1で点を取ってくる。ウチもそういう個の強さ、コインの表裏で言う『表』のプレーをもっと磨いていきたい。『裏』を使う駆け引きは、そのあとでいい」

整理されてきたセットOFに、伊藤ヘッドが求める個の強さが合わされば、課題だったブルズの得点力が改善されそうです。 

田口舞、7年ぶりにブルズ復帰

背番号18の田口舞がGKコーチ兼任でブルズに復帰。ただシュートを阻止するだけでなく、ポジティブな声かけがチームの財産になる
背番号18の田口舞がGKコーチ兼任でブルズに復帰。ただシュートを阻止するだけでなく、ポジティブな声かけがチームの財産になる

吉本のほかにもう一人、プレーオフ経験者がブルズにやってきました。GKコーチ兼任の田口舞です。熊本ビューストピンディーズから移籍してきたリーグH女子最年長プレーヤーは、7年ぶりに古巣に戻ってきました。背番号18をつけて声を出す姿は以前と変わらず、それでいて経験値は増しています。

吉本と田口が加わり、チーム内に大きな変化が生まれたと、伊藤ヘッドは見ています。

「吉本と田口が『プレーオフ』という言葉を口にすることで、チーム内に対立が起こりました。でもそれは悪いことではないし、選手同士で解決してほしいので、あえて介入しません。2人の存在が、チームの当たり前の基準を上げてくれました」

「田口の振る舞い、感情の落ち着きも大きいです。ブルズは若いチームなので、負けて落ち込みすぎたり、逆に些細なことで喜びすぎたりと、気持ちの面での浮き沈みがありました。でも今年は実力と経験のある田口が雰囲気を作ってくれるので、若い選手もわかってきました。ここは盛り上がっていいんだとか、落ち込む必要はないんだとか」 

角森彩、プレーオフ出場宣言

2026年10月5日、リーグH開幕記者会見でのキャプテン角森彩。小さくても攻守にファイトできる角森が、今季のブルズを率いる
2026年10月5日、リーグH開幕記者会見でのキャプテン角森彩。小さくても攻守にファイトできる角森が、今季のブルズを率いる

様々なチームでプレーしてきた田口は、ブルズの選手のよさを理解しています。

「ブルズの選手は仕事もしっかりやりながら、ハンドボールをしています。他のチームよりも大変な環境だけど、その分みんな大人というか、気遣いができて優しい子が多い。だからこそ、もっと自分を出してもいい。『こういう仕事をやりながらでも、プレーオフに行けるんだよ』と」

2026年10月5日のリーグH開幕記者会見で、キャプテンの角森は「目標はプレーオフ初出場」と宣言しています。

「田口さんから『言葉にしていった方がいい』と言われていたので、記者会見でも『プレーオフ』という言葉を口にしました。チーム全体の意識付けになるし、全員が同じ方向に向けるから、いい影響が出ると思います」

どのチームと対戦しても僅差で負けていた飛騨高山ブラックブルズ岐阜が、突き抜けるきっかけをつかむシーズンになるでしょうか。

Pen&Sports ニュースレター(無料)に登録する

スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]は毎週、無料ニュースレターを配信しています。原田亜紀夫編集長が勝ち負けを伝えるだけに終わらない、舞台裏のストーリーや本質に焦点を当てたコラムをお届けします。読めばニュースの見方が多面的になり、きっと気づきがあるはずです。登録・解除はいつでも可能です。

個人情報の扱いはプライバシーポリシーをご覧いただき、同意の上でお申し込み下さい。

  • URLをコピーしました!

\ 感想をお寄せください /

コメントする

目次