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【サッカー】埼玉県、魅力度ランク47位でも 熱いサッカー王国

埼玉県のマスコット(コバトン&さいたまっち)=埼玉県県民生活部県民広報課魅力発信担当が配信するフリーダウンロード素材より
埼玉県のマスコット(コバトン&さいたまっち)=提供:埼玉県
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ブランド総合研究所が発表した2025年の都道府県魅力度ランキングで46位から1つ下げて初の最下位となったのが埼玉県だ。なんとも不名誉なレッテルを貼られてしまったが、埼玉県は全国屈指のサッカーどころとして知られ、珠玉のスポーツ文化を育んできたことを忘れてはいけない。埼玉はなぜ、サッカーが盛んになったのだろうか。

目次

アイデンティティ・クライシス

2025年の「都道府県魅力度ランキング」1位~5位は北海道、京都府、沖縄県、神奈川県、東京都で、有名な観光地が上位に入っている。

しかし、人口では約730万人で都道府県ランキング5位の埼玉県。ラオス、ブルガリア、パラグアイとほぼ同じ規模だ。中堅規模の国と同じくらいの人々が住んでいるのには、それなりの理由があるはずだ。

まず、日本経済の中心地である首都、東京に近くて住むのには便利だ。平地が多く温暖で海岸線もないため自然災害も少なく、安心して暮らせる。

しかし、埼玉県は、東京ほど洗練された都会ではない。また、北海道のようなパウダースノーの雪山があるわけではなく、沖縄のようにスクーバダイビングができるエメラルドグリーンの海があるわけでもない。

大都会ではなく、地方ほど大自然があるわけでもない。埼玉県は、これといった存在意義や価値が不明確な、アイデンティティ・クライシスを抱えた状況にあるといえる。

日本代表といえば埼スタ

そんな埼玉県が一躍、全国区になるのが、サッカー日本代表の試合だ。

ホームでの公式戦といった国内の重要な試合になると、必ずといっていいほど「埼玉スタジアム2002」で開催されるのだ。埼玉スタジアムは収容人数63,700人と国内最大のサッカー専用スタジアムであり、ホームサポーターがスタンドを埋め尽くすと相手チームに相当な圧迫感を与える。このホームアドバンテージを得るために、日本代表チームの歴代監督が試合の開催地として希望してきた経緯がある。

埼玉県営の公的施設だが、巨額の予算を使うからには少しでも多くの人が利用できるように陸上トラックも併設しようという議論になりがちだ。しかし、埼玉スタジアムは陸上競技はおろか、ラグビーをするのにも向いていない、サッカーに特化したスタジアムなのだ。数メートルの余地を残せばラグビーの試合が行いやすくなるが、それよりもサッカーの試合でピッチと観客スタンドが近いことを選択した設計哲学が見てとれる。

埼玉には、2019年に開催されたラグビーワールドカップの会場にもなった熊谷ラグビー場(約24,000人収容)もある。(下に記事が続きます)

JクラブやW杯を誘致し、サッカーによる町おこし

「ダ埼玉」という言葉が独り歩きする状況に地元関係者は頭を悩ませていた。

そんななか1993年に開幕する日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に参加する10クラブ(オリジナル10)の一つである三菱重工業サッカー部を誘致することに成功し、浦和レッドダイヤモンズになったのである。

1992年に埼玉県サッカー協会が「新スタジアム建設・ワールドカップ・サッカー大会会場地立候補の請願」を提出。当初は4万人収容の予定だったが、国内随一の人気を誇る浦和レッズに自信を深めたのか、1994年には計画が6万人に拡大され、埼玉県議会サッカー振興議員連盟が発足した。

浦和レッズの観客動員数が飛び抜けているのには、人口規模の大きさもあるが、それだけ地元住民が求めるエンターテインメントと話題を提供しているということだろう。国際大会にも駆けつけて声援を送る熱狂的な浦和レッズサポーターは、海外でも一目置かれる存在になっている。

「海も山も都会もない……。では、スポーツをしよう」。そんな地域おこし運動が埼玉県で立ち上がった。Jクラブ誘致や埼玉スタジアム建設もその一環だ。クレヨンしんちゃんが暮らす「サイタマ」は、ワールドカップの会場になったことで海外のサッカーファンにも知られるところとなった。

草の根サッカーが根付く街「浦和」

Jリーグが発足する前から旧浦和市(さいたま市浦和区)を中心として埼玉県ではサッカーが盛んだった。

漫画『赤き血のイレブン』のモデルとなった浦和南高校など「浦和」と名前につく高校は、だいたいサッカー部が強豪であり、県内のチームが切磋琢磨する時代が続き、全国にも名を轟かせた。また、ジュニア世代でも全国的な強豪チームがいくつもある。

浦和は、教育熱心な地域だったのに加えて、約50万人と人口規模も大きかった。人口が多い、あるいは人口密度が高いことは、団体競技が盛んになる条件になる。世界を見渡してもサッカーが盛んな地域は人口規模が大きく、ビッグクラブがある傾向がある。

加えて、スポーツをするのに適した土地が、埼玉県にはあった。サッカーの国際試合の標準的なピッチのサイズは「105メートル×68メートル」と広い。そのための土地があることが条件になるが、東京は人口過密都市でフィールドの確保にはやや難がある。現在でも東京では、やむなく狭いフィールドで限られた時間内で活動しているグラスルーツのチームが少なくない。近くに活動場所が確保できないため、23区外や埼玉県まで来てサッカーをしている都民もいるが、移動は負担だ。(下に記事が続きます)

さらに盛り上がる埼玉ダービー

さいたま市内で浦和レッズと埼玉ダービーを形成するRB大宮アルディージャは、Jリーグが創設されて以降で外国資本が単独でクラブを買収する初のケースとなった。買収したレッドブルは世界中にサッカークラブを所有する「マルチクラブ・オーナーシップ」戦略を進めており、選手の発掘に力を入れている。埼玉の市場規模は大きく有力選手を多く輩出している地だという点も、魅力的に映ったことだろう。

日本一の予算と集客力のある浦和レッズ。そして海外の巨大資本と最先端のノウハウが注入されたRB大宮アルディージャ。両者が競い合うことで、埼玉県のサッカーはさらに発展することが期待できる。

女性の競技に目を向けると、日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」には、埼玉県から浦和レッドダイヤモンズ・レディース、RB大宮アルディージャWOMENに加えて、ちふれASエルフェン埼玉も参戦している。全国12チーム中で埼玉県から3クラブというのは、突出した数字だ。

Jリーグそして日本サッカーとともに歩んできた埼玉の「サッカーによる町おこし」は着実に実を結んでいる。それこそが埼玉の大きな魅力の一つではないか。

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