サッカー男子日本代表は2026年5月31日、東京・国立競技場でアイスランド代表(FIFAランキング75位)と国際親善試合(キリンチャレンジカップ2026)を行い、1-0で勝利を収めた。ワールドカップ本大会前の最後の対外試合に、どのような意図があったのか読み解く。
吉田麻也をサプライズ招集
4年ぶりに招集された吉田麻也(37)は、キャプテンとして先発し14分まで出場した。ピッチを退く際には、両チームの選手たちが整列して花道を作って送り出した。127試合の代表キャップのほか、日本プロサッカー選手会会長を務めておりピッチ内外での尽力は計り知れない。陽気なキャラクターで知られるが、ピッチを出る瞬間に汗に混じって感涙も見られた。
突然のサプライズ招集は、クリスタル・パレスFCの欧州カンファレンスリーグ決勝に出場することを優先させた鎌田大地の代役とも言われるが、それ以上に重要なミッションが含まれていた。
2023年から米国メジャーリーグサッカーのロサンゼルス・ギャラクシーでプレーしている吉田麻也が代表に合流することで、選手たちに現地事情や対策について生の声を届けることができる。多くの代表選手が欧州でプレーしており、アメリカ大陸は新世界だ。吉田麻也との交流は、非常に貴重な予習の機会となった。
アイスランド戦はワールドカップの壮行試合という位置づけだった。62,212人の観客を前にした壮行セレモニーでは元なでしこジャパンでバロンドーラーの澤穂希も登場し、祝福ムードに包まれた。
この試合で勢いに乗ることを森保一監督は目指している。しかし、開催地に向かう飛行機に乘ったら代表団はお祝いムードは封印し、戦いに気持ちを切り替える必要がある。
小川のヘッダー、菅原がアシスト
これまでの国際試合シリーズがテスト試合だとすれば、アイスランド戦は調整試合のような雰囲気があった。森保一監督が事前に明かした意向通り、負傷後にコンデションを上げているフェーズにある遠藤航や冨安健洋が先発した。
キックオフすると、予想通りホームの日本がボールを支配し、対するアイスランドは用意周到に守りを固めた。試合が膠着し、攻め手を欠いた日本。
しかし、ワールドカップでも適用される時間稼ぎを是正する新ルールにより、アイスランドが選手交代に手こずって1人少ない状態になり、87分に菅原由勢の右クロスに小川航基が頭で合わせて得点。菅原由勢は地味ながら、ヴェルダー・ブレーメンでもサイドからアシストを量産している。
日本は試合終了間際に1-0として、かろうじて勝利してホームチームの面目を保った。
システムと組み合わせテスト
日本の基本システムとなる【3-4-2-1】で試合に入ったが、森保一監督は11人の選手交代を行い、試合展開に応じて多くのシステムと選手の組み合わせをテストした。基本とするシステムがありながらも、試合中に布陣を変幻自在に変えていく予行演習となった。
今回の招集メンバーで出場機会がなかったのは4選手。1試合であまりに多くのGKが出場するのはベースがなし崩しになる可能性がある。大迫敬介はベンチを温め、第3GKの立ち位置にいると見られる。
鈴木唯人は、鎖骨骨折からの回復途上で大事を取ったと考えられる。
前田大然は前方で激しい守備を行いたい時のカードであり、日本がボールを支配するアイスランド戦では特徴が生きにくく、起用されなかった。ワールドカップで一番力を発揮するのは、強豪相手に守りを意識する時だろう。
鈴木淳之介は、後方から個人で打開して前進したり、前方に絶妙なパスを入れたりするのが得意な選手であり、アイスランドのような守備を固めるチームを攻略するための専門職のような存在だが、この試合では起用されなかった。森保一監督は、他のテストを優先させたいと考えたか、ポリバレントで多くのポジションでプレー可能な鈴木淳之介を本番に向けた不確定要素として秘匿した可能性が考えられる。
ワールドカップ・アジア予選で2025年6月に鈴木淳之介が代表デビューした際に筆者は「日本代表の最終兵器になる」と評価した。引いて守ってくる国に対して後方から突破口をこじ開けることを期待している。(下に記事が続きます)
中村敬斗と伊東純也の共演
アイスランド戦では、中村敬斗が左ウイングバック、そして伊東純也が左シャドーストライカーで先発した。2人は阿吽の呼吸で息のあった滑らかなコンビネーションを見せた。メンバー発表直前に三笘薫が左大腿部(ハムストリング)に大ケガを負い、攻撃陣が誰になるかは注目されている。
それに先立つ2026年初頭にリーダー格だった南野拓実や世界的なウインガー三笘薫など、攻撃陣の負傷が相次いだ際に、筆者はコンビネーションが抜群ながら左右ウイングバックで離れてプレーしている中村敬斗と伊東純也をより近い位置でプレーさせるべきだと提言してきた。
中村敬斗と伊東純也はスタッド・ランスの元チームメイトで友情と信頼の絆で結ばれており、代表チームを超越したクラブレベルの連携でチーム力を底上げすることができる。
森保一監督は、今回そのテストを行い、大成功だったと言っていいだろう。
土壇場で瀬古歩夢をアンカー起用
遠藤航は、違和感を覚えて大事を取ってハーフタイムに退いた。代わって守備的MFとして途中出場したのが瀬古歩夢だ。
本職がセンターバックであり守備力と高さがあり、得点を目指してチームが前がかりになった際に1人で中盤のアンカーを務める場面もあった。
2026年5月15日に本大会メンバーが発表されると守備的MFの選手が手薄だと判明し、誰がそのポジションを務めるのかという問いに対して森保一監督は板倉滉や瀬古歩夢の名を挙げた。
しかし、遠藤航が2026年2月に左足首靭帯断裂という大ケガを負って以降、筆者はそれまでセンターバックのサブに甘んじていた感のある瀬古歩夢をアンカーとしてテストすることを提言してきた。
そして土壇場でついに森保一監督はテストに踏み切り、満足のいく成果が得られた。アンカーに守備と高さを求めるのであれば、瀬古歩夢は非常に有用なオプションになる。
予行演習を終えいざ本番
先述の通り、筆者が不足していると考えていたピースを森保一監督は最後の最後に完了させた。
今後は、トレーニングパートナーとしてサムライブルーに帯同するU-19日本代表とスパーリングを行い開幕を待つことになる。果たして、初優勝を目指す森保ジャパンは、本番でどのような戦いを見せてくれるのだろうか。


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