【車いすハンドボール】日本代表、世界選手権で「銀」。初の快挙

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古矢千尋、役割変更にアジャスト

古矢千尋(写真左)は貴重な女子のローポインター。古矢が長時間コートにいてくれるから、チームが落ち着く(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
古矢千尋(写真左)は貴重な女子のローポインター。古矢が長時間コートにいてくれるから、チームが落ち着く(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

エジプトのエース・マグディをタイトに守り、他の選手の単調なシュートをGK永田で止めて、流れを呼び込みました。女子選手の古矢もポジション変更の意図を汲み取り、新たな役割にアジャストしています。

「永田君がGKに入ると、守れる選手が1人いなくなるので、そこがマイナスにならないようプレーしました。4人制の車いすハンドボールは役割が固定ではないし、GKは誰がやってもいいから、私も『たまにはCP(コートプレーヤー)で出たいな』と思っていました」

エース諸岡晋之助で巻き返す

エース諸岡晋之助のシュート。写真は準決勝のポルトガル戦のもの(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
エース諸岡晋之助のシュート。写真は準決勝のポルトガル戦のもの(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

守りでリズムをつかんだ日本は、満を持して投入したエースの諸岡で得点を重ね、第2セットを11-9で取り返します。諸岡はベンチにいた時から終始冷静でした。

「1セット目で相手を観察して『こういうプレーが来るよね』『僕らはこういう風にできるよね』というのを得られたのがよかったです。日本が一番強い手札を切らないで、相手の情報を収集できたし、途中からGKに入った永田さんの阻止率も高かったから、負ける気がしませんでした」

3セット目はキャプテン森谷が得意のティルティング(片輪を上げて打つシュート技術)で、GKマグディとの7mスロー対決を制します。最後は日本得意のハイプレスでマグディを守り、他の選手のイージーシュートをGK永田がキャッチ。5-4で逃げ切り、エジプトにリベンジしました。日本協会のアンケートにもあるように、多くの選手、スタッフが「一番印象に残っているのはエジプト戦の勝利」だと言っています。最大の難敵を下し、日本は初のメダル獲得へ大きく前進しました。

公益財団法人 日本ハンドボール協会:【第4回車いす世界選手権】選手コメント 

決勝はスペインに1点差

日本の諸岡晋之助(写真左)と、スペインのロレンソ・エンボ・エジャン(写真右)。エース同士の激しいぶつかり合い(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
日本の諸岡晋之助(写真左)と、スペインのロレンソ・エンボ・エジャン(写真右)。エース同士の激しいぶつかり合い(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

準決勝のポルトガル戦では、第2セットで女子選手の要・古矢が失格になるアクシデントを、代わりに入った平井が残り3分間をしのいで勝利しました。異議申し立てが認められ、決勝の直前に村上のクラスが再び1に戻るという出来事もありましたが、決勝は開催国スペインと第3セットまでもつれた末に敗れました。第3セットで村上がかけた最高のスクリーンがオフェンシブファウルと判定される場面もあり、世界一まであと1点に迫りながら届きませんでした。

「そういったところも踏まえて、圧倒的な力の差で勝てるくらいの技量が必要」

決勝を振り返って、古矢が言います。「決勝で1点差で負けた瞬間、『あと2年がんばろう』と思えました」とも言っていました。数字に残らないところでの貢献度が高い古矢は、日本の女子の第一人者。日本が金メダルを獲るために、絶対に欠かせない存在です。

諸岡は男子MVPと得点王に

諸岡(写真左)は得点王と男子MVPのトロフィーを両手に記念撮影(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
諸岡(写真左)は得点王と男子MVPのトロフィーを両手に記念撮影(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

エースの諸岡は得点王(5試合で59得点)と男子のMVPのダブル受賞。準優勝国からMVPが選ばれるのは珍しいことです。前回大会よりも出場時間をセーブしながら、得点、アシストの両方でチームに貢献しました。

「今回賞をいただいたのは運もあります。まだまだ世界一は遠いし、プレーヤーとしてもまだまだと思うので。チームの持ち点が12から11に減った分、エースがどれだけ試合を支配できるかが、より勝敗に直結するようになりました。エジプトのマグディに、得点力だけなら僕も負けていない自負はありますけど、GKも含めた総合的な支配力という意味では、彼が本当に車いすハンドボールのナンバーワンだなと感じています」

「みんなから『おめでとう』と言ってもらえてありがたいけど、心の中には悔しい思いがずっと残っています。決勝は勝てる試合だったし、1点差はすごく悔しい。でも、こうやってしっかり準備して大会に臨めば勝てると証明できたのは、大きな財産だと思います」 

「金」へ体制づくりを 

高度なチェアスキルと巧みなボールさばきで、車いすハンドボール日本代表は世界を驚かせた(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)
高度なチェアスキルと巧みなボールさばきで、車いすハンドボール日本代表は世界を驚かせた(写真提供:IHF / Kolektiff / Sasa Pahic Szabo)

何もないところから、選手、スタッフのがんばりで、日本代表は金メダルまであと一歩のところまで来ました。ここから先は競技を支える体制づくりが勝負になります。選手個人の負担を減らし、新たな選手を全国から発掘し、強化合宿の回数も増やして、車いすハンドボールの基盤を強化していくことが、壁を乗り越える力になります。世界選手権優勝はもちろん、その先には2032年ブリスベンパラリンピックで正式種目に採択され、日本が初代王者になるといった壮大な夢があります。今回の世界選手権銀メダルが、日本の車いすハンドボールを取り巻く環境を変えるきっかけになりますように。

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